リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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※オリキャラ注意






Due decenni

 その日、なんやかんやあってランボが十年バズーカを二回暴発させた。

 よって何故だか中学生の沢田綱吉は20年後にぶっ飛ばされるのだった……。

 

 

 

 煙ガ晴れた。

 

 どことも言えない部屋。

 全体的には落ち着きのある部屋。たったひとつしかない窓は真紅のカーテンがしっかりと閉められており、今の時間が昼なのか夜なのかも良く分からない。

 日光のかわりに部屋を照らしているのは古めかしいがセンスのいい、アンティークな照明器具だった。

 そのほの暗い部屋に、赤いベルベットの張られた大きな椅子が設置されている。

 

 重厚な椅子に綱吉は見覚えがあることに気づいた。

 自分がいた時代に、その椅子に王者のように、誇り高く、優雅にふんぞり返る人物を綱吉は確かに知っていた。

 

 だが、今目の前に居る人間と『彼』は違う。

 

 

 

「……え? ス、スクアーロ?」

 

 

 あれ? おかしい、と超直感が告げた。

 

 スクアーロがザンザスの椅子に座っている? という状況を前にして綱吉は目を丸くする。

 スクアーロの取りそうな行動には思えなかった。

 それに、座り方がおかしい。

 確かにスクアーロは綱吉から見れば横柄極まりないし、乱暴だし、声もでかい男だろう。

 だけど、それはあくまで『自分の常識と比較して』そうなんであって……お世辞にも彼の主と比べたらマシ、かなりマシ、遥かにマシである。

 だからこんな風に偉そうにふんぞり返ったりはしなさそーなタイプに思えたんだけどな、と違和感を覚えていた。

 やがて、その人物が薄く艶の入った唇を開く。

 

 

 

 

 

「どうゆうつもりだ……沢田綱吉」

 

 

 

 

 

 

「えぇえええ!?!?」

 

 

 

 

 

 

「うっせぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 驚いた、そして驚いた。

 

 てっきり、いつものようにう゛ぉおおおおおい!というメガホンボイスと共に実に威勢よく非常にうるさく椅子から立ち上がって剣でも振り回すんだろうと思っていた。

 だが、実際は、叫ばれもしない、剣も抜かれない、それどころか椅子から立ち上がりもしない。

 その行動がやはり彼、というかそのボスを思わせる。

 

 だがそんなことより驚いたことがあった。

 

 

 声が、非常にうるさい超騒音じゃない落ち着き払った威圧感を放つ声が。

 

 

 

 

 

 低いが……確かに、女性のものだったのだ。

 

 

 

 間違っても声変わりをした成人男子の低い声ではない。

 

 

 

 

 

「ええええええええええええええええええ!?!?」

 

「るせぇっつてんだろドザコが!」

 

「エエエエエエエエエええええええ!?!?!?!?」

 

「……」

 

 

(何!? アイツ女だったの!?!? 実は女だったの!?!? それとも何か変な攻撃喰らって性別が変わっちゃったの!?!? それとも生き別れの妹とか居たのーーーーーーーーー!?)

 

 

 綱吉は大混乱した頭でなんかそんなアホなことを思った。

 奇声を上げる中学生に対し、目の前のスクアーロに非常に良く似た人物は容赦なく発砲する。

 ダンダンダァン!という激しい銃声が近距離でぶっ放された。

 

「ひぃいい!? ご、ごめんなさいっ! 撃たないで!!」

「あ゛?」

「うたないでーーーーーー!!」

 

 

(なんでこんな短気ーーーーーー!?)

 

 

 沸点低いな……と綱吉は悟った。

 

 

 

「ザコが、十年前のド雑魚と入れ替わりやがったか」

「え? え?? あ、そうだ……オレ、ランボのバズーカが……」

「……あ゛? ……雷の守護者? ……なるほどその様子じゃ違ぇな。テメェはド雑魚じゃなくて20年前のドドザコだな」

「……あの……」

 

(何かこの感覚凄いデジャブだぁーーー!)

