まぁ、休み中も部活なんですけどね……。
ということで本編をどうぞ。
古城達はとりあえずキーストーンゲートに向かうことにした。
移動方法は勿論霊斗の空間転移だ。
「便利だな、それ」
「この人数だと大分キツいけどな……」
「はは、お疲れ様霊斗」
「じゃあ、中に入りましょうか」
「古城、どこから回るんだ?」
「そこんとこは浅葱の方が詳しいだろ」
「まさかの丸投げ!?馬鹿にしてんのあんた!?」
「まあまあ、愛しい古城の為に頑張れよ」
「基樹、あんたは後で殺すわ」
その後、浅葱の提案で博物館を回り、矢瀬オススメのカフェに入った一行。
テーブルが空いていなかった為、高校生組と中学生組とリア充組で分かれて座る事になった。
「それにしても、なんなのよあの子……」
「なんだよ浅葱?嫉妬か?」
「はぁ……可愛いくせに異性を意識させない態度って……チートか!」
「お前が言うなお前が」
そこに料理を取りに行っていた古城が帰ってくる。
「ほら、取ってきたぞ」
「あれ?あの子は?」
「ユウマなら霊斗達の所だ」
霊斗達の席。
アスタルテは料理を取りに行った。
「なあ優麻。何しに来たんだ?」
「何って、霊斗達の話を聞きにね」
「帰れ」
「まったく霊斗は変わっちゃったなあ。昔はあんなに……」
「昔の話は止めろ」
「じゃあ今の話を聞かせてくれないかい?」
「……わかったよ、何が聞きたい?」
そう言いながら霊斗は紅茶を口に含む。
「吸血したのかな?」
「ゴハッ!?」
盛大に紅茶を床にぶちまける霊斗。
そこにアスタルテが帰ってくる。
「霊斗さん、なにをしてるんですか?」
「事情を聞いてくれ」
「とりあえず拭いてください。これ、ティッシュです」
「ああ、悪い……で、これは優麻が変なことを聞いてくるから……」
「別に、ボクは吸血したのかどうか聞いただけだよ?」
「霊斗さんは本当にヘタレですね」
「やめて!そんな蔑んだ目で俺を見ないでくれ!」
霊斗は悲痛な声を上げる。
「あははっ、霊斗は本当に弄り甲斐があるなぁ」
「あの、優麻さん」
「どうしたんだい?アスタルテちゃん」
「霊斗さんの昔の話を聞かせてください!」
アスタルテの目が輝いている。
「いいよ、何から話そうかな……」
「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「霊斗さん黙っていてください(ボゴッ)」
「ゴフッ(バタン――ガシャン!)」
アスタルテの腹パンが炸裂した。
霊斗が意識を無くし、倒れる。
しかし、何事もなかったかのように優麻の思い出話は続いた。
古城達の席。
「なにやってんだあいつら……」
「賑やかでいいんじゃないか?……おっと、電話だ。ちょっと出てくる」
「おう、いってら」
矢瀬は電話に出るために店を出ていった。
「基樹も大変ねー……」
「そうだな。リア充ってのも案外大変なのかもな」
「そうね……」
そこに、矢瀬が戻ってくる。
「ああ……わかった。すぐに向かう」
なにやら深刻そうな顔をして電話を切る矢瀬。
「どうしたんだ?」
古城がそう聞くと、基樹はいつもの表情に戻って答える。
「ああ、ちょいと野暮用でな。先に行くわ」
「そうか、頑張れよ」
「おう!じゃあな」
矢瀬はそう言って立ち去ろうとする。
「って待て!食った分は払ってけよ!」
「さらばだっ!」
「あ!こら待て!逃げんな‼」
古城が引き留めようとするも時すでに遅し。
矢瀬は高笑いしながら走り去っていった。
「くそー、あいつめ……」
そこで、浅葱のスマホが振動する。
このスマホの番号を知っているのは奴しかいない。
「ごめん、あたしも電話」
「ああ。わかった」
浅葱は店の外に出ると、通話ボタンをタップする。
「なによモグワイ?電話ってことは重要機密でしょ?」
『ああ、もう余裕がない。クラスⅢの特区防衛体制だ』
「クラスⅢ!?そんなのこの前の殲教師の時と同じ位のテロってこと!?」
『まだ原因は特定出来てないが、そんなわけでバイトの依頼だ。頼めるよな?』
「どうせ拒否権なんてないんでしょ。いいわ、すぐに向かうわ」
『助かるぜ、あと、霊斗の坊っちゃんにも警戒しろって伝えてくれ』
「わかったわ。じゃあ、霊斗の魔力を関知しないプログラムを起動しときなさいよ」
『もう起動してあるぜ』
「じゃあ、向かうから」
そう言って浅葱は通話を切る。
そして霊斗に要件を伝えると、浅葱はバイト先へと向かった。
キーストーンゲート、展望ホール。
