コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 すみません。今週色々忙しくて投稿が遅れました。



第75話 「エリア11にてバーガー屋と独房の為に殿下が脱走したようです」

 オデュッセウス・ウ・ブリタニアは窓際の席に座り、痛みを覚える頭を軽く抑える。

 最近厄介事が重なって凄く疲れた…。ギアスで回復しようとレイラの監視の目もきつくなった気がするし(気のせいではなく実際強化しています)。

 

 前にロイドが研究棟を使っても良いかと聞かれたことがあったので、高火力のナイトメアの構想を引き換えに許可したけどまさかすでに作っていたとは…。まぁ、作っていたぐらいなら説教+正座で別段頭を痛めなかったのけれど、まさか伯父上様に説明した上に欲しがられるとかどうなのよ?嫌な予感しかしないんですけど…。

 あと、高火力のナイトメアって言ったのに試作品が高火力のナイトギガフォートレスになっている件に付いて。

 私が頼んでアレが出来たって聞いたら誰だって「何処かを攻めるんですか?」って聞いて来るよ。アキトから聞いたレイラの質問攻めも凄まじかったし。なんで拠点でも制圧できそうな物騒な品物を作っちゃうかな…。

 

 それと前々から体験して分かっていたけれど悪いことは続くもの。

 伯父上からギアス関連の案件でギアス関係者が必要なのでマオを貸してくれって要請が来ちゃいました。時期的に考えてギアス関連というのは十中八九ルルーシュの事だろう。そして配属先は機密情報局…アッシュフォード学園での監視役か…。

 こちらは吉とみるべきか凶とみるべきか。

 原作ではヴィレッタ・ヌゥが担当する筈だったけど私の介入(故意・無意識両方で)でギアスにかけられたが関係せず今やキャスタールの騎士。ゆえに新たな誰かが着任しなければならない。それが自分が関与できるなら対策できると思えば良いのか。

 クララがテロに関与したことで饗団で謹慎中。そこで【双貌のオズ】でルルーシュの()として向かう筈だったクララが動けず、ロロが()として向かう事になった。

 今まで私が関与した結果、変わった未来はあれど原作知識を持たぬ身で未来を変えるとはクララは凄いな…。

 本来なら妹として先にアッシュフォード学園入りしたクララは黒の騎士団残党を名乗るテロリストの襲撃に紛れてオルドリンの暗殺を目論んだが、オルフェウスにより殺されてしまう。

 クララは健在、オルフェウスはアフリカ大陸辺りで目撃情報を掴んでから行方不明。原作外に動き出しているが今はルルーシュの方を先決にするべきか。

 ロロには私との関係は何があっても秘密にすることと、なるべくルルーシュの手助けをしてやって欲しい事など言っておいた。その他は兄弟として穏やかな日常を過ごしてくれということぐらいか。

 

 あー…マオはどうしよう。

 私のギアスとトトのギアスで…いや、私のギアスと飴と少々の未来知識で何とかなるか。一点においては純粋過ぎるから上手く行くだろう。

 ここでV.V.とオデュッセウスの間で勘違いが発生しているのだが、それはまた先の話で。

 

 「えーと、十五番のお客様」

 「十五番!?あぁ、私です」

 「お待たせいたしました」

 

 ため息を吐き出しながら外を眺めていると私が持っている札の番号を店員が呼んだ。

 気付いて手を軽く振りながらここですとアピールすると持っている物を落とさないようにして近づき、テーブルの上におぼんを置いた。

 

 「さて、とりあえず頂きますか」

 

 悩みを忘れて今は目の前の物に集中する。

 ブリタニアに本店を構えるバーガーショップ。そのエリア11トウキョウ支店にオデュッセウスは居る。勿論公務として来ているがいつも通り抜け出して来た。クラウス大佐がいつまで誤魔化してくれるかな…。

 

