リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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※またしても非ザンスク!! またしても非ザンスク!! ホモじゃない!!

※ボスさんが結婚してます。嫁が居ます。

※嫁目線です。





10年ぶりの蜜月を。

 

 

 

 自分の人生に悲観していたわけじゃなかったけど。

 

 流石にここまでとは思わなかった。

 

 なんて、似合わないようで似合ってる礼服姿の今日初めて顔を見た婚約者、このまま順当に行けば数時間後には夫になっている人を前にして思った。

 旦那様は34歳。ざっくり言うと自分の2倍の時間を生きている人だった。

 しかもその時間は決して平らで和やかな道なんかじゃないということは、鋭すぎる目やどう見ても事故が原因じゃない顔に走る傷跡を見れば世間知らずな私でも理解ができた。

 まぁ、人には色々ある。その色々が私にも降りかかってきたわけだから、分からないでもない。

 

 

 

 子供の頃、私は自分に『お父さん』は居ないのだと思っていた。

 ただ暮らしていく分のお金には困っていなかった。体が弱かったから、よく寝込んでいたし、ひどいときにはベッドから起き上がれない年もあった。そんな私の莫大な医療費を1日のほとんどを私の世話に費やしていた母

が稼いでいる様子も、国からの補助である様子もなかったから、きっと誰かがお金を送ってくれてるのだろうとはぼんやりと思っていた。ともかく、私がその真実を知ったのはもう少しだけ大人になったときだ。

 

 寒い冬だった。母が死んだ。事故だった。

 

 この時期には、いつも肺や呼吸器を壊して生死の境を彷徨う私ではなく、もう若くはなかったけど死ぬには早すぎる年齢の母が事故でぽっくり逝くなんて何だか悲しいよりも、寂しいよりも、順番が違うんじゃないか? という妙な疑問だけが一番最初に出てきたというから我ながら薄情だろう。

 だが、実際薄情というよりも、私は勝手に『母が居なくなれば、もう病がちな私の面倒を見てくれる人間は居ないのだから私はきっとこのまま死ぬんだろうな』と思い込んでいたため、特に寂しいとも悲しいとも思わなかったのだ。

 あと数か月したらまた会えるかな、とかお母さんは待っててくれてるかな。とか諦めが一周回ったようなことを思っていた。

 ……結果から言うと私にその数か月後は来なかった。

 

 代わりにその翌々日に、父親だと名乗る人が現れた。

 え、居たの、とびっくりしたし。やっぱり、とも納得した。笑えることに、私はお金の出どころは薄っすら理解していたけど、自分に父親が居るとは思っていなかったのだ。

 そんな『父親』は裏社会の人間で、いわゆる中小マフィアのドンという立場で、お母さんはその昔彼の愛人だったらしい。それで子供を身ごもったが、彼にはすでに正妻が居たのでお母さんと結婚することはできなかった。そんな時私が生まれて、運良く(?)女だったからこのまま静かに生きるのであれば、ということで毎月そこそこの養育費を支払うことを条件に愛人とその娘はファミリーから姿を消した……という、何でもない実によくある話だった。

 で、母が死んだし、私は女だし、更には病弱だけど、父は何故か私を引き取りに来たのだった。

 

 というのが私の人生のダイジェスト。

 それから1年後、どうやら私は結婚することになったらしいと父から告げられた。特に興味もなかったけど、まさか自分が結婚できると思ってなかったので、かなり驚いた。

 ただ、そんな私でも「相手は34歳」と聞いたときは多少げんなりしたものだ。

 34歳、オッサンだ。自分より一回りどころか今の人生をもう一回やり直してやっと追いつく年齢だ。きっと頭はハゲはじめお腹はメタボの兆しがありそして足は地獄のように臭いのだろう。

 そんなのと結婚しろ、嫁に行け、家庭を築けと言われてもできるかどうか。そもそも自分で言うのもアレだがこの通り私は病弱だし、子供を産めるかどうか。……それ以前に、作れるかどうか。

 