 

 綱吉は感じていた。

 スクアーロと話している……というより、まるで。そう。

 

 

 まるで、ザンザスと会話しているときのような。

 

 

 何故か敵意を剥き出しにされている。

 更に人の話をまるで聞いていない。

 挙句の果てに、勝手に自分のペースに持っていかれている。

 

 

(え? え? どうなってんのーーーーーーー!?)

 

 

 見た目はスクアーロなのだ。そのことが綱吉を混乱させている。

 背中まで届くだろう長い髪は薄く青味がかった銀髪だ。その下に収まる顔は名工が作り上げたボーンチャイナのように滑らかで白い肌をしている。顔立ちは確かにキツそうだが、紛れもなく美しいと形容するに値するだろう。だが女性だ、と分かってから見れば確かにスクアーロよりかは、全体的に持っている雰囲気が柔らかいように感じた。

 特に目だ。スクアーロの目は釣りあがってるし三白眼だし何時も血に飢えた鮫のようにギラギラしているけれどこの人は少し違うじゃないか少し、ほら、と綱吉は必死に相違点を探そうとした。

 ……そして気づいた。

 気づいてしまった。

 

 

(…………あ)

 

 

 

 その目は血に飢えた鮫のようなギラついた銀色……ではなく。

 

 

 血色そのものの、純度の高い赤だった。

 

 

 

 

 

「ええエエエエエエええええええええええええ!?!?」

 

「……るせぇ騒ぐな」

 

「だって……だ、だって……! え、エェー!? エェエーーーーーーーーーーーー!?」

 

「ブッ消すぞ」

 

「ちょっと待って! 待って!! え!? もうなんかエーーー!?」

 

(とっくにキャパオーバーだよ!!)

 

 綱吉の頭はとっくにキャパがオーバーしまくり、オーバーヒート状態に突入。

 そしてこんな時に限って作用しなくていい超直感がフルパワーでぎゅんぎゅんと回り、綱吉に最悪の事実を知らせようとしていた。

 

(やめろ! やめろ超直感!! 普段役に立たないくせに! こうゆうときだけ都合よく作用すんなぁ!)

 

 そして何より綱吉はその事実を受け入れたくない。

 受け入れちゃったら自分のなかにある大切な何かが――つまり常識が壊れてしまうことを恐れていた。

 

 だが綱吉は失念していた。

 

 そう、超直感といえど所詮は『直感』。

 

 

 目の前の椅子に優雅に、堂々と、ふんぞり返るその女は。

 口の端をにやっと歪めて……見覚えのある、めちゃくちゃ見覚えのある人物そっくりの笑顔を浮かべたのだった。

 

 

 

「……まぁ、ゆっくりしていけや。ドン・ボンゴレ・デーチモ?」

 

 

「ひぃいいい!?」

 

 

 

 

 

 人類始まって以来、直感という力においては、男は女には勝てないのである。

 

 ……ましてや、男にすらなれていない、中学男子の『直感』なんて……バレバレのダダ漏れなのである。

 

 

 

 

「も、もうやめてーーーーーーーー!!」

 

 

 

 10分が経過し、「あぁ、やったコレで戻れる!」と思った綱吉が最後に見たものは。

 

 

 

 

 

 立派な椅子にふんぞり返る、傲慢なまでに美しい銀髪赤眼の女が、

 

 

 

 

 手に憤怒の光を灯しながらグラスを叩き割っているという光景だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったもんねーランボさんの勝ちだもんねー!! ランボさんの前にひざまづくもんねー!」

 

「う」

 

 

「さっさと負けを認めるもんねーー!」

 

 

 

「う、うわああああああああああ!! わ、忘れたい! 忘れたい!! 今見たことを忘れたいーーー!!」

 

 

「ひぇ」

 

 

「ランボでもイーピンでもリボーンでも何でもいいからぁ! 今すぐ! オレの! 頭を!! 思いっきり殴って!! 殴って!! 記憶喪失にさせてぇええええええええええ!!」

 

 

 結局泣き喚いたランボの声を聞きつけてリボーンがやってきて、ツナの頭を思いっきりとび蹴りしたのだが。

 

 

 あの忌まわしき、遠い未来の記憶は消えなかったのだった……。

 

 

 






勢いでやった、反省はしていない。


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