「うわぁ~!絶景だね!夏音ちゃんもあっちで外見よ!」
「はい、行きたいでした」
凪沙達は窓辺に走り寄って、感嘆の声を上げる。
だが、雪菜は
「なんか、空中に浮かんでいるみたいですね」
「そっか、姫柊は高いとこ苦手なんだっけ?」
「違います!ガラスの強度が心配なだけです!」
そんな賑やかな雰囲気の中、霊斗だけは周りを警戒していた。
「霊斗?どうしたんだい?怖い顔をして」
「気にするな、眠いだけだ」
優麻が心配そうにこっちを見てくるが、適当に誤魔化す。
「アスタルテ」
「なんでしょう」
「クラスⅢの警戒体制だ。いつでも眷獣を出せるようにしておけ」
「わかりました」
その時、霊斗の携帯が振動する。
「誰だ?……はい、もしもし」
電話に出ると、相手は特区警備隊の職員だった。
内容をまとめると、那月が失踪し、事前に渡されていたメモに、霊斗に頼んで夏音を保護しろ、と書いてあったそうだ。
「了解した。……ああ、Cカードなら常に携帯してる」
その後、二言三言交わし電話を切る。
「ったく、面倒な事になったな……」
霊斗はそう呟き、溜息をついた。
暁家。
古城達は島内を一周し、帰ってきたのは日没前ギリギリである。
夏音は雪菜とアスタルテが護衛についている。
「優麻、楽しかったか?」
「うん、絃神島は面白い所だったね。とくにあの喫茶店が面白かったよ」
「ああ、獄魔館か。あそこは俺の昔馴染みが働いてるんだ」
「へぇ、そうなんだ。霊斗は顔が広いんだね」
「そんなことないさ」
そこに凪沙の声が掛かる。
「霊斗君もユウちゃんもこっちで話そうよ!」
「ああ、今行く」
「ごめんよ、凪沙ちゃん」
そこで、古城が脱衣場から出てくる。
「おい、風呂空いたぞ」
「ああ、凪沙、優麻。先に行っていいか?」
「いいよー、ね、ユウちゃん」
「ああ、ゆっくりしてくると良いよ」
「悪いな」
霊斗はTシャツと短パン、バスタオルを持つと、脱衣場へ行く。
「に、してもなぜクラスⅢの警戒体制が敷かれているんだ?」
そんな事を考えながら風呂場のドアを開く。
すると中からはシャワーの音がしてくる。
霊斗はドアをくぐり抜ける。
一瞬目眩のような感覚がし、出たのは―――
「ん?シャワーの音?」
そこには、夏音とアスタルテ、雪菜がいた。
「「「……」」」
「……?」
霊斗の目はアスタルテに釘付けになる。
「あの、霊斗さん?ここ、私の家……ですよね?」
「おかしいな、俺は自宅の脱衣場から来たはずだが」
「困りましたね。お兄さんのお家と雪菜ちゃんのお家が繋がってしまいました……」
「霊斗さん、いつまで見てるんですか?」
「あ、すまん」
「霊斗さんは変態ですね」
「そう言うなよ、傷つくだろ」
四人で朗らかに笑い合う。
そして―――
「さらばだっ!」
「変態!変態ーっ!」
「若雷――!」
「みぎゃぁぉぁぉぉ!?」
霊斗は雪菜の技を食らい、脱衣場まで弾き飛ばされる。
「なにがどうなってんだ……」
最初に思い付いたのは空間制御。
しかし、自分が知っているのは那月だけだ。
他にここまで空間制御を使える人物を霊斗は知らない。
「どういうことだよ、那月ちゃん……」
霊斗はそう呟き、溜息をついた。
夜。
霊斗は久し振りに自分のベッドで眠る事になった。
(……アスタルテの匂いがする……)
軽く変態である。
(しかし、どうなってるんだ……)
霊斗が考えていたのは今日の脱衣場での件だ。
(なぜあそこに空間制御のゲートが出来ていたんだ……?なにがおかしいんだ?なにかが引っ掛かる……)
改めて脱衣場からの事を思い出す。
まず、脱衣場は自宅の物だった。
その後、風呂場のドアを開いて、入る時に少し目眩のような感覚がした。
(ここで転移したのか……)
だが、そう考えるとなぜピンポイントであそこに跳んだのか。
(偶然か……にしても……)
霊斗の脳裏にアスタルテの裸体が浮かび上がる。
(まずっ!)
その瞬間、強烈な喉の渇きを覚える。
吸血衝動だ。
(くそっ!最近落ち着いてたのに!)
最近はあまり吸血衝動は無かったので油断していた。
しばらくすると、吸血衝動は収まった。
だが、次は猛烈な眠気と浮遊感に教われる。
(なんだ?なんでこんなに眠たいんだ……)
最後に霊斗が見たのは、霊斗の部屋のドアの前に立ち笑っている優麻と、その背後に浮かび上がる蒼い鎧の顔の無い騎士の姿だった。
ああ、疲れた。
お気にいり、評価お願いいたします!
ではまた次回!