 相手はマフィアだ。それもイタリア最大のボンゴレファミリーの有力者だ。

 彼は先代ドン・ボンゴレの息子だ。『事故が原因』で大きな怪我を負ってしまったゆえに、次のドンの座を辞退したが実力は本物だろう。何少し年齢は離れているがどうという事はない、何度か会ったがそりゃあいい男だった。一見どこも悪そうには見えなかったのだが、アレほどの男がドンを継げないというのは正直惜しいが。

 まさかあのボンゴレと婚姻を結べるとは。これで我がファミリーは……。

 

 ……やっぱりそれか、と思った。

 それにしたって三文芝居のカス脚本みたいな話だ。

 

 こうして私の嫁入りは決まった。

 

 

 

 

 で、その結婚生活だが。

 

 当然今までマフィアの世界も知らなければマフィアの妻がすべき仕事もなすべきことも何ひとつ分からないまま嫁に行った私だったが、あまり困った覚えはない。

 夜仕事をこなすことが多い夫とは日中は顔を合わさないし、家中は既に取り仕切っている家政婦と執事と幹部を兼任している超優秀なルッス―リアが居た。分からないことは彼のような彼女が教えてくれたし、夫とは夕食を共にし、たまにその後の1時間ほどを静かに同じ部屋で過ごす程度だった。それにしても無口な人だったので、基本同じ部屋で本を読んでいるだけだったような気もするが。

 朝方に帰ってきたあの人を迎えたこともあった。正直引いた。ものすごい量の血を浴びていた。何も言えず蒼白になっている私を一瞥し「帰った」と言うや否やで速攻部屋に戻っていったっけ。

 このような場合、妻は「おかえりなさい」と言って抱き着いてキスでもしなければいけなかったのだろうが返り血にビビった私にそこまでの考えは及ばなかったのだ。

 

 

 あとは、ボンゴレ中枢の妻だけを集めた会などにもたまに参加した。やはり自分よりも10歳上の奥様然とした淑女たちが声高に存在を主張するマウンティング合戦の場だ。

 その中でまだ小娘にすぎない私はやはり異邦人で、どこか垢抜けない田舎娘と見下され、更に夫はボンゴレの暗部の権力者だというから当然異端で、更に私の出自が遥かに格下のマフィアの妾腹の娘だとバレた日にはもう、白眼視どころか憐みの目で見られていた。結果、割と皆私に優しくしてくれていたような気がする。

 それはもう、腫れものか何かを触るような丁重さで。

 女は自分よりも遥かに劣る格下の者に関しては、逆に優しい生き物なのだ。

 ただ一人の例外は10代目ボンゴレの妻であるドンナ・ボンゴレだった。彼女だけは、「まだ若いから大変かもしれないけど、ザンザスさんはいい人だから、きっと大丈夫だよ」……と世にも恐ろしいことを何のためらいもなく仰せになった。凄い人だと素直に思った。

 そんな会合も別段嫌ではなかったのだが、毒を盛られたらしく意識が3日浮上しないという状態を得てからはもう出ていない。

 

 

 

 結婚してから9年経った。夫が早期引退を宣言した。

 ドン・ヴァリアー座を後継に譲り田舎に隠遁することに決めたと言っていた。

 いいな、と問われたが。そもそもその話自体数年前から言っていたことだし何を今さら、と私も着いていくことにした。

 ボンゴレの私有地であるという土地に少し二人で暮らすには大きすぎるんじゃないか、と言う程の家を建てたが御曹司育ちの彼にはこの位でないと落ち着かないのだろうと思って納得することにした。掃除や手入れが大変そうだと思わずげんなりした。

 当然引退したとは言っても彼は暇ではない。来客があったり、仕事があったりで、出かけたり帰ってこなかったりでやはり忙しい。

 つまりせっかく建てた家にも寄り付かないまま、私たちの結婚生活は10年目に突入しようとしていた時だった。

 

 

 

