ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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この話、長いなぁ……。


愚者と暴君編ⅩⅣ

流星の降る夜からまた数ヵ月が経ち、新学期。

古城はあまり代わり映えしない高等部の制服を着ながら霊斗を呼んだ。

「なぁ、霊斗」

「なんだ」

既に着替え終わっている霊斗がスマホを見ながら素っ気なく答える。

古城はその画面を覗き込みつつ聞く。

「なぁ、焔光の宴ってどうなってんだ?」

「知らねーよ。ザハリアスがあれからどんだけ素体を集めたのかだな。まぁ、ジャーダのとこのは奪われてないみたいだし……後はヴァトラーがどうするか、だな」

「誰だよそいつら……まぁいいや、先行ってるぜ」

「ああ」

古城はカバンを掴み、玄関に向かう。

「こじょう、行ってらっしゃい」

「おう、アヴローラ。行ってくる」

古城はアヴローラの頭を撫でると、家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、ザハリアスからの招待状持ってるんだろ」

唐突に背後からかけられた声に驚きつつ、アヴローラが振り向く。

そこには気だるげな表情をした霊斗がいた。

「な、なんのことだか我にはわからぬ……」

「誤魔化すのが下手なんだよ……」

ため息をつきつつ、霊斗はアヴローラに向けててを差し出す。

「見せろ、日時と場所がわかればいい」

「れいと……」

アヴローラは首を横に振り、霊斗の手を掴む。

「一人で行くの、危険。我も一緒に……」

震える声でそう言うアヴローラ。

しかし、霊斗はそっとアヴローラの頭に手を乗せると言った。

「駄目だ。ザハリアスはお前を利用しようとしてる。だから……」

そこまで言って、霊斗は言葉を切った。

アヴローラは続きを促すように霊斗の顔をみる。

霊斗はそれに微笑み返し、言った 。

「俺が行ってあいつの計画をぶち壊す」

その声音はいつもの霊斗のものではなかった。

体は霊斗なのに中身はもっと凶悪で邪悪ななにか。

それを感じ取ったアヴローラが恐怖で震え出す。

そこに追い討ちをかけるように霊斗が言った。

「場所と日時を教えろ」

「ひうっ……つ、次の満月の夜、旧南東地区のクォーツゲートにて、焔光の宴を開始すると……」

怯えたアヴローラが辿々しく言うと、霊斗は一度目をつぶり、大きく深呼吸する。

そして、アヴローラの頭を撫でながら言う。

「悪かったな、怖がらせて。じゃあ、俺も行ってくるから、留守番よろしくな」

そう言って出ていった霊斗はいつも通りの暁霊斗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、早朝の暁家。

古城はテレビを見ながら呟いた。

「ネラプシ自治区で謎の感染症が流行?」

古城の呟きに凪沙が答える。

「原因不明なんだって、怖いよね……」

そう言って画面を見る凪沙の目には恐怖の色は見えない。

古城は凪沙の様子に少し違和感を覚えたが、続く霊斗の言葉に気をとられる。

「ネラプシか、それに患者の記憶の欠落……始まったか……」

「始まったって……あれが?」

「ああ」

古城と霊斗がこそこそと話していると、凪沙が不満げに頬を膨らませながら言う。

「じゃああたし、もう行くから。二人とも遅刻しちゃダメだよ」

「へいへい」

「お前も体調は気を付けろよ」

古城がそう言うと、凪沙は明るく頷いて玄関へと向かっていった。

古城はテレビのスポーツコーナーを見ていたが、霊斗は玄関の方をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪沙が駅までの道を歩いていると突然、スーツ姿の集団に声をかけられた。

「暁凪沙さんね?」

「はい、そうですけど……」

凪沙が警戒しつつ答えると、集団のリーダー格のような女が自分たちの事を喋りだした。

「私たちはあなたの嫌う魔族を根絶するために活動をしているの。どう?素晴らしいと思わない?」

その狂気を孕んだ口調に恐怖を感じながら凪沙が言う。

「それって差別なんじゃ……」

「そういう言い方もできるわね」

そう言って女は懐に手を伸ばし―――たが、その手は空を切った。

正確には、女の手首から先が一瞬で千切れたのだ。

「え?」

呆然と呟く凪沙の前には霊斗が立っていた。

「おいおい、こんな街中で拳銃なんて物騒なもん取り出そうとするなよ」

そう言った霊斗の手には数丁の拳銃が。

その数はちょうどこの場にいる差別主義者の人数と同じ。

それを見てやっと我に帰った男が霊斗に殴りかかる。

「な、なんだ貴様!」

「このッ―」

しかし、その拳は霊斗に当たらない。

「遅ぇな……止まって見えるぜ」

そう言って獰猛に牙を剥いて笑う霊斗。

「こいつっ、吸血鬼だ!」

「殺せ!」

そう言って男たちは次々に武器を取り出す。

どれも対魔族用の強力な武器だ。

「やれ!」

一人の掛け声とともに、男たちが一斉に霊斗に襲いかかる。

しかし、ダメージを受けたのは男たちの方だった。

彼らの武器は溶解し、原型を留めていない。

さらに、武器を持っていた手は焼け爛れ、所々炭化している。

それもそのはず、霊斗の回りにはいつの間にか魔力の炎が発生していたのである。

「燃え尽きろ」

霊斗がそう言った直後、差別主義者たちの身体は一瞬で燃え上がり、断末魔の悲鳴すらあげさせずに蒸発した。

少し焦げ臭い空気が漂うなか、凪沙は霊斗に恐る恐る声を掛ける。

「れ、霊斗君……?」

凪沙の呼び掛けに霊斗は一言だけで返した。

「早く行け」

「う、うん……助けてくれてありがと」

凪沙はそう言って駅までの道を再び歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗は凪沙が見えなくなったのを確認すると、天音を喚び出した。

「さて、隠れてないで出てこいよ」

霊斗がそう言うと辺りに霧が立ち込め、三人の少女が姿を表した。

「三番目、四番目、五番目か……」

それぞれの"焔光の夜伯"たちは天音の前に膝をつくと、恭しく頭を下げた。

「申し訳ありません、十二番目の面倒まで見ていただいた上、〇〇の器までも守っていただき……こうなったのも我らの落ち度。どうぞ何なりと罰を」

それを聞いた天音は少し考えた後、こう言った。

「じゃあ、何かあったら私たちを助けてね」

天音の言葉に頷いたあと、少女たちは再び霧になって姿を消した。

それを見届けると、天音は霊斗の方を向いて言った。

「今夜は満月だよ」

「ああ。行こうか」

そう言って霊斗は天音の手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな下らない宴は、もう終わりにしよう」




そろそろクライマックスですね。
ではではまた次回!

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