ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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書くよ。


愚者と暴君編Ⅷ

絃神島東地区。

古城はその一角にある桟橋にいた。

「あー……船だと入りきんねえからここでいいか」

牙城はそう言って折り畳み式のテーブルを持ってくる。

そしてテーブルのうえにある程度食事を並べ、その直後に酒をのみ始める。

「かーっうめぇ!」

そんな牙城を呆れたように見ながら、霊斗が言う。

「父さん、真面目に話をしてくれ頼むから……」

「おう!こいつを飲み終わったらな」

いつまでも不真面目な牙城の態度にしびれを切らしたのか、霊斗が拳に魔力を纏わせて構える。

「五秒だけ待つよ。五、四、三……」

「待て待て待て!それは洒落にならねぇよ!?」

牙城は悲鳴を上げながら酒をしまう。

そして霊斗が拳を下ろしたのを確認してから話し始める。

「さてと……まず何から説明するか」

そう言って牙城は古城の方を見る。

何が聞きたいか、ということだろう。

そこで、一番気になっている事を聞くことにした。

「ヴェルディアナさんと親父はどういう関係だ?」

「ヴェルディアナはリアナの妹だ。公式ではお前らを遺跡の崩落から守って死んだことになってる」

それを聞いて古城はいくつか引っ掛かる点に気付く。

「公式では……?しかも俺たちを守って?」

「そうだ。古城、お前はゴゾ島の遺跡でテロリストに襲われて……一度死んでいる」

牙城の言葉は突拍子もなかったが、この男は人の命に関わるようなところでは嘘をつかない。

つまり

「俺が……死んだ?」

「そうだ。そして第四真祖……いや、十二番目の焔光の夜伯の血の従者として生き返った」

あまりにも急すぎる自分の立場の変化に戸惑う古城。

「まじかよ……全然わかんねえけどな……」

そう言って自らの手足を眺める古城。

何らかわりないいつも通りの身体。

「まあ、俺の身体については置いといて……その、リアナ?さんがなんで表向きは死んだことにされてるんだ?」

「意外と驚かねえんだな……まあいい」

古城が聞くと牙城は呆れたように溜め息をつき、答える。

「まだ中学に入ったばかりのガキだった霊斗が、テロリストを全滅させたあげく貴重な遺跡を潰したんだ……国際問題に発展する可能性もある。だからリアナは自ら進んで死んだ役を買って出たんだ」

牙城のその台詞を聞いたヴェルディアナが急に涙をこぼし始める。

「ヴェルディアナ?」

霊斗が声を掛けると、ヴェルディアナは嗚咽を堪えながら言葉を絞り出す。

「じゃあ……姉様は本当に……生きて……」

「なあ、ヴェルディアナ」

泣き続けるヴェルディアナの肩を抱きながら霊斗がいう。

「リアナは今、この絃神島にいるんだけど……今度会いに行こうぜ。案内するからさ。きっと喜ぶよ」

「うん……ありがとう、霊斗」

そう言って涙を拭うヴェルディアナの頬は微かに紅く染まっていた。

「……で、親父。その事件の現場には凪沙もいたはずだよな?あいつが霊能力を失ったのは……」

古城の言おうとしている事がわかったのだろう、牙城は首を横に振る。

「違うんだよ、それは。凪沙は霊能力を失ったんじゃねえ、あのときから一瞬たりとも休まずに能力を使い続けてんだよ」

「なっ……それって……」

「あいつはあの遺跡にいた第四真祖の魂の一部を取り込んでお前を生き返らせたんだ。そしてその代償が今のあいつの身体ってわけだ」

牙城に告げられた残酷な真実に古城は凍りついた。

それはつまり、自分を助けたせいで凪沙は……。

「まあ、後半は俺の推測だがな」

「は?」

牙城の無責任な一言に開いた口が塞がらない古城。

そんな古城に牙城が言う。

「いや、俺はその場にいなかったんだよな。だから、詳しい話が聞きたきゃ霊斗に聞け」

「ほんっとに推測じゃねえか!無責任にも程があるだろおいぃ!」

古城が叫ぶと牙城はやけに楽しそうに笑う。

「はっはっはっ!まああれだ、今日はもう帰れ。遅いしな」

「あぁ……って、アヴローラはどうすんだ?」

「あぁ?お前が連れて帰れ。ただし凪沙には会わせるなよ?」

「わかってるよ。あいつの魔族嫌いはある程度は理解してるからな」

古城はそう言うとアヴローラの手をとる。

そして霊斗に声を掛ける。

「おい霊斗、帰るぞ」

「ああ、今行く」

霊斗がそう言って立ち上がると、牙城がその背に向けて言う。

「凪沙を頼む」

「ああ」

霊斗は短く答え、古城たちのところにくる。

すると、霊斗の背に再び声が掛けられる。

「霊斗……」

霊斗は振り替える。

そこにはヴェルディアナが立っていた。

「な、なんだ?」

「また、明日ね?」

「お、おう」

戸惑いつつ霊斗が答えると、ヴェルディアナは嬉しそうに船の中へと駆け込んでいった。

「なんなんだ……?」

首をかしげる霊斗に古城は、鈍感め、と視線を送ってからアヴローラの手を引いて歩き出した。

 




この頃から霊斗君は鈍感なのです。
では、また次回。

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