biohazard cordname”NT” 作:ナッツガン
匂いは血と油の匂い
周りは死んだ人間が徘徊している
ここはラクーンシティという名の地獄だ
”NT”
俺は起きると体が拘束されている事を確認した。腕、足、首にそれぞれ拘束具が付いており体は手術台のような物に寝そべる形でいた。
捕まってから何日が経っただろうか?半年は過ぎたのかさえ俺には分からなかった。
捕まったのは3月の最初のことだった。
俺は日本に住んでいたがショッピングモールで買い物をしていて、帰り道に急に意識が遠くなった。
起きると俺はすでに四角い大きな空間にいて、俺以外にも人がいた。
数は俺を含めて10人といったところだろう。
そんな事を考えていると1人の男が話かけてきた。
男は英語で話していて俺にはよくわからなかった。
すると男は察したように日本語で話し始めた。
「キミハモシカシテニホンジンカイ」
俺はその片言の日本語を聞いて安心した。
「はい」
「キミハドウシテココニ?」
「買い物の帰り道の途中で気絶して、気付いたらここに…」
男は色々な事を教えてくれる。
名前はジョージと言う事、将来は日本の大学に行きたいとも教えてくれた。
俺の方はただ聞くだけで、それでも楽しい時間だ。
するとジョージが俺に聞いてきた。
「キミハナンサイ?」
「俺は21歳、短大を卒業したばかりで…」
「テッコトハコトシデ22サイ?」
「うん」
そう言うとジョージはまたしても聞いてきた。
日本の事、自分が住んでいる場所など、本当に詳しく聞いてきた。
俺はすべての質問に答えるとジョージは俺に向かって言った。
「キミハヤケニフトッテイルネ」
凄く失礼な事を言われた気がする。
たしかに太っている自覚はあるがこんなとこでいわなくてもいい気がする。
「ゴメン!ソンナニキズツクトハ!」
ジョージはそのまま謝ってくれた。そ
して少しの間話していると部屋に居た1人の女性が苦しそうにもがいていた。
「ゴメン!チョットミテクル!」
そう言うとジョージは俺の傍から離れて行った。
少しすると女性は静かになりそこに倒れ込んだ。
ジョージ達は心配そうな顔をしてみていたが、その女性は突然ジョージの肩を噛み始めた。
「ギャ―――!!」
俺は急いでジョージの元まで駆けつけ女性をジョージから離す。
「大丈夫!?」
「ダイジョウブ…」
しかし女性はさらに他の女性も攻撃し始めた。
俺が他の人を助けに行こうとしたとたん後ろから大きな悲鳴が聞こえた。
「ギャ――――――!!」
俺は後ろを向くとそこには先ほど助けたジョージが倒れていた。
そこに1人の男がジョージを襲っていた。
すると口に大量の血を付けた男が俺にも襲いかかってきた。
「クソ!」
俺はそこまで力があるわけではなく男の恐ろしい力に負けている。
すると男はやはり俺の肩に噛みついてきた。
「うわ―――!」
俺は誰かに助けを求めようと周りを見ると周りはすでに地獄と化していた。
すると死んだはずのジョージが起き上がり俺の方に向かってくる。
「ジョージ!助けてくれ!」
そう叫んだがジョージは思いもよらない行動に出る。
ジョージは俺の足に噛みついてきたのだ。
「ジョージ!やめてくれ!」
俺は叫ぶが、ジョージはそんな俺の声など聴いてないかのように噛み続けた。
大丈夫な左足でジョージを蹴り飛ばす。
俺の力では、到底ふきとばないであろうはずがジョージは遠くに吹き飛んだ。
俺はそのまま肩に噛みついている男を剥いで蹴り飛ばし、そこから離れる。
すると俺は急に吐き気に襲われた。
「おぇー」
それは俺から見ても異常な量を俺は吐いた。
すると今度は体が熱くなる感覚に襲われた。
「熱い、熱い、熱い!」
俺はたまらず服を脱いだ、すると俺の太っていた腹はそこには無く腹は俺が直接見たこともなったこともない腹筋があった。
腕も足も筋肉でできておりちょっとしたボディービルダーの様だ。
それ以上に異常だったのが、先ほど噛まれた傷口がなくなっていたのだ。
血も出ていないのはどう考えても異常である。
「どういうことだ…」
俺は肩で息をしながら呟いた。
肩で息をしていたのにすでに息苦しさはなかった。
吐き気もいつの間にかなくなっており俺は、立ち上がっていた。
すると吹き飛ばした人間を含めてこの部屋に居る全ての人間が俺の方を向いていた。
みんな様子が明らかにおかしく俺の方に向かって歩き始めた。
俺の頭は意外と冷静に考えられた。
(明らかにおかしい、こうなったら殺すしかない!)
俺は殺すという単語に対して何も違和感を感じなかった。
思えばこの時すでに俺の体の変革はすでに終わっていたのかもしれない。
すると、男の1人が俺の方に向かって噛みついてきた。
「死んでも後悔するなよ!」
俺は男の頭を掴むとそのまま捻って回した。
すると簡単に首は反対側に回った、男は動かなくなった。
俺はそのまま他の人を殴り飛ばした。
(今のは、骨が折れる感触がした!)
