コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 まことにありがとう御座いました。ランキングで16位になっていた時はガッツポーズをして喜び、時間が経ってみて見ると3位に。そこからは数十分おきに小説情報やランキングを行き来していたら最終的に2位まで上がりました。その日は興奮しすぎて気分がハイッって奴になってしまいました。
 本当にありがとう御座いました。そして誤字報告してくださった皆々様にはお手数をお掛けして申し訳ありませんでした。大変助かりました。まさかアレほど誤字をしていたとは気付きませんでした。
 


第04話 「魔神(仮)が生まれた日。そして私の気まずい日」

 また一年が経った…

 

 この一年の前半は思い出したくもないほどの地獄の日々だった。午前は学校で午後は特別学習なのは変わらなかったが、その後の予定がガラリと変わった。「経験をつまなくちゃね♪」との一言でデータを見に来ていた私は幾度となくガニメデに乗せられ、マリアンヌ様かビスマルクと模擬戦ばかりやらされた。それも二人とも口調や表情は優しいのだが、模擬戦では絶対手を抜かない。その上こちらが抜いたら回数が三倍ぐらい増えるのだ。

 

 肉体はボロボロになり精神も追い詰められた。これは遊んでとせがんで来る弟&妹達ではない。あの父上様だ。歳が経つにつれて起きてる時間が延びたからなのか、書類系の仕事の一部を「あやつにやらせておけ」とガニメデの資料を作れと言った時と同じ風に言ったらしいのだ。…この前食事をご一緒した時に一言だけ「知識だけでは役に立たん」と経験を積め的な事を言っていたことから原因はマリアンヌ様だろうと予想している。

 

 しかしこの六ヶ月ほどそれらが少なくなった。最初の内は何故だとか理由は何なのだろうかとまったく詮索しなかった。ただただ久しぶりの自由な時間に喜び弟達や妹と戯れた。チェスの回数も減っていた事が原因か知らない内にシュナイゼルが異様に強くなっている事を実感した。勝率7割を超えていた筈なのにいつの間にか5割にまで減り、兄としてこれ以上下がらないように熱心に打ち込んだ。おかげで何とか7割…いや、6割まで戻すことが出来た。

 

 ガニメデの操縦訓練が激減してから、まったくマリアンヌ様に出会わない事の理由を知ったのが2ヶ月経ってからだ。最初は気にしてなかったものの次第に気になり始め、お付きの者に聞いて見るとお腹の中に赤ちゃんが出来て安静にしているとの事。それを聞いてから私は理解した。そろそろルルーシュが産まれる年じゃないかと。

 

 自分のうっかりさに呆れたが、それよりもまた新たな弟が出来た喜びのほうが大きかった。様子を見に行ったらよほど退屈していたのか数時間に渡って相手をさせられた。話を聞くとジッとできないマリアンヌ様の性格を理解している父上様が、監視をつけたらしい。それもナイトオブラウンズ三人ずつ交代で…。帝国最強の騎士が三人がかりじゃなきゃ止められないのか。

 

 そして今、私はSP達は入り口にて待機させ、皇族御用達の病院の待合室で出産が終わるのを待っていた。ドラマで落ち着きが無くうろうろしたり、祈るような仕草をして待っている男性を描かれるがそんな事はしなかった。椅子に腰掛けて背筋を伸ばしてただ待ち続ける。与えられていた仕事は予定をずらしたから何時間だって予定的には待っていられる。

 

 だが精神的に早く済んでほしい…。

 

 べつに待つのがしんどくなったとか、待つだけでは暇だからとかそんな理由ではない。横に居るのだ…。

 

 大股を開いてドカッと隣の椅子に腰を降ろし、腕を組んで目を瞑っている父上様が。

 

 威圧感が半端ないんですけど。何で父上様がここにいるのですか!?マリアンヌ様の様子を見に来られたのですよね。出来れば今すぐ帰りたい。だが、何の理由も無しに帰るのは不敬。されどこの場の居心地悪さに耐えられそうに無い。助けてシュナイゼル!!

 

 心の中で頼りになるであろう弟の名を叫ぼうが運よく来るはずも無く、ただ時間が過ぎるのを待つ。その時間も一分一秒がとても長く感じて気が滅入って行く。せめて何か会話でも出来たら幾分か気が紛れるのであろうが…。

 

 「父上」

 「ん」

 「ガニメデのマニュアルは如何だったでしょうか」 

 「悪くなかった」

 「そうですか」

 

 会話終了…。

 

 これほどまで共通の話題を持たない事に悔やんだ日は無かった。ここで『ギアス』の話でもすれば長々と会話できるだろう。代わりに自分の身に良くない事が起こるのは確定事項だが。

 

 マリアンヌ様が分娩室に入られた話はシュナイゼルやコーネリアにも伝わっているはずなのでそろそろ来てもおかしくない。特にコーネリアは皇族の中でもマリアンヌを敬愛している数少ない者だから一番来る可能性が高い。逆に来ないのはギネヴィアとクロヴィスだ。ギネヴィアは兎も角クロヴィスの母親があまりマリアンヌ様の事を快く思ってない為、息子であるクロヴィスを行かせることはないと予想できる。それでも形だけと言う事で後々見舞いには来るのだろうと思うがね。

 

 会話が終わって数時間にも思える数分を耐えていたら待合室の扉が開かれた。誰かが来たのか、それとも産まれたか、と思い期待の眼差しを向けると、そこに立っていたのは来る筈がないと思い込んでいたギネヴィアだった。

 