 おぼんの上に乗ったバニラ味のアイスジュースを少し口に含み、紙で包まれたバーガーを取り出す。

 エリア11限定商品【スキヤキバーガー】。

 今日はこれを食べる為にひとり抜けて来たのだ。

 

 周りの目など気にせず大口を開けてがぶりとかぶりつく。

 こんなところギネヴィアに見られたら「お行儀が悪いですよ兄上」とかなんとか言われるだろうな。

 口の中に広がるすき焼き風のたれを味わいながらゆっくりと咀嚼してごくりと飲み込む。

 あぁ…幸せだなぁ…。

 そう実感しながらアイスジュースを飲む。

 

 

 窓越しに赤毛の少女と緑色の長髪の少女と目が合うまでは…。

 

 

 中身を吸い出すために使っていたストローより空気が逆流して紙コップ内でゴボッと音を立て、ストローを口から離したオデュッセウスは咽る。

 緑色の長髪の少女―――C.C.はほとんど初対面の為(学園祭で顔を合わせたことはある)に首を傾げるが、こっちを変装していても認識できる赤毛の少女―――紅月 カレンは慌てて逃げ出すどころか呆れ顔を向けて来た。

 

 

 

 食べかけのスキヤキバーガーを紙に包み直し、ストローを使わずアイスジュースを飲み干したオデュッセウスは大急ぎで表へと駆け出し、カレンとC.C.の両名をピザ屋へと誘い、相席をしている。

 

 「久しぶりだね。元気してたかい?」

 「ええ、おかげさまで。毎夜毎夜熱狂的なブリキ人形(ブリタニア軍)に追いかけられて住まいを変え続けるのはすっごいストレスが溜まっているわ」

 「わ、私は追ってないよ」

 「でしょうね。じゃなければここであんたを捕まえてたわよ。神根島で投げ飛ばされた事忘れてないんだから」

 「そんな事よりピザはまだか?」

 「そんな事って何よ!?投げ飛ばされた上に乙女のは…」

 「は?」

 「何でもない!!」

 

 あったなぁ、そんな事。

 女性の裸が見えて云々の前にあの時はスザク君が全裸の女性を押し倒しているようにしか見えなかったからそっちの印象が強すぎたよ。

 

 「まぁまぁ、ピザは私が全部おごるから」

 「本当だな」

 「止めといた方が良いわよ。毎日ピザが食べれないって今特にピザに執着し過ぎているから…」

 「問題ないよ。懐は温かいから」

 「くっ…こっちは資金かつかつだってのに」

 

 「そうか。なら―――照り焼きチキンピザにシーフードミックス、濃厚チーズ四種のミックスピザ、イタリアンと和風のハーフ&ハーフ、チーズノーマルは二枚にツナ、明太子、マッシュルーム、ミートのハーフ4…あとは…」

 「なんの呪文よそれ!?」

 「というか食べきれるのかそれ?」

 「食べきれなければ持ち帰る」

 「誰が持つのよ。誰が!」

 「何の為に毎日筋トレしているんだ?」

 「少なくともピザを持ち運びする為じゃないわよ」

 「部屋にダンベル置いているもんね」

 「あんたはなんで知っているのよ!」

 

 ピクチャードラマで筋トレグッズや脱ぎ散らかした衣類で散らかったカレンとC.C.の汚部屋を見た事あるからです!

 ――なんて言えないよな…。

 

 誤魔化すように後頭部を掻いているとC.C.に押されるままカレンは渋々レジへ向かって歩き出した。

 

 カレンが居なくなったところで興味無さ気だったC.C.が瞳を覗き込むような視線を向けて来た。

 

 「で、お前は何の用なんだ?」 

 「べつに用ってほどじゃないし、会ったのは偶然さ。それに君はピザ好きだろう?」

 「ほぅ、ピザが好きな事よく知っていたな」

 「……学園祭の時にピザの事聞いてこなかったっけ?」

 「―――?」

 「いや、覚えてないならいいや」

 

