ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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黒の剣巫編Ⅴ

コテージの庭。

矢瀬が肉を焼きながらはしゃいでいる。

その隣でうんざりしたように火の管理をしている古城に近づいて、霊斗は言った。

「なあ古城。あれはどうしたんだ?」

「あー……ちょっとな」

二人の視線の先には不機嫌そうに海を眺めている浅葱がいた。

「またお前がなんかしたのか」

「いや、あれはおあいこだろ……」

事情を聞くと、どうやら浅葱が着替えている部屋に古城が侵入してしまったらしい。

しかし、その直後に目覚まし時計で攻撃されている為、お互い様だというのが古城の意見である。

「ちゃんと謝ったのか?」

「謝ったよ……それでもダメだからこうなってるんだろ……」

「確かにな……古城焼けた肉寄越せ。浅葱に渡してくる」

「ああ、頼んだ」

霊斗は古城から肉の載った皿を受けとると、浅葱のもとへ向かった。

「浅葱、肉食うか」

「ありがと」

素っ気なく答えながら皿を受け取り、無言で食べ始める。

そんな浅葱の様子を見て、霊斗は言う。

「なんだ、古城に誉めてもらえなかったから拗ねてるのか」

「んなっ!?拗ねてなんかないわよ!」

図星だったのか、顔を真っ赤にしながら浅葱が霊斗の足を踏む。

しかも小指をピンポイントでだ。

「ぎゃぁぁぁぁ!?いてぇぇぇぇ!」

「あんたが馬鹿なこと言うからでしょ!」

足を押さえて悶絶する霊斗を無視して浅葱は次々と肉を食べていく。

そして数分後には矢瀬と古城が絶望的な表情をしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗はコテージの屋上で電話を掛けていた。

数回のコールのあと、電話が繋がる。

すると電話口から気だるそうな少女の声がする

『なにかしら、このあと依頼者(クライアント)と会う約束があるのだけれど』

「時間は取らせないから安心しろ。その依頼者に関してだ。」

霊斗がそう言うと少女は軽くため息をついて言うう。

『依頼者が誰かなら教えないわよ』

「それは大体見当がついてるからいいさ。それより紗矢華には手を出す気でいるのか、そいつは」

『今のところはないわ。もっとも、彼女の今後の態度次第でしょうけど』

「そうか……何かあったらお前も手を貸してくれるんだよな、霧葉」

霊斗がそう聞くと、少女は少しの無言を挟んで答える。

『ええ、私の手に終えることなら、ね』

そして電話が切れた。

携帯をポケットにしまって、霊斗は呟く。

「手に終えない事が起きるフラグだろ、それ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンクリートで囲まれた部屋。

その中で少女――紗矢華は手錠と格闘していた。

「ああもう!なんで魔族用の手錠なんて使ってるのよ!?外れないじゃない!!」

そんな紗矢華のいる部屋に新たな少女が入ってくる。

黒いセーラー服を着た、長い黒髪の少女である。

「獅子王機関の舞威姫も拘束してしまえば無力なものね」

「そういうあなたは太史局の六刃神官ね。江口結瞳を使って何をしようとしてるの?」

「聞かれて正直に答えると思う?」

そう言って少女は紗矢華の足元に剣を投げる。

獅子王機関の秘奥兵器の一つ、六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)だ。

そして少女は紗矢華の手錠を外し始める。

「なんのつもり?」

「単なる気まぐれよ。もっとも、代わりに少し協力してもらうけれど」

自由になった手首を回しながら紗矢華は聞き返す。

「協力?」

「ええ。私は太史局の六刃神官、妃崎霧葉よ。よろしく、煌坂紗矢華」

「なんで私の名前を……!?」

動揺する紗矢華の前で霧葉がどこからか取り出した武器――銀色の双叉槍(スピアフォーク)だ――を振る。

そこから発せられる不快な音響を聞いたのを最後に、紗矢華の意識は途切れた。


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