biohazard cordname”NT” 作:ナッツガン
ウイルスは破滅の始まりか?
それとも…希望の始まりか?
ジルと合流すると、お互いに情報を交換することにした。
結局の所あのビルにバロクの研究所らしきものは無かった。
俺達はレオン達と別行動をとることにした。
小走りで廃墟の町を移動していると、奥から人影が現れる。
それは俺にとっては忘れる事の出来ない人物だ。
「エル?どうしてここに?」
「あの人と一緒に行動していたんですが…」
案の定どこかに行ってしまったんだろう。
あいつは昔から肝心な時にどこかに行っている所がある。
「俺達と一緒に行動するか?どうせ一人でいたらこっちが心配だしな」
「……そうですね。あの人と連絡が付くまで一緒に行動させてもらいます」
エルは俺達に頭を下げると、俺達についてきた。
しかし、俺達について来たところで何か変化があるわけではない。
エルは俺達に付いてきながら質問をしてきた。
「あの人とどこで出会ったんですか?確か代表が連れてきましたよね?今の所私以外に知っている人っているんですか?」
「……俺以外に知っているのは…ジルぐらいだろう」
確かエイダも知っているはずだが、どちらにしても知っているのは俺が信頼している人間だけだ。
「どこで出会ったと言っても、血の繋がった家族だからな。俺があいつとたまたま再開しただけだ」
「……それ以外の家族って」
「……ああ、死んだ。別にいいさ。なんとなくでは理解していたことだしな。それに俺には新しい家族もいるし」
そう言うと俺はジルの方を見つめる、ジルも俺に向かって微笑んでくれた。
「エルは彼と行動してそれなりに経つでしょうけど、今じゃあ結婚までしたんだし、何か困ったころはある?」
「……今の所は無いですね。代表とよく似てますし」
「……やめてくれ。想像しただけで嫌気がたつ」
俺とあいつが似ているだと……冗談だろ!?
「でも確かに少し似ているかもね」
「!?ジルまで!?やめてくれ!似てない!!」
「そんなに興奮するくらい比べられるのが嫌?」
「絶対に嫌だ!」
俺は廃墟の町の戦闘音を聞きながら少し歩く速度を速めて行く。
あいつがここで行動しているのなら、問題が無い。
「あいつの捜査能力に期待するか…。ハオスとやらを見つけたほどだ」
あいつならバロクの居場所を探し出すことが出来るだろう。
「彼もあなたと同じ“NTウイルス”の適合者?」
「ああ、俺と血を分けた兄弟だしな。適合は問題なくできた」
俺達は廃墟の町を進んで行くと、通信機から連絡が来た。
『代表!また一つ奴らが出入りしている場所を見つけました!』
「どこだ!?」
端末にマップが表示されると、そこは俺達のすぐ近くにあった。
「俺達が最も近い、俺達が今すぐ向かう!」
『わかりました!』
通信を切ると俺達は廃墟の町を走って行く。
俺達は走って行くと、奴らの拠点らしき場所まで行った。
ビルの中を入って行くと、俺達はハンドガンの引き金に指を置く。
ロビーはとても広く、明かりこそ消えているが、それでもそれなりに明るかった。
奥からジュアヴォが多数現れる。
ジュアヴォはロビーの柱を盾にすると、こちらに攻撃を仕掛けてきた。
俺達も柱を盾にすると、交戦を始める。
「待ち伏せをされた?」
早すぎる対応だ、ジュアヴォにしてはあまりにも…
どういう事だ…俺の感じではここはかなりの数のジュアヴォが居る。
俺達はジュアヴォを倒していくが、奥から次々現れるので数が減っている気がしない。
「奥から次々現れるわ!全然数が減っている気がしない!」
「この奥に何かがあるようだな!」
バロクの奴がこうまでして隠したいモノがあるようだ。
しかし、バロク本人がここに居る可能性は低いだろう。
「大丈夫か!?」
「クリス?どうしてここに?」
「俺達の隊も来たぞ!」
クリスの隊が俺達が来たドアから現れた。
クリスの隊がジュアヴォと交戦を始めるが、ジュアヴォも負けじまいと数を増やしてくる。
「どれだけいるんだ!?」
俺達が闘っていると、ジュアヴォの一部が奥に入って行く。
「?奥で何かが在ったのか?」
ジュアヴォ達の群れはあっという間に半分がいなくなってしまった。
俺達は残りのジュアヴォを掃討すると、その場で弾の補充を行った。
「なあ、気づいていたか?」
「何がだ?」
「どうかしたの?」
「途中から感づいてはいたんだが、今まで出てきたジュアヴォ達の素顔がみんな一定の顔をしていた」
「?どう言う事だ?」
「もしかしたらこいつら…クローンかもしれん」
仮面をはがした奴の顔を見ても、ほとんどが同じような顔をしていた。
というより、みんな同じ顔、同じ戦い方をしている。
「バロクの戦力の殆どが、クローンで出来たジュアヴォの可能性が高い。
「だとしたら戦力はかなりのものになるわ」
ただの人間のクローンをジュアヴォにしても戦力にはならない。
このクローン、まさか…
「奥に行って見よう、何か分かるかもしれない」
俺達は暗い通路をゆっくり歩いて行く。
周囲に警戒を向けながら、確実に奥に進んでく。
