ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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ああ、明日は忌まわしきクリスマスイブですね……。
さて、書いていきます。
では本編をどうぞ。


蒼き魔女の迷宮編Ⅷ

優麻は監獄結界の前に立っていた。

「もう……後戻りはできないな……」

優麻はそう言って目を伏せた。

しかし、背後から声がした。

「ったく、何を諦めてんだか」

「霊斗か……。今更何をしに来たんだい?」

「親友を止めに来たに決まってんだろ?他に何かあるか?」

「古城も、姫柊さんも、アスタルテちゃんも同じかい?」

「当たり前だ。それに、身体も返してもらわないとな」

「知り合ったのはまだ最近ですけど、先輩や霊斗さんの親友は私の親友も同然です!」

「数時間ですが、霊斗さんの身体を好きにする時間を貰った恩は忘れません。そんな恩人に犯罪者になってほしくありません」

「……そうか。こんなボクの事を親友と言ってくれるなんて嬉しいよ。でも、ボクはどうしても母さまを助け出さないといけないんだ!だってそれが――」

「それが悪魔との契約だから、か?」

「ッ!」

「悪いけどな、俺達が暮らしてんのは''魔族特区''だぜ?しかも担任は魔女だぜ?」

「そうか……南宮那月――空隙の魔女か……」

「ああ、古城なんて毎日のように殴られているからな」

「話を遮るようで悪いけど、ボクはそんな話をしに来たんじゃない。母さまを助け出すためにここに来たんだ!」

「監獄結界を開けるのか?」

「そうだ!だから……そこを退いてくれ!」

「駄目だ。監獄結界を……開かせるわけにはいかない」

「だったら……力ずくで‼」

優麻が空間制御のゲートを開き、そこから雷光の獅子が出現する。

「そんな!先輩の眷獣!?」

「空間制御の応用です!」

それは、一瞬だけ獅子の形を造ると、監獄結界を貫く。

そして、未だ実体化していなかった監獄結界が許容範囲を超えた攻撃によって無理矢理実体化する。

「がはっ!」

「ぐっ……ボクの(ル・ブルー)でも制御しきれないか……」

「優麻!霊斗!」

そして、その攻撃の余波は術者の優麻と一番近くにいた霊斗を吹き飛ばした。

「だけど――無茶をした甲斐があったみたいだ」

その監獄結界の中には霊斗達のよく知る人物がいた。

「……那月ちゃん……?」

「なんで……こんなところに……」

「霊斗さん、何か知っているんですか?」

「ああ、昔に一度だけ見たことがあったからな……」

「へぇ……意外だったな。霊斗が知っていたなんて……」

「そりゃあ知ってるさ。昔関わった事件の犯人をぶちこんだ場所だ。忘れるわけがない」

「じゃあ、空隙の魔女の役割も知っているね?」

「ああ。''監獄結界の鍵''だろ?」

「そうだ。だから彼女を殺せば監獄結界は開放される」

優麻がそう言って結界の中に転移する。

が、

「俺の方が一足早いな」

霊斗が那月を抱えて数メートル離れた場所にいた。

「なっ!?いつのまに!?」

「空間のゲートを二つ同時に開いただけだ」

「なら!蒼!」

顔の無い騎士が霊斗に向かって剣を降り下ろす。

「遅い」

しかし、剣は霊斗に当たらなかった。

霊斗は優麻の背後に空間転移し、氷牙狼を構える。

時間切れ(ゲームオーバー)だ」

霊斗のひと言と共に放たれた槍は、優麻の――古城の肉体の心臓の横を深々と貫いた。

 

 

 

 

数分後。

古城は全身を引き裂かれるような痛みと共に目を覚ました。

「ぐあっ!……痛ぇ……」

「目は覚めましたか?先輩」

「姫柊……」

「元の身体に戻れて良かったですね」

「そうだな。ところで姫柊、血は……」

「駄目です」

「デスヨネー……っとそうだ!ユウマは!?」

「ここだよ、古城」

古城の背後から声がした。

そこには霊斗に支えられて起き上がった優麻の姿が。

霊斗が迅速に終わらせたので傷もそんなにないようだ。

さらに

「終わったか?まったく、手間を掛させてくれるな」

南宮那月が立っていた。

「那月ちゃん!?」

「いや、那月ちゃんは寝たふりしてただけでしょうが」

「おはようございます、南宮先生」

「那月ちゃん先生、おはようございます」

「アスタルテ……ついにお前まで私を那月ちゃんと呼ぶようになったか……」

那月は頬をひきつらせながら言う。

そして、優麻に向き直り問う。

「さて、阿夜の娘。まだやるか?」

「いや、もうやめておくよ。蒼もボロボロだ」

優麻がそう言って悪魔――守護者を喚び出す。

顔の無い騎士の鎧はひび割れ、とても戦える状態ではない。

「そうか……」

那月は首肯く。

すべてが終わった。

皆がそう思ったその時だった。

「蒼?」

優麻の守護者の実体化が解けなくなっていた。

そして、守護者は笑いだした。

「蒼!?やめろ――!」

優麻が止めるも、その剣は()()()()()貫いた。

「母さま……あなたはそこまで……」

優麻が口から血塊を吐く。

さらに

「くそ……油断した……」

「ブービートラップか……阿夜め……」

霊斗と那月も血を吐いた。

「優麻?霊斗?那月ちゃん?なにが……」

古城にはなにが起きているのか理解できなかった。

そして、ゆっくりと理解し、現実を再認識した。

次の瞬間、古城の口からでたのは絶叫だった。

「うあぁぁぁぁぁぁ!」

監獄結界の中に血の匂いが充満していく。

 

蒼き魔女の迷宮編・完。




次はクリスマスのオリジナル話を投稿して、年末までお休みします。その後に年末年始編を書いてから、観測者の宴編に入ります。
お気にいり、評価お願いいたします。
ではまた次回!

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