リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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今回R18語が飛び交っております。
非常に下品です


リバースオブチェリー

 懺悔をさせてほしい。

 

 自慢じゃねぇが世間一般で言う悪行は一通りやってきた。

 盗みや恐喝は物心ついたころには既に日常だったし、気に入らねぇものは殴ったり壊したり殺したりしてきた。拷問はあまり得意じゃないから、どちらかと言うと命令してやらせている方になるだろう。粛清も処刑も見せしめもやったから、あとやってねぇことと言えば戦争位なものだろう。だが、武器の密輸に関わったことならあるから全く手を付けてないわけじゃない。

 

 違う、そんなことじゃねぇ。

 言いたいことはそんなことじゃねぇ。

 そんなことをイチイチ罪にしてたら数が多すぎてもう数えるのも面倒くせぇ、そんなもんをイチイチ懺悔する気はさらさらない。懺悔したいのは一つだけだ――――あのカスのことだ。

 

 

 16だった。

 嫌がるアイツを殴って押し倒して無理やりヤってやった。

 口では散々嫌だ嫌だとアイツは言っていた。頼むからやめてくれ、だの、こんなの嫌だ、だの間違ってるとか何かウルセェことを散々喚いていたのを覚えている。ボロボロ泣いていたことも覚えている。だが、抵抗らしい抵抗はしてこなかった。その気になれば刺しても殺してでも俺を止めようとするならできたハズだ――――少なくともカスでもそのくらいの能力はあった。

 だが、アイツが抵抗できるわけねぇと俺は分かっていた。口じゃ抗議しまくるが、じゃあ本気で暴れるかと言えばそんなことができる訳もない。

 結果、拒否されないと分かってて押し倒した俺と嫌がってても拒めないドカスが成立したわけだ。

 アイツはさぞ怖かっただろうし、気持ち悪かっただろうな。……考えてもみろ、14だぞ? それで女より先に男を知る訳だから傑作だ。凶悪で手が付けられねぇと謳われるあのカスを、口だけで必死に抵抗するあのカスを手籠めにするのは正直快感だった。

 ……とにかくここで懺悔してぇのは俺がガキの頃アイツを無理やりヤっちまったという場所だ。

 

 

 そこから8年後に話は飛ぶ。

 あれだけ好き勝手にされてもあのカスガキはちっとも懲りず馬鹿みてぇに8年俺を待っていた。

 8年もたてばもうガキじゃない。14だったガキは22の男になっていた。

 が、結局変わらず手酷く抱いた。

 言い訳をするなら『どうしても受け入れられないことが多すぎた』だろう。

 信じていた全てが足元から崩壊していく事象に対し、真っ向から拒絶するだけの子供らしさはもう存在しなかった。だからと言って、静かに全てを受け入れるだけの度量はまだ備えていなかった。結果として受け入れつつも不完全燃焼だったヤツがくすぶり続けているという状態に落ち込んだ。

 だから今まで以上に手酷く殴ったし、暴力を振るったし、意識を飛ばすことも少なくなかった。

 それでもアイツは俺を見限らなかった。

 なんで俺を見限らないと何度も聞いて、そのたびに「何でって……決まってんだろぉ、俺はお前に賭けちまったからなぁ!!」と実に気持ちよく豪快に言うのだった。

 それが真実だということは明白だった。

 

 コイツは、一方的に忠誠を誓い、勝手に利き手を押し付けて以来何があっても、何をされても俺の傍を離れる様なことはなかった。機会なら腐るほどあったハズだ。俺に関わっていなければ――それもまっとうな道はもう存在しなかっただろうが――外道なら外道並みに確実に今よりは順当な人生があったはずだ。

 だからつまり、あのカスを泥沼に引きずりこんだのは俺だと言える。

 だが、アイツはそんな俺を恨むでもなく、一緒に沈んだって構わないと言うと来た。

 

 ……と、ようやくドカスという人間が理解できた時、俺は初めてヤツへの恋を自覚した。

 

 

 

 

 本当に唐突だった。

 訳が分からなくなって混乱して散々暴れて少し落ち着いて、理解したときには既に手遅れだった。

 もう戻れねぇ、畜生が。カスに恋しちまったぞ。困った、戻れねぇし、辞められねぇ。

 もう突き進むしかないという選択肢以外全てが消えた。

 

 だが、いざ始めてみようとして愕然とした。

 気が付いたらエンカウント時から数えて20年だ。20年もたっていた。実質8年抜かしてもそれだって12年。つまり俺は12年ずっと傍に居たコイツに今更恋心を自覚した。

 だがそれでも俺は、我ながらよくやったと思っている。

 さり気なくアイツを誘いだしたり、学生時代ですらすっ飛ばしたママゴトのような恋愛の真似事までやったりした。キス一つするのにだって、イチイイチ了解を取ったんだから大したものだろう。

 

 

 

 大変だったのはここからだ。

 

 気が付けばもう俺はアイツに手を出せなくなっていた。

 以前はアレほど簡単に、だったのにだ。

 嫌がるアイツを無理矢理押さえつけたこともありゃ、手酷かったこともある――――むしろ、そっちの方が主流だったような気もする。

 にもかかわらず、一体今まで俺がコイツをどうやって抱いていたのかが、もう、さっぱり思いだせなくなっていた。

 そしてその打撃はカスに来た。

 あの馬鹿は何故かいつまで経っても俺が手を出さないので欲求不満そうにしていたが、何故かだんだんヤツの中ではそれが「なぁ、ボスいいんだぜぇ? 俺に飽きたんだろ?」……と来た。

「無理しなくていいんだぜぇ」

待て。

「俺アンタに好きだって言って貰えただけで良かったからなぁ!」

おいコラ。

「良い夢見れたぞぉ!!」

なんでそうなる。

 

 

 

 ド畜生が。アレだけ苦労したのに、このままじゃ破局じゃねーか。ふざけんな。

 ……だが今回だけは俺にも非がある。認めてやってもいい、そうだ俺が悪かったかもしれない。

 コイツをレイプまがいのヤツじゃねぇと、満足できない体にした……

 ……過去の俺が悪かった……。

 

 

 懺悔をさせてくれ。

 

 やっちまった俺が悪かった。

 

 一周回って戻って来ちまった俺達は―――こっから一体どうすればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「で……それなんで俺に聞いてんの?」

 

「……」

 

「いやだんまりかよ。ふざけんなよ。つか知らねーよ! 突如としてホモの心情を赤裸々に激白された俺の身にもなれよ!? なんか俺今スゲェ複雑なんだけど!?」

 

「……」

 

「おいコラてめぇザンザス……」

「王子、ここは私めにお任せ下さい」

「…………」

「マジか! 実は待ってたぜ……さっさと解説しろよ、オルゲルト」

 

「聞いたことがある……。マトモに恋愛してこなかったくせにやたらと高スペックに恵まれたせいで、モテに困ったことのない野郎が……マトモに恋をすると起こると言う現象が。

 似ている――この状態、この現象……! 『童貞セコーンド』に!!」

 

 

「てめぇら……」

 

「なぁーんだ。ただの童貞返りかよ」

「つまりザンザスは初恋返りと童貞返りのミックス! リトールノ・テンペスタ・ディ・DOUTEI!!」

「てめぇらは俺を! 本気で! 怒らせたぁあああ!!」

「え、ちょま」

「ジル様ーーーー!!」

 

 

 王子様(真)と執事は石になりました。

 

 


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