夜も更けた頃、古城たちは自宅のマンションの前にいた。
「なあ霊斗、凪沙が起きてるかわかるか?」
「ちょっと待ってろ――おい、天音」
霊斗が呼ぶと、霊斗の隣の何もない空間から天音が現れる。
「凪沙が起きてるか調べてくれ」
「はいよー、ちょっと待ってねー」
天音はそう言うと、目をつぶり意識を集中させる。
そのまま十秒ほどすると、天音は目を開けてOKサインを出す。
それを見て頷いた霊斗は、極力音をたてないようにドアを開ける。
「よし、とりあえずアヴローラにシャワーを浴びせてこい。風呂の周りに結界を張っておくから」
「わかった。じゃあ天音、頼んだ」
古城が言うと天音は頷き、アヴローラの手を引いて脱衣所へと消えていく。
「ふう……これで一段落か」
「いや、アヴローラの服とかも買わなきゃいけないだろ?古城、お前浅葱に頼んでくれよ」
「浅葱か……わかった、霊斗は明日どうするんだ?」
古城が聞くと、霊斗はさらりと答える。
「休んで、焔光の宴について調べる」
「わかった。頼んだぜ」
古城にそう言われ、霊斗が頷いた時だった。
突然、風呂場からアヴローラの悲鳴が響いた。
「おい!防音どうした!?」
「結界の中から出てきた奴には適用されない」
「便利だなおい……ってそうじゃねえ!何があった!?」
古城がそう言って立ち上がった時には既に霊斗は脱衣所のドアを開けていた。
「おい!何があっ……た……え?」
勢いよく脱衣所に飛び込んだ霊斗の視界に広がる肌色の空間。
「あ……あ……あべしっ!?」
直後、霊斗は鼻血を噴いて倒れた。
「……失礼しましたー」
古城はなるべく中を見ないように気を付けながら霊斗を脱衣所から引きずり出す。
その後再び悲鳴が聞こえてきたが気にしないことにした古城だった。
数分後。
「どうも申し訳ございませんでした」
リビングで土下座する霊斗の姿があった。
「はぁ……ねぇ霊君。いくら焦っていたとしても、女の子が入っている脱衣所のドアを全力で開けるのはどうかと思うよ?」
「おっしゃる通りでございます」
天音は溜め息をつくと、霊斗の前に座る。
そして――
「えいっ」
霊斗の頭を胸に抱え込んだ。
「!?!?!?!?」
驚いた霊斗がもがくが下手に動くわけにもいかず、少しすると完全に沈黙した。
「お、おい……霊斗……?」
「……古城」
「な、なんだよ」
「ごめん、もう……無理……(がくっ)」
そう言って霊斗は四肢を投げ出して意識を失った。
その顔がなぜか姉に抱き締められた弟のような顔(?)になっていたのは触れないでおこうと思った古城だった。
「ねえ古城君」
「あ、はい」
「寝よっか」
「は!?き、急に何を言って」
「だってもう十二時すぎたよ?」
「……」
古城は一瞬とてつもなく死にたくなったが、死ねないことを思いだして溜め息をつく。
そしてなるべく平静を装って答える。
「そうだな、じゃあ天音はアヴローラを」
「はいよー、霊君の部屋使うねー」
そう言って天音はアヴローラと共に霊斗の部屋へと入っていった。
「霊斗は……ソファに寝かせとくか」
古城は霊斗をソファに寝かせると、自室へと向かった。
ではまた次回!