biohazard cordname”NT”   作:ナッツガン

26 / 45
ジルがいなくなってから、ベルトウェイはどこか物足りない日常を過ごしていた。
そんなベルトウェイを大きく変える人物が現れる。
彼女との出会いはベルトウェイに答えを見つけさせる。


Answer
レベッカ・チェンバース


 ガタンゴトンガタンゴトン

 列車が走る音が周りに響いている。

 俺は列車の窓から見える森はどこか静かで、俺がどうしてここに居るか忘れそうになる。

 

 

 俺は2006年に消息不明になったジルの捜索をしていた。

 捜索をしているのは俺の意思で、BSAAの決定ではない。

 俺は後悔していた、俺がちゃんとしていればジルを失わずにいられたはずだ。

 クリスはジルを失って以降、仲間を失う事を恐れるようになった。

 その姿はどこか俺と似ていた。

 ジルを目の前で失った事が、クリスにとってトラウマになっているのだろう。

 かつて俺が目の前でたくさんの人が人でなくなる瞬間を目撃したように。

 それでも俺はジルが死んだとは思えなかった。

 俺はジルを捜索するために、アメリカの各地区を回っていた。

 もちろん俺が休暇の時にだけなので、かなり時間が掛かる。

 エイダにも協力を頼んでいるが、中々見つかることが出来ない。

 それでも俺はあきらめていなかった。

 そして俺はここで大切な答えを見つける。

 

 

 窓を見るのにも飽きていると、俺は食堂に向かって行くことにした。

 自分の部屋を出ると、左に曲がって進んで行く。

 途中では裕福そうな老夫婦やどこかの社長らしき人間までいる。

 みんな幸せそうな感じがする。

「さすがにここではバイオテロは起きないか」

 念の為に装備一式を持ってきているが、この様子だと杞憂で終わりそうだ。

 通路を歩いていると、左の階段から1人の女性が出てきた。

「あっ!ごめんなさい!」

「こっちこそ」

 そう言うと彼女は俺がいた方に走って行った。

 裕福な人間とは思えない、それに俺はその姿をどこかで見たことがあるような気がする。

 少なくともあった事が在る人間ではないはずだ。

 そんな事を考えていると、真直ぐ食堂に向かっていく。

「不思議な奴だったな」

 夏だからだろうか、来ている服は半そでのシャツに青いショートパンツを着ていた。

 身長は160㎝ぐらいだと断定はできる。

「どこかで見たことがあるんだよな…」

 はて…どこだっただろうか?

 そんな事を考えていると、俺はようやく食堂にたどり着いた。

 適当な席に着くと、オムライスを頼んだ。

 

