ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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そんじゃ書きます。


愚者と暴君編Ⅴ

「はぁ……くそっ、なんなんだよ……」

古城は激しい痛みを堪えながら歩いていた。

誰かが自分を呼んでいるような気がする。

そんなひどく不確定な感覚のなか古城は無人のゲートをくぐり、研究棟に入る。

自分でもどこに向かっているのかもわからないまま、古城は足を進める。

「こっちか……?」

通路を曲がると、視界を一面の霧が覆う。

その霧のなかに誰かがいる。

それは一人の少女だった。

燃えるような金髪、焔光に輝く瞳。

それらを古城は知っている。

「なんで俺は……あんたを知って……」

次の瞬間、少女が古城に接近する。

「なっ……!?」

その圧倒的な速度に絶句する古城を尻目に、少女が口を開く。

その口の中には鋭く尖った犬歯がある。

そして少女はそれを古城の首筋に突き立てる。

「吸血鬼!?俺の血を吸って……!?」

古城がそう言うと、少女は口を離す。

そして

「え……ぅあ……?」

古城を見ると怯えたように後ずさる。

「は……?」

古城は少女のあまりの豹変ぶりについていけず、ただ間抜けな声をあげる。

そんな古城の背後から急に声が聞こえる。

「おい、なにやってるんだ……?」

古城が振り向くと、呆れた表情の霊斗が立っていた。

その横にはもう一人女性がたっている。

「霊斗か……その人は?」

「ヴェルディアナだ。それでお前は何をしているんだ?」

霊斗に言われて、古城は自分の置かれている状況を確認する。

目の前には怯える裸の幼女。

後ろには攻魔師となんか綺麗な女性。

「なにやってんだろ、俺」

「こっちが聞きてぇよ」

そう言って溜め息をついた霊斗が真剣な表情になる。

「古城、逃げるぞ」

「は?いや、いきなりすぎてなにがなんだかわからないんだが」

「話は後だ!警備ロボが来る!」

戸惑う古城の腕をつかみ、霊斗が空間転移する。

一瞬、車よいに似た感覚がすると、次の瞬間にはMARの敷地の外へと移動していた。

古城の隣にはさっきの吸血鬼の少女がコートを来て立っている。

そのコートは、ヴェルディアナが着ていたものだった。

どうやら古城が戸惑っている間に着せていたようだ。

古城が拍子抜けして座り込むと、霊斗が古城になにかを渡す。

「なんだこれ?」

「従者の証だ。無くすなよ」

霊斗はそう言うと、次に吸血鬼の少女に話しかける。

「アヴローラ・フロレスティーナ」

「ひぅっ……?」

少女――アヴローラは一瞬ビクッと肩を震わせるも、恐る恐る霊斗を見る。

「俺たちは君の味方だ、怯えなくてもいい」

「みかた……?」

「ああ。だから俺たちと一緒に来てくれ」

「う、うむ」

霊斗の言葉にアヴローラは頷き、古城の服の裾を掴む。

「え?」

「お、古城のことは覚えてるのか?」

霊斗が聞くと、アヴローラは何度も首肯く。

「まて、覚えてるってなんだ?」

「そりゃあ昔会ってるのを覚えててもおかしくないだろ?」

霊斗の台詞に納得いかないように首を傾げる古城。

そんな古城に霊斗が言う。

「またあとでゆっくり説明する。今は安全な所に行くのが先決だ」

霊斗はそう言って歩きだす。

その後ろに古城とアヴローラが続き、最後にヴェルディアナが肩をすくめながらついてくる。

しかし次の瞬間、一発の銃声とともに霊斗の身体が宙を舞った。

 

* * *

 

七夕特別エピソード

「未来編・霊斗とアスタルテの星夜(せいや)

 

七月七日。

世間一般では七夕と呼ばれる日だ。

「おーいアスタルテ、笹の設置終わったぞー」

霊斗がベランダから部屋に向けて声をかける。

するとアスタルテがたくさんの短冊を持って出てくる。

「どうぞ、霊斗さん」

「おう、ありがとう」

霊斗はアスタルテから短冊を受けとると、ペンを持ち願い事を書いていく。

そしてそれを笹の葉に引っ掛ける。

するとアスタルテが霊斗に聞く。

「なんて書いたんですか?」

「願い事は人に話すもんじゃないだろ?」

そう言って霊斗はアスタルテの頭を撫でる。

そこに美霊が駆け寄ってる。

「おとーさーん!書けたよー!」

もう夜だというのに騒がしい娘に苦笑しながら、霊斗は部屋にはいる。

「ベランダにあるからかけておいで」

「はーい!」

元気よく返事をしてベランダに飛び出していく愛娘の背中を見送りつつ、霊斗はアスタルテに言う。

「そろそろ夕飯にしようか」

「そうですね」

そう答えてキッチンに向かうアスタルテ。

「アスタルテ、今日はなんだ?」

「素麺です。夏っぽくていいかと」

話ながらも作業の手は緩まないアスタルテ。

手際よく素麺を茹でていく。

「霊斗さん、お酒はどうします?」

「今日はいいかな」

「わかりました」

そんな風に働くアスタルテを見て霊斗は何か手伝える事はないかと考える。

するとそこに電話が掛かってくる。

霊斗が受話器を耳に当てると、偉そうな少女の声が聞こえてくる。

『霊斗か、仕事だ』

「那月ちゃん、たちの悪い冗談はやめてくれ。かなり本気で焦る」

『誰が那月ちゃんだ。というか、今回は冗談抜きで仕事だ。頼んだぞ真祖サマ?』

「えぇー……そりゃないよ那月ちゃん……」

霊斗が呟くも、すでに通話は切れていた。

「霊斗さん、仕事ですか?」

「……いいや、古城にまかせよう」

「最低のクズ野郎ですね」

平然と仕事をサボろうとする霊斗に、アスタルテが辛辣な言葉を浴びせる。

そんなアスタルテを抱き寄せて霊斗が言う。

「今日はお前たちと一緒にいたいんだ」

すると、アスタルテは顔を真っ赤にしながら言う。

「もう……仕方ない人ですね、 霊斗さんは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美霊も眠り、二人きりのベランダ。

空には満天の星空。

「こんな時くらいは絃神島の気候も良いもんだな」

「基本晴れですからね」

そう言って肩を寄せ合う二人。

その後ろにある

笹には三つの短冊が掛かっている。

 

『家族みんなでいつまでも仲良く暮らせますように』

 

『絃神島と我が家が平和でありますように』

 

『これからも霊斗さんと美霊が健康でいられますように』

 

「綺麗な空だな」

「はい」

「ま、アスタルテのほうが数億倍くらいかわいいけどな」

「んなっ!?何を言ってるんですかもう!」

「ははは、俺の正直な気持ちだよ」

「もう……ありがとうございます」

「どういたしまして」




最後にオリジナルエピソードを入れてみました。
ではまた次回。

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