それではどうぞ。
聖者の右腕編 Ⅰ
真夏の街。
その名も絃神島。
夜中でも光の絶えないこの街にはとある噂がある。
第四真祖と第五真祖。
男は言う。
第四真祖は不死にして不滅。
一切の血族同胞をもたず、支配を望まず、ただ災厄の化身たる十二の眷獣を従え、人の血を啜り、殺戮し、破壊する。
世界の理から外れた冷酷非情な吸血鬼なのだと。
過去に多くの都市を滅ぼした化け物なのだと。
別の男が言う。
第五真祖は肉体を持たない。
魂だけで彷徨い、人に取り憑き、災厄を呼び込み、神にも匹敵する力を持つ十二の眷獣を従え、人の血肉を喰らい、虐殺し、次の街へと彷徨って行く。
第四真祖よりも凶悪な吸血鬼だと。
そして、第四真祖と第五真祖は兄弟なのだと。
別の男が聞く。
―本当にこの街にいるのか?
人々はそんな噂は信用しない。
なぜならこの街は魔族特区。
魔族などそこらじゅうにいる。
だから、人々はそんな噂に怯えることなく生活している。
その頃噂の張本人達はというと…
「なあ、古城」
「なんだ」
「なんで俺達はこんな夜遅くにアイスを買いに行かされているんだ?」
「しらん、凪沙に聞け」
どうやら彼らは妹に頼まれてアイスを買いに行かされているらしい。
一人は片手にすかすかなコンビニ袋を持ち、白いパーカーのフードを被っている。髪の毛は前髪の色素が少し薄い。
もう一人は両手にコンビニ袋を持って、黒いパーカーの前を開けて、中には白いTシャツを着ている。髪の毛は深い闇を連想させるような黒に一房銀髪が混ざっている。
「なあ、古城」
「なんだよ」
「アイス少し持ってくれ」
「やだ」
「即答かよコンチクショウ」
「だってそれ全部お前のだろ?」
「チッ」
「お前な…」
そんな他愛もない会話しながら歩いていると、向かいから浴衣を着た二人の女性が歩いてきた。年齢は20歳くらいだろうか。大人びた顔立ちに少し学生のような無邪気さが混ざっている。
そんな二人とすれ違って歩いていると背後から短い悲鳴と共に何が倒れる音がした。
古城と霊斗が振り向くとさっきの二人の一人が転んでいるのが視界に入った。
その時霊斗は目撃した。
一瞬遅れて古城も気づく。
転んだ女性の浴衣の裾が捲れて太腿が見えているのだ。
まずい‼
二人の吸血鬼はそう思った。
次の瞬間古城が鼻血を吹き出した。
更に次の瞬間霊斗が鼻血を地面に向けてものすごい勢いで噴射した。
「うお!?大丈夫か霊斗!?」
「ああ…、なんとかな」
二人共顔が青白い。
「やべぇ貧血」
「まあ、吸血衝動が収まって良かったと考えよう」
「はあ…、勘弁してくれ…」
「全くだ…」
これは暁古城と霊斗。
二人の吸血鬼が織り成す物語である。
まあ、最初はこんなかんじですかね。
次回もなるべく早く出せるようにするぜ!