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霊斗達が流血する数時間前―
真夏の森。
神社の境内を夕日が照らしている。
その拝殿の中央にだらしなく両足を投げ出して座っている少年がいる。
もちろん暁霊斗である。
暑さにやられているのか、気だるげな表情でぐったりとしている。
彼の隣にはきっちりと正座した少女がいる。
そして彼らの正面にある御簾の向こうには三人分の人影がある。
彼らは三聖と呼ばれる獅子王機関のトップである高位霊能力者たちである。
その三聖より呼び出しを受けたのである。
少女は無意識に制服の袖口を強く握りしめている。
と、突然―
「名乗りなさい」
と三聖の一人が言った。
少女が名乗る。
「姫柊です。姫柊雪菜。」
「姫柊雪菜。それと暁霊斗。あなた方には任務についてもらうことになりました」
三聖が静かに告げる。
そして大まかな説明をした。
第四真祖が日本に現れたこと。
第四真祖は高校生だということ。
第四真祖は東京都絃神市―魔族特区にいるということ。
そこで雪菜が疑問を口にする。
「あの、その話が私のような見習い剣巫の任務とどんな関係が…?」
「ええ、姫柊雪菜。貴方が剣巫になるにはあと約半年の修行をしてもらう必要があります。しかし、事情がかわりました。」
「先ほど話をした通りであるが、第四真祖は高校生。我々にはそなたの他に彼と穏便に接触できる人材がおらんのだ。」
「でも、霊斗さんがいれば十分なのでは?」
「そこでだらけている戯けが一人で監視任務をこなせると思うのか?」
そこで雪菜は隣をちらりと横目で見て短いため息をつき
「無理ですね」
即答した。
「え?雪菜さん?酷くないすか?」
「霊斗さんがだらけているのがいけないんです」
霊斗の抗議の声も一蹴された。
霊斗撃沈。
「と、いうわけでそなたが主体となってこの任務についてもらいたい」
「はい、わかりました」
「それでは例の物をこちらへ」
雪菜の前にアルミ製の長方形のケースが置かれた。
三聖の呪力に反応してケースのロックが解除される。
蓋が開くと中には近未来的なフォルムの槍が格納状態で納められていた。
「これは…」
「獅子王機関が誇る秘奥兵器、七式突撃降魔機槍「シュネーヴァルツァー」です。銘は雪霞狼。真祖が相手ということで、本来ならばもっと強力な武神具を渡したいところですが、これが我々が現時点で渡せる最強の武神具です。受け取ってくれますね?」
「はい。しかし、私のような未熟者が扱いきれるでしょうか…」
「大丈夫です。貴方のように強い心を持っている人ならば雪霞狼にも受入れてもらえるでしょう。最も、勝手にこれを一本持ち出して自分専用に改造したお馬鹿さんもいましたが」
「うぐっ、言葉の刃が」
「霊斗さん…」
雪菜は明らかに蔑んだ目で霊斗を見ている。
「それでは二人とも、頼みましたよ」
三聖の気配が消えた。
「勘弁してくれ…」
「こっちの台詞です…」
雪菜の災難はここから始まるのだった。
次回は古城と雪菜の邂逅ですかね…
それでは次回もお楽しみに(楽しみにしてる人いるのかな…)