 あの接触で伯父上に―――まぁ、覚えてないなら言っても仕方ないし、アレは根本的に情報伝達を怠った私に非があったわけだしね。

 苦笑いを浮かべたがすぐに真剣な眼差しで見つめ返す。

 

 「用意していた用件なんて物はないけど忠告はしておこう。

  君たちはルルーシュの奪還を目論んでいるのだろうけど今は近づかない方が良い。監視網の構築が未完成な為に理由を知らされてないがかなりの部隊が警備で配備されている」

 「連携は取れてないが数が多いって事か」

 「理由を知らされてない為に迎撃を行うがルルーシュ自体に危険が及ぶ」

 「そこまで知り得て言っているならお前―――V.V.の仲間か」

 「伯父上とは仲良くしているよ。けれど貴方の居場所を伝える気はないよ。あ!ピザを奢ってあげたんだからマリアンヌ様には内緒ね」

 「まったくどこまで知っているんだか…」

 「注文してきたわよってあんたらいつの間に仲良くなったのよ」

 

 あの長々とした呪文…もとい注文を終えたカレンがきょとんとした表情で戻って来た。

 

 「あぁ、そうだ。伝える事があるんだ」

 「伝える事?」

 「藤堂さん達は元気だよ」

 「―――ッ!?」

 「それと私は君たちに手出しする気ないから。今回もたまたまだし…あ!」

 「偶然だって言うの?」

 「……スキヤキバーガー…冷めてる」

 「聞いてる!?」

 「え、あ、うん…なんだっけ?」 

 「あんた本当に大丈夫?」

 

 オデュッセウスがどういう人物か理解しているカレンではあるが、心のどこかで捕縛してやろうかとも思っていたが毒気が抜かれてもうどうでも良くなった。

 

 「ねぇ、一度聞きたかったんだけど」

 「うん?」

 「あんたは何がしたいの?」

 「―――平穏な暮らし…のんびりとした生活(ライフ)…かな」

 「…日本とかエリアに対して何かしようと思わないの?」

 「色々思うところはある。が、君達の引き連れた奇跡がすべての突破口…」

 「それどういう意味…」

 「私の言える事はそこまでさ。その後は私も動ける」

 「ちょっとそれ…」

 「では会計は済ませておくから」

 

 背後から待ったをかけるカレンの静止を無視して勘定を済ませてさっさと店を出る。

 冷めたスキヤキバーガーを齧りながら安堵の息を漏らす。

 何でこんな時にC.C.に出会うかな。もしもギアス饗団関係者に見られたら…あー怖い怖い…。

 と、エリア11に来た目的はバーガーだけじゃないんだ。

 今日中に…明日から警備がさらにきつくなるからその前に行っておかないとね。

 

 行先はトウキョウの黒の騎士団メンバーを収監する特別刑務所。

 入り口では変装であるニット帽とサングラスを外して顔パスで通過。

 手荷物検査もされず独房へ。普通は皇族でも一応するんだけどここの兵士・関係者は私が選りすぐった人物たちで私には甘い…というかセカンドブリタニア人制度を活用した人など恩義を感じている人が多い。

 

 独房内から殺気を放つ黒の騎士団の視線を浴びつつ、一番奥の最重要人物の前まで歩み寄り、地べただろうと関係なく腰を下ろした。

 

 「お久しぶりですね。藤堂さん」

 「…あぁ」

 「一献どうですか?道中買って来たんですよ」

 「………」

 「警戒しなくても毒なんて入ってませんよ」

 「だろうな。殺すのであればとっくに殺せていただろうしな」

 

 独房の真ん中で正座のまま微動だにしなかった藤堂 鏡志郎はゆっくりと瞼を上げて鋭い眼光を向ける。立ち上がり一歩、一歩踏みしめて歩み寄って来る度に衰えもない重圧感を放ってくる。

 

 「それで何用だ」

 「皆して私は用事がないと来ないような人に見えるのかな」

 「いや、考え無しのような印象が強いな」

 「………いや、うん…間違ってないです、はい」

 

