じゃ、かきます……。
霊斗は警戒心を剥き出しにしながら女を睨む。
「お前も脱獄囚か……」
「ええそうよ。だから、南宮那月を渡してもらえると助かるのだけれど」
「だってよ浅葱。どうする?」
「渡すわけないじゃない!」
「まあ、そう言うと思っていたわ」
「だろうな……で、あんたも吸血鬼なのか?」
「ええ。流石は第五真祖といったところかしら。よく見抜けたわね」
「お前の魔力の質がどっかの婆さんに似てたもんでな」
「あら。そこまでわかるのね。じゃあ、手加減しなくていいかしら?」
「ああ、構わないぞ。俺は手加減してやるがな」
霊斗が余裕な表情で答えると女は笑い、眷獣を召喚した。
「……所で第五真祖。あんたの名前を聞いていないのだけれど」
「暁霊斗だ。俺もお前の名前を知らないな」
「ジリオラ・ギラルティよ。聞いたことくらいあるとおもうのだけれど」
「ああそうか、どっかで見た顔だと思ったが……まさかあの''クァルタス劇場の歌姫''だったとはな。あんたは俺を覚えてないみたいだが」
「あら、その名前で呼ばれるのも久しぶりね……じゃあ、殺っちゃっていいかしら?」
「できるもんならやってみろ」
霊斗が言うと同時に、ジリオラが自らの眷獣を地面に叩きつける。
すると、霊斗に向かって無数の弾丸が放たれた。
「霊斗!」
浅葱が叫ぶ。
しかし、霊斗の姿は着弾地点に無かった。
「悪いけど、その眷獣には負けねぇな」
霊斗は一瞬でジリオラの背後に移動していた。
「なっ!?その動き、まさか――獅子王機関の剣凰!?」
「やっと思い出したか。お前を監獄結界に送ったのが誰だか、忘れるわけないよなぁ?」
ジリオラは霊斗と距離を取る。
「なんで獅子王機関に真祖が……」
「まあ、隠してたからな。次の眷獣はどうした?」
「くっ、殺れ!''
ジリオラが新たに眷獣を召喚する。
それは、無数の蜂だった。
しかし
「数も増えてないのか……つまらないな。焼き尽くせ''天照大神''」
霊斗が命じると、蜂がどんどん焼かれて行く。
「ぐうっ!?クソッ!''毒針たち''!もっと増えろ!」
ジリオラが言うと、蜂の数がどんどん増えていく。
しかし、霊斗は余裕な表情を崩さない。
「''氷牙狼''」
霊斗が虚空より槍を取り出す。
「さて、終わりの時間だ、ジリオラ・ギラルティ。監獄結界に帰れ!」
霊斗が空間転移でジリオラの懐に飛びこみ、腹に槍を突き刺す。
「がふっ!第五真祖……侮っていたわ……」
ジリオラが意識を失うと手枷が発光し、鎖がジリオラを虚空に引きずり込んで行く。
「ふう終わった……」
すると、霊斗の耳に嫌な声が聞こえた。
「やあ霊斗。今の戦い、実に美しいネ」
「
「酷いなァ。本音がだだ漏れだヨ?」
ヴァトラーが笑顔で返す。
するとそこに、古城が白煙を吹き上げながらチャリで走ってきた。
「霊斗!終わったか!」
「ああ、なんとかな」
「やあ古城」
「うわぁぁ!ホモだ!死ねぇ!」
バキゴキ。
「古城、加減くらいしてくれてもいいじゃないか」
「あーあ、ガチホモの首がおかしな事に」
古城が反射的に全力で殴ったため、ヴァトラーの首が百二十度くらい回ってしまった。
「さて古城。彼女の心配はいいのか?」
「そうだ!浅葱、無事か!?」
「うん、霊斗が助けてくれたから……」
「お、古城。彼女の所、否定しないのな」
「いや、そこまで気が回らなかっただけだ」
「浅葱が心配でか?」
「ま、まあそりゃ、友達の心配くらいするさ」
古城が言うと、浅葱の顔が真っ赤になる。
「ところでホモ。ここに来たってことは、何か用があるんだろ?」
霊斗が聞くと、ヴァトラーは笑顔で首を治しながら答える。
「(コキッ)そうだね。用件は一つ。南宮那月をボクの船で預かろう」
「「「「はあぁぁぁ!?」」」」
ヴァトラーの唐突な申し出に、霊斗、古城、浅葱、アスタルテの叫び声が重なる。
「いや、ヴァトラーには任せたくない」
「あたしも行っていいなら……」
「ヴァトラーは信用できない」
「霊斗さんに同意」
浅葱以外の全員がヴァトラーの申し出を断る。
だが、思い直したかのように古城が言う。
「いや、でもヴァトラーの船なら霊斗も本気を出せるし、脱獄囚を探す手間も省ける」
「む、そうだな……じゃあヴァトラー、頼む」
ヴァトラーはその返事を効くと、古城達に言う。
「じゃあ、ついて来るんだ」
ヴァトラーは迷いなく歩いていく。
霊斗達は小走りでヴァトラーを追った。
眠い……お休みなさい。
ではまた次回……。