俺は立てないと思った、しかしその人は平然と立ち上がり俺の方に向かって動き始める、俺は唖然とした。
(今の喰らって起き上がれる!?しかも平然と!?)
俺は殺すしかないと覚悟を決め、そのままその人の首を捻った。
その首は男同様反対側まで回る。
すると俺は後ろから人の気配に気づいた。
「!!!」
振り向こうとするが遅く俺は腕に噛みつかれた。
俺はその腕を上げてその人の顔を打ち上げた。
すると男の顔はそのまま陥没すると動かなくなった。
気づくと俺の腕の傷も治っていた。
俺はそのまま近くにいた女性3人組を肘鉄で倒すとさらに奥にいた女性2人男1人を倒した。
俺はそのままジョージの方を向いた。
ジョージは俺の方に向かって歩いている。
俺はジョージの話を思い出していた。
「ごめん!」
俺はジョージを殺した。
倒し終えると部屋に10人組みの男たちが入ってきて、俺に近づいてきた。
男たちは英語で何かを叫ぶと俺の方に銃を向けきた。
(おそらくは動くなと言いたいんだな)
俺はやはり冷静に物事を判断出来た。
この男たちを相手にしてここを切り抜けられる自信はある。
しかし、ここを出てもどこかもわからないところで生きていけるかを考えたら俺はこのまま捕まったほうがいいと気づいた。
俺は頭に手を乗せるとおとなしく捕まった。
摑まると色々な実験をしてきた。
しかしすぐに男たちは俺を別の施設に移動させた。
移動した先では英語、戦闘、銃火器の扱い方などを教えてくれた。
そして今に至る。
すると部屋にここの研究所長が入ってきた、研究所長は70代の爺だ。
すると所長は俺の傍によると何を考えているのかわからない表情で言った。
「拘束具を外してもいいぞ」
そう言われると少し考えたが所長は俺がこれを外すまで、ここにいそうだったので俺は拘束具を、力で無理やり外した。
「どうして俺がこれを外せると分かった?」
「“NTウイルス”感染者ならばこの程度のもの簡単に壊せると考えておったんじゃよ」
俺は先ほどの会話の中から一つの単語を聞き返した。
「“NTウイルス”?」
「ああ」
「当時あの研究所に運ばれた10人の男女の1人に“Tウイルス”を投与しその効果の実験を行った」
「それであんな事が?」
「ああ」
「その結果は?」
「90%成功した、しかし一つ予想外の事が起きた」
「俺だけが他の被験者と違う反応をした」
所長は黙って頷くとそのまま話を続けた。
「それでアンブレラはお前さんの体を調べた結果驚きの事実が分かった」
俺は黙って話の内容を聞いた。別に驚きはしなかった。
「お前さんの体には“Tウイルス”を発見できなかった」
「それどころかお前さんの体に新たなウイルスを発見した」
「それが“NTウイルス”…」
所長は黙って頷き話を続けた。
「“NTウイルス”効果は対外から来た細菌などを食ってくれる、それ以外にも体が傷を負ったりするとたちまち直してくれる」
「最強なウイルスってわけだ」
「そう、これがだれでも感染できるならば…」
「どういうことだ?」
「このウイルスを他の者に投与したところウイルスはその人の体を蝕み殺した」
そう言うと所長はその被験者の写真を見せれくれた。
その写真に写った男は体の至ところに大きな黒い斑点のようなものがあった。
「これによりこのウイルスはお前さんにしか感染しないことが分かった」
「なるほどだから俺の体をここに移し戦闘能力や日常生活に必要な事を教えた」
「そう言うことだ」
そう言うと所長は黙って部屋を出た。俺も後をついていく。俺は所長に一つ気になった事を聞いた。
「どうして俺を解放しようとした?」
そう言うと所長は歩きながら説明した。
「この研究所はラクーンシティの地下に有り本来ならば外部からはアクセスできない仕組みになっている」
「だが少し前にラクーンシティに“Tウイルス”が漏れた、いわゆるバイオハザードというわけだ」
「町はもうすでにゾンビの群れで犇めき合っている」
すると所長は一つの部屋の前で止まった。
「もうこの研究所の意味もない、よってお前さんを捕まえておくわけにもいかん」
所長は部屋のドアを開けた、すると部屋の中には銃火器や服などがそろっていた。
「この中から好きな物を選んでさっさとここを出ろ」
そう言うと所長は俺に財布を渡した。
「この中に今のお前さんの運転免許証と銀行のカード、お金が入っている」
そう聞かれると俺は財布の中身を確認した。運転免許証には「ベルトウェイ・シュターナー」と書かれていた。
「それが今のお前さんの名前だ」
そう聞くと俺は部屋に入り服を着替えた。防弾チョッキに拳銃、アサルトライフル、弾、携帯電話を持った、これも俺の名前で登録されている。
「気の利いた贈り物だな」
俺はさらにガスマスクをつけると俺はそのまま研究所を出た。
9月28日朝 ベルトウェイ研究所を脱出