ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

12 / 127
できれば今回で聖者の右腕編は終わりにしたい。
では、本編をどうぞ。


聖者の右腕編 ⅩⅠ

しばらく霊斗達は走った。

ひとつの会社の前で天音が立ち止まる。

「ここだね。皆、準備はいい?」

「出来てなきゃ、ここにいねーよ」

「先輩の言う通りです」

「俺を誰だと思ってるんだ?お前の宿主だろ。眷獣に準備が出来てて、主が出来てなかったら情けないだろ」

「そうだね。じゃあ行こう」

入口につくと、そこには古びた南京錠がかかっていて、誰かが使った痕跡はないように見える。

「なあ、天音。ここで合ってるのか?」

「まったく……」

「古城は馬鹿だなぁ」

「先輩、初歩的な幻術です。本当にド素人ですね」

「あんまりだ……」

そして、雪菜が雪霞狼で南京錠に触れると、南京錠は真新しい物になり、地面に落ちた。

「行くぞ」

そう言うと霊斗は扉を開けた。

扉を閉めると暗闇だった。

古城、霊斗は吸血鬼なので、夜目がきく。

雪菜は霊視で視ているようだ。

しかし、もう一人。天音はというと。

「わー、霊君ー暗くて見えなーい」

「嘘つくな。くっつくな、暑苦しい」

「お前ら、戦いの前だってのに緊張感ねーな」

いつも通り馬鹿だった。

しばらく歩くと広い、明るい空間に出た。

そこには、人工生命体の調整槽が大量に並んでいた。

その中には獣、妖精などのような形をしたものが…。

「おい…、これが、こんなものが人工生命体だってのかよ……」

「違う。これは……」

と、その時。

「警告します。直ちにこの島から逃げて下さい」

「お前は……」

「先輩は見ちゃ駄目です!」

「霊君も駄目だよ!」

「「いや、まてお前ら」」

アスタルテは手術着のようなものを羽織っただけ、しかも調整槽から出てきたばかりなのか、濡れているために服が体のラインを浮き立たせている。

しかし、古城も霊斗もそんなことに構ってはいられなかった。

アスタルテの肌に薄い虹色が見えたのだ。

また、先程の逃げろという発言についても聞かなくてはいけない。

「逃げろってどういう事だ?」

「この島は間もなく沈みます。海上に造られた人工の島は要を失えば滅びるのみ―」

「つまり、キーストーンに何かしようとしているということか」

と、新たな声が割り込んでくる。

「その通りです。第五真祖よ。流石に鋭い」

「ふん、犯罪者に誉められたって嬉しくないぜ」

「ほう、我々が犯罪者だと?貴方ならあの要石に使われているもの位わかるのではないのですか?」

「ああ、知ったのはついさっきだがな」

「まて、霊斗。話についていけない」

「後で説明してやるよ―がっ!?」

霊斗にオイスタッハの拳が刺さる。

霊斗は数メートル飛び、倒れる。

「霊斗!」

「敵の前でよそ見とは余裕ですね。ですが、その余裕もいつまで持つか」

「霊斗さん!―雪霞狼!」

「アスタルテ!」

「命令受諾、実行せよ、''薔薇の指先''」

「避けろ、姫柊!よくも霊斗を!」

雪菜の攻撃からオイスタッハを守るように飛び出してきたアスタルテ。

その姿は眷獣―顔のないゴーレム―に完全に取り込まれていた。

それを古城が雷光を纏った拳で殴ろうとする。

しかし

「駄目です!先輩!」

雪菜が叫ぶ。

と、同時に古城の拳が触れたゴーレムの表面が青い結界に包まれる。

「がはっ!」

古城に逆流した魔力が古城自身の身体を焼く。

それに追撃しようとするアスタルテ。

が、雪菜の槍に阻まれる。

「これは―!」

雪菜が気づいた時。

「剣巫よ!我が手によって死になさい!」

オイスタッハの斧が雪菜に向けて振られる。

しかし、予想していた痛みは無い。

「かはっ」

驚くほど近くで古城が咳き込む声が聞こえる。

目を開けると、古城の背中に斧が突き刺さっていた。

「先……輩」

古城の身体が無惨に引き裂かれる。

そして、雪菜の腕の中に残ったのは古城の首だけだった。

「先輩……、そんな…、いや……」

そんな雪菜を一瞥し、オイスタッハは

「行きますよ、アスタルテ」

「命令受諾」

と、その時。

「待てよ、テメェ」

霊斗が立ち上がっていた。

「どうしました?第五真祖。今の貴方に勝ち目など無いでしょう?」

実際その通りだった。

無限のはずの真祖の魔力がもうない。

つまり、眷獣は使えない。

回復も出来ない。

そう。霊斗は所詮真祖の魂を受けいれて、その力を取り込んだ半人半魔。

だが、まだ半人の力がある。

霊能力者としての―剣凰としての力が。

「氷牙狼!」

霊斗は空間転移で自らの武器を取り出す。

「ほう、まだ諦めませんか。では、私が相手をして差し上げましょう」

そう言うと、オイスタッハは斧を構え、霊斗に突進する。

「うぉぉぉ!」

霊斗は斧を弾く。

が、

「ぐぁっ!」

そのボロボロの身体にオイスタッハの拳が打ち込まれる。

そして、今度こそ霊斗は完全に意識を失った。

それを確認すると、オイスタッハは歩き出した。

自らの正義の為に。

そして、アスタルテは泣き続ける雪菜を悲しそうに見ると、オイスタッハに続いて歩きだす。

人工生命体としての自分の役目を果たすために。




次回、聖者の右腕編完結!(予定)
では、また次回。
出来れば評価、お気に入り登録お願いします‼

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。