リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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 書いてやるッ……!『ボーイズラブ』ってやつをーーッ!!



 と意気込んで書いてみたのでおっさん同士のイチャつき上等、というドカスの皆様のみスクロールしてください。






cicatrice

 

 カスはいつでも唐突だ。

 

「俺、アンタの傷跡好きだぜぇ」

 

 

 もう一度言う、カスはいつだって唐突だ。だからこそのカスだ。

 カスがカスたる所以だ。こいつの年が今の半分以下だった頃からそうだったし、8年の空白を経て再会したときもやはりそうであり、結局変わることはなかった。カスのままだった。

 だから俺はスクアーロのことが未だに理解できない。そして御せないままでいる。

 「気色悪りぃ」だとか「俺は嫌いだ」とか言い返してやりたいことはある、山ほどある。

 だかそんな言葉の一つ、二つでコイツが懲りないことは分かっているし、分かり切っている。それこそ引きつって変色して沈殿した傷跡の奥の奥まで刻み込まれている。

 

 何故かコイツはこうするのが好きだった。

 裂けて引きつって埋まった傷跡の表面を一つ一つ確認して、形をなぞって、触って、手を当てることが好きらしい。

 不快じゃないから殴りも拒絶もしなかったら、どうやらこのカスは許されたと思ったんだろう。以来好きなようにさせているし、奴も奴で好きなようにしている。

 

 始めは背中に手を当てているだけだった。

 次は腕に触れていた。

 次は前、胸から腹にかけての跡をなぞる様になった。

 今は顔、頬と額を撫でている。

 

 

 

「俺、アンタの傷跡、好きだ」

 

 

 

 テメェじゃねぇんだから二回も言わなくても分かる。

 

 コレなら簡単に言えそうなのに、「で、何が言いたいんだ?」を未だに俺は聞くことができないでいる。もしかしたらこの行為だか動作だかには特に意味なんか持たないのかもしれない。

 無意識のうちにやってる行為か何かなのかもしれない。

 だが聞くことはできないでいた。

 

 きっと、この行動の意味を問えば、鮫は『コレ』を辞めるだろうと思ったからだ。

 コイツはいつだってそうだ、だからカスだ。

 別に俺はこの行為が嫌なんじゃない、辞めて欲しい訳じゃない、なのにコイツは勝手にそう解釈し、勝手に自分が悪いことにし、そんで勝手に辞めて、勝手に謝るから俺が切れて殴ってカスがぶっ倒れるまでがワンセットの流れになる。そして馬鹿なくせにこうゆうところだけ無駄に学習能力のあるカスは二度と俺の傷跡に触れようとはしないだろう。別にその結末を望んでいるわけじゃない。

 望んでるわけじゃないから、聞けないんだ。

 お前は何がしたいんだ、の一言を。

 

 だから取るべき行動は別の言葉で濁すしか選択肢がない。

 

 

「……こんなもんの、何がいい」

 

 本当にそう思う。

 女じゃねぇんだから顔に傷があるくらい何てことはない、ましては暴力沙汰の世界に生きる身ならばこそ傷跡のひとつふたつ、どうということはない。

 だが在れば在ったで気持ちのいいものじゃない。

 傷を見れば思い出すからだ。

 思い出したくもない、自分の過去と、因縁と、同じ目をした二人のドカスを。

 

「う゛ぉおおい……そんなこと言うなぁ」

 

 俺は好きだぜぇ、とカスはやっぱり同じ言葉を繰り返した。これで三回目だ。

 

 

 

「お前がお前で居ようとした証じゃねぇかよ」

 

「は?」

 

「爺ぶっ殺して、ボンゴレぶっ壊して。立ちはだかるモン、全部カッ消して、壊して壊して、何もかも賭けてお前がお前の欲しいモンを手にいれるために戦った証じゃねぇか。だから俺は好きなんだ」

 

「……」

 

 

「言っただろぉ? お前の怒りに惚れたんだぜぇ、俺」

 

 

 カスはガキみてぇに――14歳だった頃のように、ニカッと笑った。

 

 多分俺は相当間抜け面をしていたのだろう。

 ベタベタ頬の傷跡を触っていたカスが首を傾げるのが分かった。

 長い銀色が滝のように肩から滑りおちて、白い首筋に銀を塗っていくのが良く見えた。

 

 

「……あ゛? ボスどぉしたぁ?」

 

 

 

 言うわけねぇだろが。

 

 

 

「……テメェは」

 

 

 

 言える訳がねぇだろうが。

 

 

 

「……本当にカスだな」

 

 

 

 きっとコイツは気づくことはない、絶対に気づかねぇ。

 断言しよう、このカスが鮫に食われようが心臓ブチ抜かれようが義手を腕ごとブチ抜かれようがコイツが俺の気持ちなんてものを自覚するようなことはない、と。

 

 いつまで経とうと、どれだけ手間をかけようとコイツはコイツでこの先多分一生カスのままなんだろう。

 ソレがどれだけイラつかせ、キレさせ、逆にコイツを甘やかしている原因の一因になっていることをきっとスクアーロは知らないままだろう。だがそれでいいし、もうそれでいい、と思う俺がいた。

 

 

 お前がそうやって、変わらないでいればいい。

 

 

 

 

「う゛ぉおおい! 今さらだぜぇ!!」

 

 

 カスはどこか満足そうに無駄にデカい声を張り上げた。

 ガキの頃から変わらない笑みを、遥かに伸びた髪と大人びた(実際大人になった)顔面に張り付かせていた。

 

 

 

 

 当然コイツを黙らす一番手っ取り早い方法は決まっていた。

 

 

 

 もう、ずっと、前から。

 

 

 







 
 ……うん、コレが精いっぱいだった!!

 真のBLへの道はまだ遠いようです。


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