 父上様はチラリと見て誰か確認しただけで視線を逸らしたが、私は座るまで彼女を目で追い続けた。

 白く透き通るような肌。

 ふわっとして肩に掛かっている灰色の髪。

 紫色をメインとした足先まで隠すドレス。

 可愛い系ではなく綺麗系の整った顔立ち。

 十三歳には見えないほど主張をしている胸。

 美しい外見も兄弟・姉妹想いの性格ともに自慢の妹である。ただ彼女が皇族として権力を無駄に振るう事を好んでいる一点に関しては気に入らないが、人それぞれだと思い何も言わなかった。

 

 ギネヴィアは冷たい視線を私に向けて父上様に挨拶をして私の隣に腰を降ろした。居るだけで威圧感を放つ父上様が右で、話し難い雰囲気を纏っているギネヴィアが左に座って余計に動きにくくなった。

 

 表情は穏かな笑みを浮かべ、心は無心を目指してただ待ち続ける。

 

 静まり返っていた待合室の扉を開いたのは大勢の医者や看護婦を引き連れた医院長だった。皇帝陛下を前にして緊張したのか顔色があまり宜しくない。

 

 「へ、陛下。元気な男の子です」

 「分かった。案内せよ」

 「は、ハッ!」

 

 医院長の後に続いて部屋から出て行く父上様を確認してから私も向かおうと立ち上がる。

 

 「兄上」

 

 不意に呼ばれて何も考えずに振り向いた私に、十三歳とは思えない冷たい視線が突き刺さる。私、なにか嫌われるような事しましたか?不安に駆られる私の内心を余所に立ち上がったギネヴィアは視線を向けたまま私の目の前で立ち止まる。

 

 「なんだいギネヴィア」

 「兄上はマリアンヌ様の事をどう思っていますか?」

 「どうって――」

 

 普通に答えようとした私だったが口を噤んだ。彼女が、ギネヴィアが訊いている事はありきたりの言葉ではない。ギネヴィアは大多数の皇族・貴族と同じく、庶民出のマリアンヌが貴族達の世界に関わるどころか皇妃になった事実を毛嫌いしている。

 『兄上はマリアンヌ様の事をどう思っていますか?』

 つまりは…

 私、オデュッセウス・ウ・ブリタニアはマリアンヌ側に付くか、ギネヴィア側に付くかの選択を促されている。

 

 ギネヴィア側に付けば大多数の貴族や皇族が味方となり生きていくのに不便はない。マリアンヌ様側だとその貴族や皇族と敵対関係になってしまう可能性にギネヴィアに嫌われるデメリットがある。メリットとしては軍部を味方につけれる事だ。軍属の人間は帝国に、皇族に、皇帝陛下に仕えている。優雅さや策略の世界ではなく、力が主の世界ではマリアンヌを騎士として崇拝している者が存在する。

 

 私はのんびりライフの為に五つの目標を立てた。一番の大前提が私の生存。これは絶対に譲れない項目である。二つ目は皇族・貴族の権利を奪われない為にルルーシュを皇帝にしない事。領地でのんびりしたいしね。三十台後半までには世界を平和にして出来れば妻が出来ているといいなぁ。その五つの中には弟妹達と仲良く過ごせたらと言うのも含んでいる。

 

 そんな目標を立てたからにはギネヴィアとの仲を悪くしたくない。けれどもマリアンヌ様と険悪な仲になるのも嫌だった。

 

 「そうだね――憧れかな」

 「…そう…なのですね」

 「ただ騎士としては、と、いうのが大きいが」

 「騎士としては?」

 「マリアンヌ様の騎士としての力は目を見張るものがある。それは君にも理解できるだろう」

 

 コクンと頷いたギネヴィアに強い安堵感を覚える。彼女は原作で戦場の最前線を駆けるコーネリアと違って戦場に出ることは無く、知略・智謀を行使するタイプである。ゆえに相手の話を端から聞かないのではなく、聞いてから判断する頭脳を持っている。ただ、まだ幼い為に前者もありえるかなと不安もあって、この反応は本当に安心するものであった。

 

 笑みを浮かべたまま片膝を着いて視線を合わせる。

 

 「でも貴族としての実感と言うか役回りをこなしてはいない。そこは問題かな」

 

 悪口を言っていると思うと罪悪感が襲ってくる。これは本人にも何度か言っている言葉であるのでそこまで重くはないが。

 

 「それは本心ですか?」

 「怖い顔をしないでくれよ。悲しいじゃないか」

 

 眉をハの字に曲げて頬をふにふにと揉む。予想外の行動だったらしく、目を見開いててしてしと腕を叩いて抵抗するが手は止めない。

 

 「にゃ、にゃにをひゅるのひぇすか!?(な、なにをするのですか!?)」

 「君は可愛いんだから笑顔の方が似合うと思うんだ」

 「―っ。し、失礼します!!」

 

 顔を真っ赤にしたギネヴィアが分娩室ではなく、出入り口の方に駆けて行くのを確認した私は、ソファに腰を降ろして全身の力を抜いた。疲れた。あの地獄の訓練以上に疲れることがあったなんて。今回は肉体的にではなく精神的にだったが。

 

 このあと様子を見に行った病室ではマリアンヌ様はとても元気そうで安心し、そんなマリアンヌ様を優しい眼差しで見つめる父上様というレアな表情が見れて『そんな顔もするんだ』と安心した。そして何より産まれたばかりのルルーシュが分かってか分からずか私の指を小さく、細く、儚い手でぎゅっと握ってきた事が嬉しく、先の疲れがいっぺんに吹き飛んだ。

 

 やっぱり弟や妹って良いですよね。




 安定して投稿出来ているので投稿期間を二週間に一回ではなく一週間に変更します。
 作者知識にゲームも追加します。

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