では本編をどうぞ。
霊斗の日常~クリスマス編・前編~
十二月二十四日。
世間で言うクリスマスイブである。
そんなある日、霊斗は視線を感じて目を覚ました。
「ん……なんだ?また邪神か……?」
寝ぼけているのか、かなりヤバめな発言をしている。
「誰が邪神ですか。起きてください、朝ですよ」
「ああ……アスタルテか……おはよう」
「おはようございます。今日はなんの日だか覚えていますか?」
「ああ、覚えてる」
まだ半分ほど目を閉じたままで霊斗は答える。
そんな霊斗を訝しげに見て、アスタルテが聞く。
「じゃあ、なんの日だか言ってみてください」
「おー、いいぞー。今日は休みの日だ」
「……覚えて無いんですね……?」
「冗談!冗談だから!ちゃんと覚えてる!クリスマスイブだから皆で出掛ける!」
「チッ、覚えてましたか……」
「なんで残念そうなんだよ!?」
「いえ、別に」
「……ならいいけどな。じゃあ、着替えるから先にリビングに行っててくれ」
霊斗はそう言って着ていたTシャツに手を掛ける。
が、そこで動きが止まる。
「なあ、なんでアスタルテが俺の服を掴んでるんだ?」
「主人の着替えを手伝うのが妻の役目です」
「確かにお前は血の伴侶だけどまだ結婚してないからな!?」
「まだ?じゃあ今後結婚しようとは思っていると捉えてよろしいですか?」
「そ、それは……」
「それは?」
「……ああ!そうだ!アスタルテ、行きたい所決めとけよ?じゃあ後でな!」
霊斗はそう言ってアスタルテを部屋から追い出した。
背後でドアが閉まる音を聞きながら不満気にアスタルテが呟く。
「なんでそういうことをちゃんと言ってくれないんですか……」
そのドアの反対側では、霊斗が顔を真っ赤にして呟いた。
「そんなこと……言えるわけ無いだろ……」
数分後。
古城はモノレールに乗っていた。
「なあ霊斗」
「なんだ?」
「お前らが一緒に出掛けるのはわかるんだけどさ……」
「なにも不自然じゃないよな?」
「なんで俺と姫柊まで一緒に行かなきゃなんねーんだよ!?」
「いやいや、これを期に二人の仲をもっと良くしようと思ってな。雪菜も監視対象の事はもっと知りたいだろ?」
「そ、そうですね」
「ほらな?ま、諦めろ。それが運命だったんだ」
「……勘弁してくれ……」
「今更そんな事言っても遅いぞ。っと、着いたぞ」
「行きましょうか」
「ほら、先輩もぼさっとしてないでください。置いていきますよ?」
「へいへい……」
四人はモノレールを降りると、目的地のショッピングモールに入った。
「そういえば、俺と姫柊が始めて会ったのもこのショッピングモールだったか?」
「そうですね。先輩が急にゲームセンターに入っていってしまった時はどうしようかと思いましたよ……」
「あー……すまん」
「いえ、私も同じ立場だったらそうしたと思いますから」
二人はそんな話をしていて、周りから見たら完全にカップルである。
「さて、古城達はほっといていくか」
「はい。じゃあ、まず食事に行きましょう」
「え?」
「え?」
「いや、さっき朝飯食ったばっかりだよな?」
「十時のおやつです」
「食いしん坊か!あと二時間くらい我慢しろ!」
「わかりました。じゃあ霊斗さんの服を買いに行きましょう」
「え?俺の服?」
「はい。だって霊斗さん、いつも白のTシャツに黒のパーカーじゃないですか」
「うっ……」
「私にはメイド服がどうとか言ってましたよね?」
「ぐっ……」
「なので、行きましょう。私がコーディネートしてあげます」
「そんなぁ……これ気に入ってんのに……」
「あと、髪の毛。昔のに戻しましょう」
「と、言いますと?」
「その一房の銀髪。昔の写真は赤でしたよね?」
「うっ!?」
「いい加減戻しましょう。優麻さんが来てあの写真を見たときから思ってたんですけど、あっちの方が格好いいです」
「うぅ……。わかったよ……」
「じゃあ行きますよ」
アスタルテに引っ張られて行く霊斗であった。
数分後。
「戻したよ……」
「やっぱりそっちの方がいいです」
「はぁ……まあ、アスタルテがそう言うならいいか……」
「次は服ですね」
「ああ……って、服も俺が払うのか?」
「私はお金無いです」
「まあいいけどさぁ……じゃあ、アスタルテも新しい服買うか」
「いいんですか?」
「いいよ。アスタルテは俺がコーディネートしてやる」
「じゃあお願いします」
「ああ。……あと、年末年始なんだけどさ」
「はい。なんですか?」
「んっと……その……本土に行ってみないか?」
「本土ですか?行きたいですけど……検疫が……」
「大丈夫だ。獅子王機関のコネで飛行機動かすから」
「じゃあ行きましょう!楽しみです!」
はしゃぐアスタルテを見て、誘って良かったと思う霊斗であった。
数時間後。
暁家。
あの後、霊斗とアスタルテは普段着と冬物の服を何着か買い、古城達と合流し帰ってきた。
そのままの流れでクリスマスパーティーをやることになった。
古城が浅葱や矢瀬に連絡をし、二人が来るとパーティーが盛大に始まった。
「うっしゃー!食うぜぇー!」
「矢瀬、うるさいぞ」
「そうよ基樹。静かにしなさい」
「なんだよ!夫婦して俺を責めるのかよ!」
「「誰が夫婦だ!」」
「アスタルテ、お前良く食うな……」
「(もぐもぐ)まだ足りないです。あと十人前は行けます(むしゃむしゃ)」
「ああっ!?いつの間にか大皿が空に!?」
「む……私も負けてられないわね……」
「やめろ!浅葱まで本気を出したらいくら俺の財布でももたないぞ!」
霊斗のそんな叫びも虚しく、皿の料理がどんどん減っていく。
「ちょ!?お前ら待て!俺らの分も取っとけよ!」
最終的に霊斗、アスタルテ、浅葱の対決になり、暁家の食材はその晩でほぼなくなったと言う。
はい。今回はここまでです。
明日はクリスマス当日編なのでお楽しみに。
お気にいり、評価お願いいたします。
ではまた次回!