 昼ごはんを済ませると、俺は真直ぐ自分部屋を目指した。

 するといきなり列車が止まってしまった。

 俺はバランスを崩してしまうと、手すりを掴んでその場に立ち尽くす。

 前と後ろにいる人が転んで、壁に激突している。

 列車がうまい事止まると、俺は廊下を走って行き俺の部屋の前で立っていた車掌らしき人間を捕まえた。

「何が在ったんだ!?」

「分かりません…何が在ったのか?」

 本当に知らない用で、車掌は完全に慌てていた。

 そうしていると、前の方で大きな悲鳴が響いた。

「きゃーーーーーー!!!」

「悲鳴!?前の方から」

 俺は車掌と共に前の方に走って行くと、目の前では恐れていた事態が起きていた。

 1人の女性が別の女性の上に乗っていて、顔を女性の肩にくっつけていた。

 車掌は女性を離そうとしていると、俺はすぐに警告を発した。

「彼女から離れろ!!」

 しかし、時は既に遅く車掌目掛けて女性が噛みついた。

 これは完全にゾンビと同じ傾向だ。

 車掌を助けようとするが、車掌はジタバタしている手が静かに地に落ちていく。

 俺は助けられないと判断すると、俺は走ってその場を去った。

 俺は黙って自分の部屋に入ると、装備一式を着こんで外に飛び出した。

「この列車で何が起きたのか…確認する必要がある」

 前の方に走って行こうとすると、後ろの方からちょっとした爆発音が響いた。

 俺は少し考えてみたが、爆発を確かめる為に後ろに走って行く。

 車両を真直ぐ走って行くと、床が少し焦げている事に気づいた。

「ここで爆発が起きたって事は…この辺りに誰かいるはずだ」

 そんな事を考えていると、上の階でまた爆発が起きた。

 俺は近くの階段から上に上がると、ゾンビが部屋の前でたむろっていた。

 俺はナイフを構えると、ゾンビの群れに走って行く。

 ゾンビの首を切ったり、蹴り飛ばしたりしてゾンビを掃討すると、改めて部屋の中を見た。

 そこに居たのは先程俺とすれ違った女性だった。

「大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます」

 彼女は丁寧に頭を下げると、俺は彼女に自己紹介をした。

「俺はベルトウェイ・シュターナーだ。BSAAの代表兼エージェントをしている」

「私はレベッカ・チェンバースと言います。テラセイブに所属しています」

 あくまでも彼女は落ち着いた感じで話していると、俺はテラセイブに関して思い出していた。

 確かバイオテロや薬剤被害者を救済するNGO団体の名前だったはずだ。

 クレアがこのテラセイブに所属していたはずで、ちょくちょく話を聞いていた。

「レベッカ…やっぱり聞いた事が在るな…」

「私の事を知っているですか?」

 彼女は俺と知り合った記憶が無いらしく、頭を傾げていた。

 必死になって思い出していると、俺は昔BSAA北米支部でクリスとジルからスターズについて聞いた時に聞いた名前だ。

「もしかして、前にスターズに所属していた?」

「はい。たしかに私はスターズのメンバーでしたけど…」

 やはりそうだ、あの時俺は二人から写真を見せてもらった事が在る。

 あの時の写真に写っていた写真に、彼女が映っていた。

 待てよ…そう言う事は…

「レベッカ…君、歳は?」

「?私は今年で29歳ですけど?」

「!!!」

 この外見で!?29歳!?ウソだろ…少なくとも10代後半かと…

 彼女はキョットンとしている。

 幼い顔立ちのせいか、彼女を幼く見えてしまう。

「いや…なんでもない」

「そうですか?」

「それより、先ほどの爆発は?」

「ああ、これです」

 レベッカは火薬瓶らしい物を取り出した。

「火薬瓶だよな?これどうしたんだ?」

「さっきそこで作ったんです」

 俺は素直に関心していた。

 とっさにこんな物を作れる彼女の能力に。

「さすがは、スターズと言った所か…」

「そうですか?」

 彼女とそんな事を話していると、俺の通信機から声が聞こえてくる。

『こちらHQ!代表!応答してください!』

「こちらベルトウェイ!聞こえているぞ!」

『代表!現状況を教えてください!』

 俺はHQに今ここで起きた出来事を簡単に説明した。

「…という所だ。何が起きたか調べてくれるか?」

『了解です!すぐに調べます!後、そちらに部隊を差し向けます!』

「頼む!」

 そう言うと俺は通信機を切って、改めてレベッカの方に向いた。

「俺は列車の先頭に急ぐが、君はどうする?」

「私も行きます」

 そう言うレベッカの表情は完全に覚悟を決めていた。

 俺はそれを理解すると腰に持っていた、ハンドガンを一つレベッカに渡した。

「これを持っていろ。あると無いとでは、大きく違う」

「ありがとうございます。でも、あなたは」

「俺の分はここにあるから安心しろ」

 俺は腰につけているもう一つのハンドガンを見せた。

 レベッカはそれを見ると、安心してハンドガンを受け取った。

「それと俺の事はベルと呼んでくれ」

「分かりました」

 レベッカはハンドガンを腰につけると、俺の後に付いてきた。

 俺は来た道をゆっくり戻ると、階段を静かに降りて行く。

「そう言えばレベッカはどうしてこの列車に?」

「私ですか?私はこの列車の終着点の町で仲間と合流するために乗っていたんです」

 レベッカはこの状況でもかなり落ち着いている。

 さすがはスターズだろう、昔館での事件を潜りぬけているだけはある。

 俺は階段を下り終えると、ゾンビがいないか確認をした、

 するとレベッカは逆に俺に聞いてきた。

「ベルはどうしてこの列車に?」

「…ある人を探しているんだ。休暇ついでにな」

「ある人?」

「ジル・バレンタイン」

「ジル先輩はどこかに行ってしまったんですか?」

「行方が分からないんだ。BSAAの方では死亡としている。それでも俺はジルが死んだとは思えないんだ」

「信じているですか?」

「ああ、俺はジルを信じてる。あいつはどこかで生きている」

「だったら必ず見つかりますよ」

「だったらいいんだけどな」

 俺はゾンビのいない通路で立ち尽くしていた。

 実際ジルが崖から落ちて生きているはずがない。

 それでも俺は信じていたかった。

「絶望的な可能性だけどな…。それでも生きていてほしいと考えている俺が居るんだ」

「ベルは、ジル先輩の事が好きなんですか?」

 俺は答えなかった。

 

 

 答えたら何かが変わってしまう気がした。

 みんなに失礼な気がした。

 あの時死んだ、俺以外のみんなが何処かで俺を恨んでいるような…

 そんなはずはないのは分かってる。

 死んだ人たちは帰っては来ない。

 俺が謝っても帰ってこないし、過去が変わるわけでもない…

 それでも俺は怖かったんだ…嫌だったんだ…

 また失うことが…誰かが消えてしまうことが…守れない事が…

 分かっていたはずだ…

 

 

 俺は黙って列車の前に進むと、ようやく中間地点まで来ていた。

 途中のゾンビはあらかた倒したが、それでもゾンビは増えて行く。

 どこからか、入ってきているのではないかと想像させられる。

「ここら辺で中間地点と言った所か…」

「後半分ですね」

 レベッカは肩で息をしているのを確認した。

 俺はその場に立ち止まり、少し休憩をすることにした。

「ここら辺で休憩をしよう」

「私はまだ行けます!」

「無理をするな、俺も少し疲れたしな」

 そう言うとレベッカは、黙ってその場に座り込んだ。

 俺は窓の外を見つめていると、外は大雨が降り続いていた。

 雷が落ちたりと、外は大忙しだ。

 そんな中、いきなり列車が動き出した。

 俺達は立ち上がると、少し体制を崩した。

「列車が動き出した?」




 BSAA北米支部にて…
 BSAA北米支部では今大忙しで部隊の編成が組まれていた。
 俺はそれを見ながら、自分自身も準備に追われていた。
「全員急げ!」
「何かあったのか?」
「列車が動き出した!後、列車の終着駅のある町でバイオハザードが起きた!」
「なんだって…」
 事態は限りなく悪い方へ進んで行った。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。