ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書きます。


愚者と暴君編ⅩⅢ

古城たちがアヴローラと生活するようになってから数ヵ月が経過したとある冬の日。

その日の朝、霊斗は気になるニュースを見かけた。

「滅びの王朝、イブリスベール・アズィーズ王子の城が襲撃にあった……?」

イブリスベール・アズィーズといえば、第二真祖直系の王族である。

その城を容易く落とすなど他の王族以外にできるはずがない。

「いや……まさかな」

霊斗は嫌な予感を頭のすみに追いやると、パーカーを羽織り玄関に向かう。

「霊君」

「なんだ」

霊斗が振り替えると、心配そうな表情をした天音が立っていた。

「そろそろ、向こうが動き始めるかも」

「ん、わかった。こっちも手回しを始めよう」

霊斗はそう言って家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊斗が向かった先はとあるマンションの最上階。

「お邪魔しまーす」

そう一言告げてドアを開くと、そこには不満げな表情でソファーに腰かける那月がいた。

「返事も聞かずに入ってくる奴があるか馬鹿者」

「いいじゃん、俺と那月ちゃんの仲だろ?」

「親しき仲にも礼儀ありというだろう。第一私が着替えている途中だったらどうするつもりだ」

「え、喜ぶ」

霊斗が真顔で返すと、那月は顔を真っ赤にしながら霊斗の顔面に飛び蹴りを放った。

「ぐぼぇ!?」

「このド変態が!しばらくそこで反省してろ!」

そう言って那月は別の部屋へと消えていった。

一人部屋に取り残された霊斗はしみじみと呟いた。

「黒、か。まったく背伸びしちゃって……」

このあと、酷い目にあったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日午後、古城は凪沙たちと出掛けるための準備をしていた。

「こじょう、何処に行く?」

そう言って飛び付いてきたアヴローラを撫でながら古城は答える。

「マリーナだよ。ほら、親父の船があるところ。あそこで天体観測するんだ」

「おぉぉ……星をみるのか!?」

「そうだよ、お前もいくか?」

「行く!」

そう言ってはしゃぎ回るアヴローラに苦笑しつつ、古城は支度を再開する。

しかし、その時だった。

「古城……君?」

「な、凪沙……」

タイミング悪く、凪沙とアヴローラが鉢合わせてしまったのだ。

突然現れた凪沙に怯えて隠れるアヴローラを指差し、凪沙が言う。

「なんで吸血鬼がここにいるの?」

「お、落ち着け凪沙。こいつは危険なやつじゃないから……」

「嫌だ……!出ていって!この家から!早く!」

そう言ってアヴローラを睨み付ける凪沙。

「……っ!」

「あっ、アヴローラ!」

凪沙の言動に怯えたのか、アヴローラは外に向かって走って行ってしまった。

突然の展開過ぎて古城が慌てていると、霊斗の部屋から出てきた天音が凪沙を抱き締めながら言う。

「古城君はアヴローラを追って。凪沙ちゃんは私が」

「ああ、頼んだ」

古城は玄関に向かい、外に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは……霊斗君の……」

「大丈夫、〇〇はまだ目覚めてないから」

「そう……良かった」

「これからのことは私が何とかするから。あなたはもう、休んでいいんだよ」

「そっか……ごめんね」

「任せて」

 

 

 

 

「私が全て終わらせるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリーナにて、古城は正座していた。

その正面に立つ霊斗の表情は凄まじかった。

「オイコラ、なにか言い訳はあるか?」

「ありません、全て俺の不注意のせいです」

そう言って古城は土下座する。

「ったく。天音がいたから良かったものの……もうすぐで絃神島存亡の危機だったんだぞ」

「そんなにやばかったか、あれ」

古城が聞くと、霊斗は頷き説明する。

「具体的に言えば、封印の解けた第四真祖によって島民全員が記憶を奪われる。そのあと島の管制システムも全部乗っ取られるだろうな」

「マジか……」

古城は改めて自分の失敗の大きさを実感する。

そんな古城の服の裾を引っ張る人物がいた。

「こじょう、元気出して」

そう言ってアヴローラは自らの持っていたカップ麺を古城に差し出す。

自分も凪沙に色々言われて傷ついているだろうに、そんなふうに古城を心配してくれるアヴローラに、古城は不覚にも泣きそうになった。

しかし、男としてここはぐっとこらえ、笑って礼を言う。

「ありがとな、お前もあんまり気にすんなよ」

「うん」

そう言ってアヴローラは頷くと、再び古城にカップ麺を差し出す。

「お、サンキュ」

そう言って古城が受け取ろうとすると、アヴローラはさっと容器を自分の胸元に抱く。

「なんだよ、くれないのか?」

古城がそう聞くと、アヴローラは首を横に振り、麺をフォークで掬い上げて言った。

「こじょう、あーん」

「!?」

あまりに不意打ちすぎるアヴローラの行動に、驚き固まる古城。

そんな古城に霊斗が苦笑しつつ言う。

「それがアヴローラなりの励ましかたなんだろ、ちゃんと食ってやれよ」

「お、おう」

そう言って古城は麺を口に含む。

「うん、うまい。ありがとな、アヴローラ」

古城が頭を撫でてやると、アヴローラは気持ちよさげに目を細めて古城にすり寄る。

「ってカップルかっ!」

唐突に大声を上げた浅葱に驚きつつ、古城は言う。

「い、いきなりどうした浅葱」

「いやいや、あんたらはカップルかっての!なにがあーんよ!リア充爆発しろ!」

「お、おう……どうしたんだほんとに」

浅葱の急変っぷりに戸惑いつつ、古城が助けを求めて霊斗を見るとそちらも混沌とした空間になっていた。

「霊斗!私もあーんしてあげるわ!」

「ヴェルディアナ!?おま、どこからわいて……!?」

「ほら、ほらほら!」

「むぐっ!?」

古城はため息をつくと空を見上げる。

雲の隙間からは時折流星が見え隠れする。

しかし、しばらくすると雲が濃くなり星は見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「舞台は整った……」

美しく輝く宮殿のなかで一人の男がそう呟く。

彼の隣には金剛石の棺で眠る少女がいる。

「始めましょう―――"焔光の宴"の準備を」




ではではまた次回!

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