本当にごめんなさい。
では、本編をどうぞ。
早朝。
まだ薄暗い部屋のソファの上で霊斗は目を覚ました。
「いつの間に寝てたんだ俺……」
どうにも眠る前の記憶がハッキリとしないが、気にしないことにして起き上がる。
そのまま自室のドアを開ける。
中では天音とアヴローラが寝ていた。
「……なんで俺の部屋で寝てんだよ……」
霊斗はため息をつくと、物音を立てないようにしながら着替え、玄関に向かう。
そしてドアノブに手をかけた時、背後から声をかけられた。
「全く、私をおいてどこに行くつもりかな?」
「なんだ天音か、びっくりさせんなよ……」
霊斗はそう言って振り替える。
そこにはなぜかパジャマのままで立っている天音の姿が。
「……はぁ、先に着替えてこい」
「あ、うん。ちゃんと待っててね?」
「はいはい……」
霊斗がそう答えると天音は霊斗の部屋に入っていった。
それを確認してから、霊斗は家を出た。
「さて、どうするかな……」
古城には"焔光の宴"について調べるとは言ったが、これと言った手がかりはない。
仕方なく学校の方へと歩いていくと、見知った後ろ姿を見つけた。
「那月ちゃん、おはよう」
「担任をちゃん付けで呼ぶな馬鹿者が」
那月がそう言うと同時に霊斗の脛に蹴りが入る。
「ぎゃぁぁぁ!?ちょ、体罰だ!」
叫びながら地面をのたうち回る霊斗を冷ややかに見下ろしながら那月は言い放った。
「ここは校外だ。それに私をその呼び方で呼ぶときは攻魔師の仕事がらみだろう」
「いや、その通りなんだけどさ……」
痛みを堪えながら霊斗は那月に聞く。
「ところで那月ちゃん、"焔光の宴"って知ってる?」
霊斗の質問を聞くと同時に那月の顔が険しくなる。
「まさかお前、"宴"に介入するつもりじゃないだろうな?」
「いや、もう巻き込まれてんだよね」
「はぁ……なぜお前は次から次へと問題に巻き込まれるんだ……」
那月はそう言ってため息をつくと、懐から一冊の本を取り出す。
「それは?」
「暁牙城から預かった古学書だ。いざというときお前に渡せと言われていたのでな」
そう言って那月は霊斗に本を渡す。
「父さんが……よし、わかった。ありがとう、那月ちゃん」
「いいさ、変わりに……そうだな、今度買い物に付き合え」
「へいへい……んじゃ、今日は俺学校休むから」
「仕方のない奴だな、補習は覚悟しておけよ」
那月がそう言った時には既に霊斗は遥か彼方へと走り去っていた。
那月はやれやれとため息をつき、学校に向かって歩き出した。
霊斗が自宅のドアを開けると、そこには一つの段ボール箱がおいてあった。
「なんだこれ……差出人はディミトリエ・ヴァトラー……ってあのホモ吸血鬼か!」
背筋に走る悪寒に耐えつつ箱を開けると、その中には女児用の服が何着か入っていた。
「なぜ服……?ん、これは手紙か、なになに?」
『十二番目――アヴローラ・フロレスティーナの為に服を贈らせてもらった。まあ、うまいこと使ってくれたまえ』
「なんだ、奴にしてはまとも――ん?まだある」
『P.S:一つ忠告しておくと、暁凪沙とアヴローラ・フロレスティーナを会わせないように』
「これは……どういうことだ?昔のあの事故と関係が……?」
多くの疑問を抱きつつ服を片付け、自室に入る。
そこでベッドに腰かけつつ、牙城が見つけたのであろう古学書を開く。
そこには一枚のメモが挟まれていた。
「メモ……?父さんの字?」
そこには短い文が記されていた。
『絃神島から逃げろ』
ではまた次回!