 牢の鉄格子越しに対面して座った藤堂に持ち込んだ盃を渡し、日本酒を注ぐ。

 まずは一口と同タイミングで一気に飲み干して盃を床に置く。

 

 「本当はね姫騎士に会いに来たんだけど…さっきカレンに会ってね」

 「紅月君にか!?」

 「元気そうだったよ。逃亡生活は大変だってボヤいてたけどね」

 

 オデュッセウスの言葉に反応した別牢の扇などはカレンの名に反応し、あからさまに安堵の表情を漏らす。

 私が来たことでずっと忌々しそうに睨んでいる千葉と玉城の表情は変わらないが…。

 

 「私は護衛を伴っていなかったので捕まえる事は出来なかったがね」

 「その口ぶりは捕まえる気がなかったように聞こえるが?」

 「さぁ、想像にお任せしますよ」

 「――そうか」

 

 盃に二杯目を注ぎ、口にする。

 飲み干して息をついていると足音が近づいて来る。

 そろそろかなと最後にもう一杯注いで酒瓶に蓋をする。

 

 「さて、様子も見られたし行くかな」

 「次は処刑の時かな」

 「されるかどうかは分からないけどね」

 「――どういう意味だ?」

 「……君達には奇跡がいるからさ」

 『おにぃ……殿下』

 「本当に久しぶりだ。姫」

 

 いつものにこやかな微笑みではなく、とても…とても穏やかな笑みを向けるオデュッセウスの前には試作強化歩兵スーツで全身を覆った女性―――姫騎士と呼ばれるここ監視員の長はマオとマリエル・ラビエを連れて立っていた。

 騎士団員が普段一言も喋らない姫騎士が言葉を発したことに驚いていたが気にせず、立ち上がり埃が付いたズボンを叩きながらゆっくりと歩み寄る。

 

 「姫もマオもエルも元気だったかい?」

 「はい。治安は少し不安になりましたけど父とのんびりできて良いですよ」

 「それは羨ましい」

 「えー…ボクは少し暴れたいのに…今度どこかの戦場に連れて行ってくれない?」

 「私は争いごとはあまり好きではないんだけど」

 「騎士団を三つも所有している人が言う事それ」

 

 乾いた笑みを浮かべながら笑っているとマリエルが一枚の書類を渡してくる。

 書類の提出者はカラレス総督。

 内容は黒の騎士団の処刑許可。

 詳しい内容を見る前に返して短くため息を吐く。

 

 「却下。これは受領しない」

 「宜しいんですか?捕まえた黒の騎士団員を一人も処刑しないことから一部の者は騎士団を守っているなんて戯言を言っている貴族も居るらしいですよ」

 「言わせたい相手には言わせておけばいいさ。それに君も処刑なんて好きではないだろう」

 「処刑というより人の死に関わるのは嫌ですね」

 

 不穏分子を片付けたいカラレスの気持ちはわかる。

 でも受領することは出来ない。今はまだ(・・・・・)ね。

 するならこれから半年ほど先、カレン達が行動を起こすまでは許可できない。

 

 「では、また会いましょう。次は多分二、三か月後でしょうかね」

 

 そう告げて手を振ってからその場を離れる。

 姫騎士はオデュッセウスの隣に、マリエルとマオは後ろを追従する。

 

 「ねぇ、ボクも戦場に連れてってよ」

 「駄目だって。その代わり最新鋭の機体でも用意するからさ」

 「ランスロットとか言う奴?」

 「さすがにそれは…ようやく量産化型が正式に決まったヴィンセント。それの改良機でどうかな?」

 「あはっ、それは良い暇つぶしになりそう」

 

 本当に嬉しそうに笑うマオよりマリエルは少し距離を取る。

 多分碌でもないことが起きるだろうから…。

 

 「姫――あと一年ほど我慢してくれ。そしたら…そしたらやっと自由だからな」

 『――はい…待っています。でも無茶だけはしないで下さい―――お兄様』


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