では本編をどうぞ。
「監獄結界の脱獄囚どもか……」
「なんだ少年。怖いのか」
「誰が少年だ。実年齢は青年レベルだよ」
「ふむ、まあそんなことはどうでもいい。''書記の魔女''よ、監獄結界を開いてくれたこと感謝する」
最初に霊斗を挑発しつつ阿夜に言ったのはシルクハットの男だった。
そんな男を一瞥しながら阿夜が問う。
「汝達だけか。他の者はどうしたのだ?」
「そいつがよー、これ見ろよ!」
ドレッドヘアの男が阿夜に腕の枷を見せる。
「よく見てろよ!」
その男がいきなり腕を一閃する。
するとその前にいたシルクハットの男が血飛沫を上げたのだ。
「シュトラ・D!裏切ったな!」
シルクハットの男は血を吐きながらドレッドヘアを睨み付ける。
しかし、シュトラ・Dと呼ばれた男はそんなシルクハットを嘲笑う。
「ハッ!何が裏切ったなだ!てめェが弱いのが悪いんだよ!」
直後、シルクハットの手枷が発光すると、無数の鎖が彼の身体を縛り上げ、虚空へと引きずり込んでいく。
「クソッ!離れろっ!」
シルクハットは必死で抵抗するが、傷つき満足に抵抗もできないまま消滅した。
それを見て阿夜が言う。
「なるほど……監獄結界の機構はまだ動いていると」
「そうだ。だからもっと弱い連中は最初っから出られねェんだ」
シュトラが説明する。
その言葉を引き継いだのは妖艶な美女だった。
「ところで''書記の魔女''。空隙の魔女の居場所がわからないかしら?私はとっととあの女を殺して自由になりたいのよ」
しかし、阿夜は首を横に振った。
「悪いが、知らんな。だが、奴の弱体化はしておいたぞ」
「あァ?どういうことだよ」
阿夜の一言に頷いたのは二人だけだった。
一人は霊斗、もう一人は脱獄囚の青年だった。
「なるほど、その手に持っている''No,014''の魔導書で俺と同じように幼児化したのか(説明口調)」
「はぁ?おい冥駕、あのガキの言ってる事はどういうことだよ」
「その名前で気安く呼ばないで頂きたいのですが……要するに、空隙の魔女の経験した時間を呪いによって奪ったということです。そこの第五真祖と同様に」
「なるほど……って第五真祖!?そのちっこいガキが!?」
「……絃神冥駕、久しぶりだな……」
「お久しぶりです、第五真祖。哀れな姿ですね……」
「お前には言われたくないな……この廃棄物風情が」
霊斗と冥駕の間に謎の緊張感が漂う。
しかし冥駕はすぐに阿夜の方を向くと、一つだけ確認するように言った。
「それで、空隙の魔女を始末すれば我々は自由になれると言うことですね」
だが、阿夜は何も言わなかった。
それを肯定ととったのか女が言う。
「そう。なら手を貸してあげてもいいわよ」
女の一言に阿夜以外の全員が頷いた。
しかし、そんな脱獄囚達の前に立ちふさがるように立ったのは古城と霊斗だった。
「ふざけんなよ……そんな話を聞かされて行かせると思ってんのか……」
「古城に同意見だ。小さい身体の感覚を掴むのにも良さそうだしな」
そんな古城達をみて、シュトラが忌々しげに言う。
「あァ?なんだこのガキは」
「手負いの第四真祖に幼児化した第五真祖が我々に敵うとでも?」
「……古城はともかく俺は眷獣の制御が効かないんだが」
「……やはりあなたはそちらの心配でしたか……」
呆れたように言う冥駕。
そんな二人の間に立ちふさがったのは雪菜とアスタルテだった。
「先輩方は優麻さんを連れて逃げてください」
「ここは私達が引き受けます」
「姫柊!?残るなら俺が!」
「アスタルテ!駄目だ!お前じゃあいつらとは渡り合えない!」
「霊斗さんは大分失礼ですね」
だが、アスタルテでは戦力不足なのはアスタルテ自身が一番わかっているはずだった。
雪菜も、アスタルテを庇いながら戦うのは無理だろう。
「アスタルテ」
「はい?無駄口を叩いている暇があるなら早く――」
「バカ」
霊斗がアスタルテの頬を横に引っ張る。
「れいひょひゃん、いひゃいへふ」
「アスタルテがバカな事言うからだ。俺がお前を置いていけると思ってんのか」
「……れいひょひゃん……」
アスタルテが小さな霊斗を抱き上げる。
「目が覚めました。霊斗さん、目眩ましの攻撃くらいはできますか?」
「いや、その必要はない。多分もうそろそろ''あいつ''が来る」
「あいつ……?」
「それより、古城と雪菜の痴話喧嘩(?)を止めるべきだろ。隙だらけなんだけど」
だが、霊斗が言った時にはシュトラは攻撃体勢に移っていた。
「ヒャッハー!まとめて消し去ってやるぜ第四真祖!」
「ふ〇っしーか!」
しかし、霊斗の突っこみは轟音に掻き消された。
辺りに広がったのは眩い深紅の光だった。
戦闘が微妙に混ざるとだいぶ難易度が上がってしまう……。
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ではまた次回!