ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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今回で戦王の使者編は完結です。
では、本編をどうぞ!


戦王の使者編ⅩⅡ

第十三号増設人工島(サブフロート)地下。

古城達は出口を目指して歩いていた。

「にしても、一向に出口が見つからねぇな……」

「浸水も酷いし……」

すでに、水かさは二人の膝辺りに到達しようとしていた。

「うう……寒い……」

紗矢華が震える。

古城は一瞬考えて

「これ着てろよ。それなら寒くないだろ?」

「う……。あ、あんたの着たパーカーなんて、ほんとは着たくないけど、寒いから仕方なく来てあげるわ!」

「大分酷い物言いだな……」

紗矢華は渋々パーカーを羽織る。

そして、またしばらく歩く。

 

 

 

 

オシアナス・グレイヴ甲板。

霊斗はアスタルテを抱き抱えていた。

「どうしてこうなった……」

「霊斗さんが血を吸い過ぎるのがいけないんです」

「それは悪かった」

そう、霊斗が血を吸い過ぎたせいでアスタルテは貧血を起こしたのだ。

だが、お陰で霊斗の力は格段にアップしていた。

「さて、じゃあ古城達と合流すっか」

「そうしましょう」

そして、霊斗は空間転移で絃神島へ跳んだ。

 

 

 

 

第十三号増設人工島(サブフロート)

雪菜は地面に空いた大穴を見て、唖然としていた。

「どうしてこんなことに……」

恐らく、あの人の仕業だろう。

こんなことだから、目が離せないのだ。

だが、その時。

地下から膨大な魔力の波動を感じた。

多分、あの人の新しい眷獣だろう。

つまりあの人は、自分が居ない間に誰かの血を吸ったのだろう。

「先輩、後でお説教ですからね……」

 

 

 

 

 

第十三号増設人工島(サブフロート)地下。

古城達はやっと、上に行ける場所を見つけた。

だが、瓦礫が邪魔で使うことが出来ない。

「くそっ、どうすりゃいいんだ……」

新しい眷獣が使えれば恐らく突破出来るだろう。

だが、そのためには強力な霊媒の血を吸う必要がある。

どうしたものか。

すると、紗矢華が急に口を開いた。

「ねぇ、暁古城。もしかして、新しい眷獣が使えればって思ってる?」

「ななな、なんのことだ?」

「あの、ね。もし良かったら、私の血を……」

「え……。いい、のか?」

「うん。でも、一つ聞いていい?」

「あ、ああ」

「その、私って大きいよね……」

「なにがだ?」

「その……背が……」

「背?いや、別に普通じゃないのか?」

実際古城は気にしていなかった。

むしろ話しやすいだろう。

「そ、そう……。じゃあ、早く終わらせて雪菜達と合流しないと」

「ああ、悪いな。じゃあ……」

古城は紗矢華の血を吸った。

そして、数秒すると。

「よし、ありがとうな煌坂。もう行けそうだ」

「そう……。じゃあ、早くしてよ」

「ああ。やれ!双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

古城は眷獣に瓦礫の破壊を命じた。

 

 

 

 

 

 

 

第十三号増設人工島(サブフロート)

霊斗とアスタルテは雪菜から少し離れた所へ立った。

「さて、あいつらが出てくるのを待つか」

「はい。そうしたら、皆でナラクヴェーラを破壊しましょう」

「……アスタルテ、お前ってそんな破壊的な性格だったか?」

「霊斗さんのせいです」

「なんで!?」

「ふふっ、冗談です」

そんなアスタルテの笑顔に見とれてしまった霊斗だった。

が、すぐにその表情が引き締まる。

「さて、やっと来たか」

「そのようですね」

「ここからがクライマックスだ」

「最終決戦なう」

そして、二人は古城達の元へ歩く。

 

 

 

 

 

 

第十三号増設人工島(サブフロート)、クレーター。

「なんでこんな馬鹿でかいクレーターを作ったのかしら」

「猛烈に反省しております」

謝る古城。

これは、古城が望んだことではないが。

「そうですね、反省してください」

「雪菜!無事だったのね!」

「はい。紗矢華さん、先輩に血をあげたんですね?」

「っ!違うの!不可抗力だから!」

「そうだぞ姫柊!不可抗力なんだ!」

「はいはい、下らない言い訳はそこまでな」

「霊斗!?」

「全員集合」

「アスタルテも!?」

気付けば、いつの間にか全員揃っていた。

「さて、古城。あのナラクヴェーラの軍隊をどうする?」

うん、当然ナラクヴェーラも全機揃っていた。

「うわ……。どうすんだ?」

「秘密兵器を使う」

「秘密兵器?」

「ああ。実は浅葱が秘密のプログラムを作っていたんだ。な、モグワイ」

霊斗が話掛けたのは携帯だった。

そこには、不細工なぬいぐるみのアバターが表示されていた。

『おう、嬢ちゃんも大層ご立腹だったみてーだな。速攻で作っちまったぜ』

「で、それをあの女王ナラクヴェーラに流せば勝てる」

「あいつ、本当に人間かよ……」

「じゃあ、私達は」

「ああ。足止めを頼む。雪菜とアスタルテは引摺り出したガルドシュの相手を頼む。」

「わかりました」

命令受諾(アクセプト)

