ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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最近寒いですね。
特に朝とか、外に出たくないですよね。
と言うわけで本編をどうぞ。


観測者の宴編Ⅸ

「霊斗さん!大丈夫ですか!起きてください!」

アスタルテの声で霊斗は意識を取り戻した。

周りには湯気がたちこめている。

(そうだ……確か俺はヴァトラーの船の風呂で意識を失って……)

身体の軋みは嘘のようになくなっていた。

「アスタルテ……?」

「霊斗さん!」

霊斗が起き上がると、アスタルテが涙目でこちらを見ていた。

「スマン、心配かけた」

「本当です!浅葱さんに、霊斗さんが倒れたって聞いて……急いで来たら、霊斗さんが意識を失っていて……」

「そうか……なんで俺は急に意識を失ったんだ……?」

「それなんですが、内臓、血圧等に問題はありませんでした」

「じゃあなんで……よいしょっと」

霊斗は身体を起こす。

その時、違和感に気づいた。

いや、正確にはまさかと思っていた。

浴槽に浸かっている手や足の大きさが

「……戻ってる……身体が……」

「恐らく、古城さんの血が溶けた湯に浸かった事によって第四真祖の眷獣の力の影響を受けたのではないかと」

「なるほど……奴かな……」

第四真祖の眷獣には、強力な抗毒能力を持っているものがある。

その眷獣ならば「呪い」という名の「毒」も消せるだろう。

「古城に感謝しないとな……っとと」

霊斗は急によろめく。

「大丈夫ですか!」

アスタルテが支える。

その際、タオルが捲れていろいろ見えていたが、霊斗は見なかった振りをしながら答える。

「大丈夫だ。ちょっとのぼせただけだ」

「なら早く出ましょう。はい、支えますから、立ち上がって」

そう言いながら立ち上がったアスタルテは、ようやく自分のタオルがはだけている事に気づいたようで、真っ赤になりながらしゃがみこむ。

「……見ました?」

「いや、何が?」

「本当の事を言ってください」

「……ちょっと成長した?」

「蹴り殺しますよ」

「ごめんなさい」

「土下座してください」

「(ゴボゴボゴボ……)」

「許してあげます」

「やった!……あ」

許してもらえた霊斗が勢いよく顔をあげるが、霊斗の頭はそのままアスタルテのタオルの中に入っていった。

「……」

「……霊斗さん……」

「……夢の国?」

「霊斗さんのっ……変態!」

メキィッ

アスタルテの膝蹴りは霊斗の顔面にクリーンヒットし、霊斗は浴槽の反対側まで吹き飛ぶ。

「は、はは……意識が……」

アスタルテの悲鳴を聞きながら霊斗は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

霊斗は柔らかいベッドの上で目覚めた。

「……さっきのは……夢?」

だが、身体も元通りだし、あれは夢にしてはリアル過ぎた。

「いいもん見たなぁ……」

変態発言をしながら起き上がろうとすると、腕に何か乗っている事に気づいた。

「なんだ……?」

霊斗が横に転がるようにして体勢を変えると、目の前にアスタルテの寝顔が現れた。

いわゆる腕枕。

「……」

状況を理解できずに固まる霊斗。

(なんだこれ!?なんでアスタルテがここで寝てんの!?理解不能なんですけど!?)

そして更にあることに気付く。

アスタルテが浴衣を着ていた。

「……可愛いな……」

思わず呟いてしまう。

すると、アスタルテが目を開く。

「……聞いてた?」

「はい。バッチリ」

「……恥ずかしいな」

「うれしいです。大好きです霊斗さん」

「…………俺もだよ」

霊斗が言った次の瞬間。

轟音とともに船が揺れた。

「チッ!アスタルテ、跳ぶぞ!」

「はい!」

アスタルテを抱えて窓から外に飛び出す霊斗。

もちろんガラスは全部自分で受けた。

外では、ヴァトラーと大柄な男が闘っていた。

「ヴァトラー!」

「やぁ霊斗。目は覚めたかい?」

「島に被害をだしたら殺すからな!」

「努力はしよう」

ヴァトラーはそのまま敵に向かっていった。

霊斗は振り返り、走り出す。

すると、ちょうど古城達が船から降りて来るところだった。

「古城!」

「霊斗!?戻ったのか!?」

「ああ」

「じゃあ戦って――霊斗!避けろ!」

「なんだ?」

古城に言われて霊斗が頭上を見ると、壊れた鉄塔が頭上に降ってきていた。

「ほい」

だが、霊斗は炎ですべて蒸発させてしまった。

「霊斗!暁古城!」

「霊斗さん!」

そこに、紗矢華と雪菜が走ってくる。

「二人とも、無事だったか!」

「はい。霊斗さんも元に戻ったようで何よりです」

雪菜は古城の方を見ようともしないで霊斗に話しかけてくる。

「雪菜……」

「なんですか?」

「古城が泣きそう」

「泣きそうじゃねーよ!」

だが、一瞬寂しそうな顔をしたのは気のせいではないはず。

そこに、赤の戦車が走ってくる。

『女帝殿、無事でござったか!』

「……誰?」

『失礼な!拙者、戦車乗りでござる』

「はぁ!?あんたが戦車乗り!?」

戦車乗りとは、浅葱の同僚みたいなものなのだが、戦車から出てきたのは小学生ぐらいの少女だった。

「左様。拙者、リディアーヌ・ディディエと申す者。管理公社の要請で女帝殿をお迎えに参った」

「だってよ、浅葱。頑張れ」

「古城、あんたの話、今度聞かせてもらうからね。あとサナちゃんをよろしくね」

浅葱はそう言うと、戦車に乗って運ばれて行った。

そして、古城は船の方を見ると、何かを決意したような表情で拳を握り締めた。




今日はこのくらいかな?
ではまた次回!

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