一番奥に進むと、一つのパソコンの電源が付いていた。
「…またあいつか」
パソコンからはジュアヴォに使われた素材の人間が乗っていた。
「これって…」
「こいつがクローンの元だ」
そこに書かれていたのは、シモンズの画像だった。
「彼らはシモンズのクローンって事?」
「正確には若い頃のシモンズだな。おそらくレオン達に殺された後に細胞を入手していたんだろう」
実はあの後シモンズの遺体はなぜかいなくなっていた。
バロクは裏でシモンズを利用して見せたし、シモンズにウイルスの情報を与えたのもバロクだったのだろう。
アメリカ政府はシモンズの遺体の回収を急がせたが、結局はできなかった。
シモンズ家の人間は新たな当主を立てたが、BSAAとアメリカ政府との協力により滅んでしまった。
シモンズ家はすべての責任を取らされてしまった。
「シモンズの遺体の消失が裏でバロクがいたんだろうな。そう考えると…やっぱりと考えてしまうな」
全員で黙ってしまう。
「あのシモンズは最初から“Cウイルス”に感染していたのかしら?」
「……多分、感染していた状態に改造を施したんだろう」
部屋から出て行くと、俺達はビルの中を探索していく。
俺達も捜索していくが、結局見つかる事は無かった。
「バロクはいなかったか…。仕方が無い、別の所を探してみるか」
俺達は廃墟の町をただ進んで行くと、奥でレオン達ともう一度合流した。
「そっちは何かあったか?」
「嫌、こっちは何も無かったよ。そっちはどうだった?」
「こっちの収穫は、ジュアヴォの元がシモンズのクローンだったという事ぐらいか」
そう言って見せると、レオンは含めてその場の殆どの人間が驚いて見せた。
レオン達は中国でシモンズと戦っているのだ、当然の反応だろう。
「まさか、ジュアヴォがシモンズのクローンだったとは…」
「シモンズの執念は中々のものだった。ウイルスに侵されながらも、復讐という執念だけは捨てなかった男だ」
「だからこそ、バロクはシモンズを利用したのかもしれないわね」
「多分他にも理由があるんだろうけどな」
他の理由、それこそがバロクが本当にシモンズの遺体を回収した理由であり、海底油田に居た理由だ。
「バロクがシモンズを利用した別の理由?」
「というよりバロクがシモンズの遺体を回収した理由と言った方がいいかもな。バロクはカーラが開発した改良型のCウイルスに興味が在った。カーラからはくれないだろうから、シモンズを回収してそれを入手したんだろう。海底油田に居たのも改良型を持ったピアーズから奪取しようとしたんだろう」
あの場に居たのもそれで想像がつく。
「俺達から奪取しようか考えたんだ…」
ここに来て失言してしまった。
ジルもエルもやっちゃったという感じの顔をしている。
クリスは俺を見たまま顔を表情を動かさない。
「ベル…お前今、なんて?」
しまった!完全に失言してしまった。
ピアーズが生きている事はクリスに内緒の話だった。
「ピアーズは生きているのか!?どこにいるんだ!どうして黙っていたんだ!」
面倒な事になったな。
「……ピアーズが生きる可能性は低かった。たとえ生きていたとしても、すぐにお前に合わせるわけにはいかなかった」
「なぜだ!!」
「クリス。ピアーズを助ける為に、改良型の“NTウイルス”を投与したの、完全に適合したのならそれはそれで調べなければならなかった」
「それにこれからの世界の為にも“NTウイルス”の改良は絶対だった。それにそもそもアルファーチームを壊滅させたお前にすぐに合わせるわけにもいかなかった」
俺はそのまま歩いて行く、クリスはその場でただ立ち尽くしていた。
俺はゆっくり歩いて行くと、エルは目の前に立っている男に気付いた。
「あ!」
影だけだが分かる、あいつだ。
「私行きますね!」
「ああ、行って来い」
エルは影に向かって走って行く。
人影は俺に向かって何かを投げてくる。
俺はそれを受け取ると、何かを確認した。
「?メモリー?」
影は既にそこにはおらず、俺は端末にそれを差し込んで中身を確認した。
そこに在ったのは、バロクの研究所の入り口の場所だった。
「そこにバロクが?」
「多分な」
全く、どうやってこんな代物を手に入れたんだか。
俺は端末をポーチに入れると、その場を後にした。
小さな家の前に経つと、俺達はドアをゆっくり開けて行く。
家の中は普通の作りになっているが、書斎に入ると本棚にあるたった一つの赤い本を押し込む。
本棚を動き出すと、奥に地下への階段を発見する。
俺達はゆっくり階段を降りて行くと、ちょっとした大きな部屋に出てくる。
奥に在るのはかなりの大きさのドアだった。
「ここの奥にバロクが…」
俺達はドアを開けようとした時、入り口からクレアとレベッカが出てきた。
「良かったみなさんここにいたんですね」
「レベッカ?クレアもどうしたんだ?」
「私達も付いて行かせてください。足手まといにはなりません!」
「……分かった。但し無理はするなよ?」
『はい!』
入って来たか…
しかし、どうやって此処の場所が分かったんだ?
…まあいい、実験にはちょうどいい人間だ。