「よし、各自展開!」

まず、古城が眷獣を召喚し、攻撃を仕掛ける。

焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血脈を継ぎし者、暁古城が汝の枷を解き放つ!」

それは、緋色の双角獣(バイコーン)だった。

疾く在れ(きやがれ)!九番目の眷獣''双角の深緋(アルナスル・ミニウム)''!」

双角獣は、衝撃波でナラクヴェーラを潰していく。

「うわ……。やり過ぎたか……?」

「大丈夫。あのくらいじゃ獣人は死なないわよ」

「なあ、古城。復活してんぞ」

「デタラメ過ぎんだろ!」

「はぁ……。仕方ないわね、私の秘密兵器を見せてあげる」

紗矢華が得意気に笑う。

一番早く反応したのは霊斗だった。

「やっとあれをやんのか」

「あれ?」

「ええ。ただし、チャンスは一度だけよ」

「任せろ。一発で決める」

「じゃあ、やるわよ」

紗矢華はそう言って剣を変形させた。

「弓?」

「そう。これか煌華麟の本来の姿よ」

紗矢華は弓を構える。

そして、祝詞を唱える。

「獅子の舞女たる高神の真射姫が讃え奉る」

その細い指先が矢を引く。

「極光の炎駒、煌華の麒麟、其は天樂と轟雷を統べ、噴焔をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なり!」

紗矢華が放ったのは、鳴鏑矢だった。

人間の声帯では唱えることのできない呪文を詠唱したのだ。

その呪文の効果で、すべてのナラクヴェーラが動きを止めた。

「よし、行くぜ!」

霊斗は駆け出す。

すると、女王ナラクヴェーラから、ガルドシュが出てきた。

「フハハハ!戦争は楽しいな!少年!」

「戦争?笑わせんな。てめえはただ、自分の欲の為に人に迷惑を掛ける身勝手な犯罪者だ!」

霊斗の言葉に、ガルドシュの顔が怒りに歪む。

そして、雄叫びをあげて霊斗に飛び掛かった。

だが、横から来たアスタルテの飛び蹴りをくらい、吹き飛ぶ。

その先には、雪菜がいた。

「若雷―!」

まともに喰らったガルドシュはさらに吹き飛ぶ。

そして―

「終わりだ!オッサン!」

古城の拳で止めをさされた。

最後に霊斗が

「ナラクヴェーラ、ぶっ壊れろ」

運転席で浅葱の作った音声ファイルを流す。

ナラクヴェーラは、完全に動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

彩海学園、屋上。

霊斗は、浅葱を保健室に送り届けた後、アスタルテに呼び出されたのだ。

「改めて話しってなんだ……?」

霊斗は階段を上り、屋上の扉を開ける。

「おーい、アスタルテー?話ってなんだー?」

しかし、屋上には誰も居ない。

「あれ?おかしいな……」

場所を間違えたかと、振り向く。

そこにアスタルテがいた。

二人の距離、約三十センチ。

「うぉぉぉっ!?」

驚いて後ずさる霊斗。

そのまま、尻もちをつく。

「霊斗さん……」

アスタルテが近づいて来る。

そのまま、霊斗はアスタルテに押し倒された。

「!?な、なにを……?」

しかし、霊斗はその先を言うことはできなかった。

アスタルテが霊斗にキスをしたのだ。

余りの急展開に頭が付いていかない。

そして、キスを止めたアスタルテは一言。

「私は、霊斗さんの事が好きです」

「……」

驚きで一杯だと言うような霊斗の表情。

「あのー、霊斗さん?」

「…………え……?」

「あの、答えを聞きたいのですが……」

「待ってくれ、急展開で読者も驚いてるから、説明を頼めるか?」

「わかりました」

そこでアスタルテは、霊斗が最初に助けてくれたのが嬉しかったこと。

人工生命体である自分に沢山の感情を教えてくれたことに感謝していること。

そして、霊斗の戦っている姿に惚れたことを、恥ずかしそうに話した。

「うん、分かったよ……」

そこで、不安そうにアスタルテが聞く。

「それでは、答えをお聞きしてもよろしいですか?」

「ん……」

霊斗は少し考える。

だが、霊斗がアスタルテを血の従者にした時点で結果的には同じだということに気付く。

結論。

「えっと……、こんな自分で良ければ、その……よろしく?」

その答えを聞いて、アスタルテの表情が明るくなる。

こうして、アスタルテと霊斗は付き合い始めた。

そして誓う。

どんなに辛くても、二人で支え合っていこうと。

なぜなら、二人は主人と血の伴侶なのだから。




さて、最後は急展開ですいません。
次回は、少し日常編を入れたいですね。
では、また次回!

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