 ただいま、と同時に帰宅したザンザスが抱きついた。何が起こったのか、イタリアが沈むのか、世界が終わるのかと一瞬頭が真白になった。

「え……? あの、コレ、なんです? どうかしましたか??」

 お腹でも痛いのかな、と思って腹に手を当ててみた。刺しても通らなそうな腹筋があった。

「どうしちゃったんです?」

「夫婦なんだから問題ねぇだろ。何が悪い」

「……え? うん……??」

 いや、違う。聞きたいのはそうじゃない。

 どうしたんだ、変なモノでも食ったのか、おいザンザス。と聞いているのだ。朝はパニーノ、昼は昨日の残りのラザニアを食べさせたはず。どこかで拾い食いでもしたのだろうか。

 元々色素の濃い夫の顔は心なしか赤くなってるように見えた。

 更には何か少し戸惑っているようにも思えた。

 

「……あの……?」

「……嫌だったか?」

「いえ、そんなことは」

「……本当か?」

「はい、むしろ嬉しいですよ」

「……」

「……もしかして、ずっと……コレしたかったんですか?」

「…………」

「ザンザス様?」

「……………………」

「貴方?」

 

 

「ずっと、病気がちだっただろ」

「元からです」

「だから、血は、付けらんねぇだろ」

「……あぁ、そういえば……そうですね」

「マフィアの妻なんぞロクなもんじゃねぇ」

「そうですか? 大変だったとは思いますけど」

「命だって狙われただろ」

 

 もう何年も前になる。

 毒を盛られたらしく意識が3日浮上しないという状態になったらしい。自分のことなのによく覚えてはいないが

ただひとつ、手がとても温かかったことを覚えていた。

 目を覚ました時、この人が傍に居た。その時手が温かかった理由を知ったのだ。

 3日間ずっと、この人が手を握っていたことが分かったのだ。

 

「ありましたね、そんなことも」

 

 そんなちっぽけなことだった。だが、紛れもない、その時決めたのだ、この先一生、この人の傍に居ようと。

 

「だからお前に触れなかった」

 

 嘘でしょう、触ってたじゃないですか。わりとしょっちゅう。

 夜中にやってきて、頭を撫でたり名前を呼んだりしていたでしょう、起きていたんですからね。

 ……と、素直に言うほど私は無垢でも純粋でも無神経でも空気を読めない人間な訳でもない。

 

「じゃあ、今は、もう触るんですか?」

「……嫌か?」

「これからは、キスしてハグしてお帰りなさい、でよろしいですか?」

 

 嫁いだ時に比べれば、大分色素が濃くなった赤い目が見開かれて、わずかに揺れた。

 

 まぁ、なんというか。要は不器用なのだ。私もこの人も。

 

 10年かかった。お互いに。

 10年の月日と暗殺組織とこの人のマフィアとしてのキャリアを全部支払わなければ、ままごとのような結婚生活も始められなかったのだから、これはもう、笑うしかないだろう。だって、冗談みたいな話。

 

 

 

 自分の人生に悲観していたわけじゃなかったけど。

 

 流石にここまでとは思わなかった。

 

 

 

 そうやって私はひとしきり笑った後、結婚式を挙げてから10年経って、やっと夫婦の真似事を始める気になった少し老けた17歳年上の夫の頭を思いっきり抱きしめたのだった。

 

 

 10年ぶりの蜜月を。

 

 







8月3日はハチミツの日~~。


以下非BLでノンケなボスにもしお嫁さんが居たら?個人妄想

現役やってる間は結婚一切しないのに、40半ばとか50位でイキナリ引退宣言して田舎に引っ込んで、しばらくして「ザンザス元気にしてるかな~」と様子を見に来た10代目辺りが尋ねて行った時に急に黒髪赤目の赤ちゃん抱いた20代半ば位の若奥様が「あら、どちら様ですか?」ってイキナリ現れる……位に思っています。
 つまり誰にも言わないで勝手に引退して勝手に若い嫁さん貰って勝手に子供作ってそう。ってイメージです。
 あと何かボスってすげぇ若い嫁さん貰ってそうだし。


 今回は知り合いと「こんな感じじゃね?」と話し合った結果「やれ」って言われたのでやりましたァ……。BL書いてるはずなのにね……どうして……こんな……。
 次はちゃんとBLを書きます。ザンスクに栄光あれええええええ!!(爆死)

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