寒い。家の中なのに……。
では本編をどうぞ。
古城の胸の傷をアスタルテが診察する。
「にしてもなんで直らねぇんだろうな……」
「姫柊の槍で付けられた傷だからじゃないのか?」
「いや、あれには回復阻害効果はなかったと思う。それよりその血から漏れてる魔力。多分眷獣だ」
「眷獣?レグルスとかか?」
「いや……アスタルテはどう思う?」
「恐らく未掌握の眷獣が暴走しかけているのではないかと」
「やっぱりそうだよな……」
「は!?ってことは……」
「すこしでもダメージがあれば眷獣が完全に暴走する」
「マジかよ……」
「だから古城には出来ればここで休んでてもらいたいんだが……」
「そんなのできるわけないだろ!」
「ああ。そう言うと思ってな。アスタルテ、例の物を」
「はい。どうぞ」
アスタルテが虚空より取り出したのは――。
「……鎧?」
「昔のアルディギアの鎧だ」
「なんでもってんだよ」
「……あれは数年前の事だった……話すと長いがどうする?」
「いや、なんか……今度でいいや」
「霊斗さんの謎がまた増えた……」
「変なナレーションつけんな」
すると、奥の部屋のドアが開き紗矢華が出てきた。
「おう紗矢華。おかえり」
「霊斗……あんたねぇ……」
「悪かったな煌坂、霊斗なら好きに殺ってくれていいから」
「やめて!こんな幼い子供に暴力を振るうつもり!?」
「中身が幼くないでしょうが!」
「いやぁぁぁ!誰か、誰かぁぁ!」
「霊斗さん、うるさいです(ヒュツ)」
「(ドスッ)ぐぼっ!ちょ、身体が小さいから威力が……」
「アスタルテさんって意外と強いのね……」
「伊達に霊斗さんの彼女やってませんよ」
「……リア充って、妬ましいわね……」
「ああ、そうだ――な……」
紗矢華の呟きに答えている途中で古城が床に倒れ伏す。
「ちょ、ちょっと。冗談はやめなさいよ……」
「こ、古城?早く起きろよ……」
「古城さん……?」
古城はピクリとも動かない。
そこに雪菜が戻ってくる。
「ただいま戻りました……」
「お、おう雪菜。お疲れ様」
「どうしたんですか?まるでお葬式のような雰囲気で――」
「あ、こ、これはだな……」
「先輩?なんで寝てるんですか?」
「古城は寝てるんじゃなくて、倒れたんだよ」
それを聞いた雪菜の顔が驚きに染まる。
「え?さっきまであんなに元気だったのに……」
「だから原因がわからなくて困ってる」
すると、古城が薄く目を開く。
「お、起きたか。古城、どうしたんだ?」
「……は」
「は?吐き気がする?」
「腹へった……」
「「「「…………」」」」
全員が固まった。
「は?なに?オマエは腹ガ減っテ倒れテおレ達ヲ心配サせタッてノか?」
「霊斗さんがだいぶ久々に暗黒面に……」
「霊斗!戻って来なさい!」
「先輩。殴っていいですか?」
「たのむから、やめて……」
「はっ!俺は何を!?」
「とりあえずご飯にしましょう。ピザがあるはずです」
「お、アスタルテは気が利くなぁ。流石俺の嫁だ」
「いや、まだ結婚してないだろ」
アスタルテが冷蔵庫を開け、冷凍のピザを取り出す。
それを霊斗の前に持ってくる。
「霊斗さん、お願いします」
「おう、天照''瞬間解凍''」
霊斗がピザに手を翳すと、一瞬でピザが暖まる。
「便利ね……」
「いや、それがそうでもない」
「なんでよ」
「眷獣の力を一瞬だけ、しかもかなり威力を絞るからな。疲れるんだよ」
「ふーん。私にはわからない感覚ね」
「お前も手加減して逆に疲れるってないか?それとおなじだよ」
「なるほど」
霊斗が紗矢華と話していると、アスタルテが不機嫌そうな表情で霊斗を抱き上げる。
「ちょ、アスタルテ?なにを「霊斗さん、あーん」ん、あーん」
「なにナチュラルに餌付けされてんだよ」
「空腹で倒れた先輩は黙ってください」
「本当よ。心配して損したわ」
「悪かったよ」
「まあ、雪菜も紗矢華もそんな怒らないで「はい、あーん」あーん(モグモグ――ごくん)怒らないでやってくれ。悪いのは仙夜木阿夜だ」
「本当に精神まで幼児化してるじゃない」
「そんなこと「あーん」あーん(モグモグ――ごくん)そんなことない」
「私、ここまで説得力のない霊斗さんを見たのは始めてかもしれないです」
「安心して雪菜。こいつはこれが基本だから」
「二人とも「あーん」あーん(ごくん)失礼だな」
「「「「丸飲みした!?」」」」
霊斗以外の四人の声が重なる。
すると、怪訝そうな表情をしながら霊斗がテレビを見て言う。
「なんだよ。そんだけで――ってあれ、浅葱?」
「浅葱!?どこだ!」
「ほら、この画面のはじ」
「本当だ……ってこの子……」
「ああ。多分那月ちゃんだな」
「だとすると……」
「藍羽先輩も巻き込まれる可能性があるということですね」
「ああ。古城、浅葱に電話してくれ。俺は一足先に浅葱の所に向かう」
「わかった。頼んだ」
「アスタルテ、行こう」
「はい!」
霊斗は外にでると、天音を召喚する。
「天音、浅葱の場所を探してくれ」
「うん、まってね……みつけた!めいんすとりーとにいるよ!」
「ありがとう、戻っていいぞ……」
「うん、れいくん、きをつけてね」
「ああ。アスタルテ、跳ぶぞ」
「はい、いつでもどうぞ」
アスタルテの答えを聞いて、霊斗は跳んだ。
さあ、霊斗はあの眷獣でどうやって戦うのでしょうか。
また次回!