※オールキャラ未出演。
※非ザンスク前提。
※ボスさん一生独身。
※公式原作キャラに忠実。
以上が無理!というドカスの皆様は、プラウザバックせずに
このままスクアロールしてください。
if you that your happiness 1
あのXANXUSが結婚することになったらしい。
ソレを聞いた者達は一瞬自らの耳を疑ったと言う。
確かに、万年反抗期、放っておくとすぐクーデターを計画し始める乳児よりも目が離せないイタリア人別名XANXUSと言えど、三十路半ばを突入した。立派な中年だ。
しかもXANXUSはいい男である。
まごうことなき超一級品のイタリアーノである。
色々あって継承権を持たないとはいえ、ボンゴレ九代目の息子であるということには代わらないし、189センチという高身長。贅沢な肉ばっか喰ってるのに贅肉とは全く無縁な引き締まった体躯。
更に険があるといえど整った顔立ち。
相変わらずの性格はかなりアレだが、彼の若い頃を知っている人間なら神妙な顔つきで厳かに口を揃えて言うだろう……
「マシになったよ」
「キレるまで数秒かかるようになったじゃん」
「今のほうが遥かにマシだわぁ」
……と。
問題はその相手である。
「……まさか……」
ボンゴレ10代目、別名ネオ・プリーモと呼ばれるヒト科の生物沢田綱吉は目を見開いていた。
「XANXUSが……結婚する……!? しかも……相手が――!」
「10代目、気を確かに」
傍には右腕と称される嵐の守護者が、居たりした。
「スクアーロじゃない……だと……!?」
「俺も正直ビビってます……アイツ絶対ホモだと思ってたんで……」
こいつらはもはや自分が何を言っているのか良く分かっていないようだった。
「信じられない……だってあの二人絶対デキてるのに!?」
「一目ぼれからの8年の別離を乗り越えて10年間……何故籍を入れていないのかそっちのほうが不思議だったのに」
「それはイタリアの法律のせいじゃないかな……じゃなくって! 何だよXANXUS……? しかも……しかも相手がさ!!」
「十代目それ以上は!」
「だって予想外も予想外のダークホースだったよ!! だって……
相手がユニだなんて!!」
こうなったのにはいきさつがある。
まず、ボンゴレファミリーは世界最大手のマフィアである。
なので、パーティーだの交流会だのと言った催しがしょっちゅう開催され、ほぼすべてに出席を余儀なくされるのだ。
当然十代目ファミリーだけでは体が持たない。というか足りない。
霧の守護者たるクローム髑髏の幻術トリックというインチキを使って尚、足りることがない。
そこで現在でも影響力のある九代目の息子かつ、ヴァリアーのボスたるザンザスにお願いせざるを得ない状況にあるのだ。
だが、ザンザスはザンザスであった。
椅子から意地でも立ちたくない疾患にでもかかってんのか、それともただ単に人が嫌いなだけか滅多にその願いが聞き入れられることはない。
が、その時はちょうど機嫌がよかったのだろう。
たまたま十代目ボンゴレの代理として出席したパーティー。
そこにはジッジョネロ・ファミリーのボスの娘、ユニも出席していた。
……で、何故か二人が意気投合し、トントン拍子で婚約にまでこぎつけたのだった……。
あまりにも衝撃すぎてその知らせを聞いたすべてのものは信じられない、と愕然としながらも真剣な表情を浮かべ、結婚への戸惑いと祝福を口にしたのだった。
「冗談は眉毛だけなのな!」
「極限エイプリルフールは過ぎたぞ」
「ホモがロリコンにジョブチェンジしただけだもんね。どうあがいても絶望だもんね」
「……ボス猿が結婚? ……で? キングコングの嫁取りでそんなに騒ぐこと?」
「……私なんかが……ブライズメイドでいい……?」
そう、このとき誰もが自分が驚くばかりで精一杯だった。
だから、誰も気づくことができなかったのだ。
そう、たとえ『超直観』を持つ者たちといえども……。
◇◇◇
祝ってやるつもりだった。
決まった、という話を聞いたときも、挙式の打ち合わせやら準備やらがびっくりするほどサクサク進んでいく時も大して感情は揺さぶられることはなかった。
ただ、漠然と現実感だけが欠如していた。
これは夢なんじゃねえかなぁ、と大してよくない頭の隅っこから声がする。
……だったら。
ずっと夢を見ていたような気もした。
自分と主は甘ったるい関係じゃなかったはずだ。
ただ、ビジネスライクというにはあまりにも距離が近すぎ、じゃあ悪友か、と言えばそうじゃないような気もした。
望まれれば、なんだってやった。
自分ができることは何だってやったし。
自分の持てる者は何だって捧げたつもりだった。
だが、所詮は全て一人よがりだったのかもしれない。
散々カスだ、バカだと言われていたが、本当にそうだ。
自分は結局ザンザスの望むものを、何一つ与えられてはいないのだ。
悪い頭でもそれ位は分かっているつもりだった。
「……スク」
頭を三色に染めたグラサンオカマが入ってくる。
特技は拳法、趣味は死体愛好というトンデモナイ特性を持つオカマである。
そのカマがスクアーロの背中に毛布を掛けていた。
「寒くない? 今夜は冷えるでしょう?」
「……ねーよ。余計な世話だぁ」
「そう? 強がるのも大概にしなさいな」
私もトシよね~~最近冷えに弱いのよ~~。
と、格闘戦のプロであるオカマはそんな訳のわからんことを言う。
スクアーロはカマの全く変わっていないように見えるグラサンを見た。
グラサンは変わっていない……ように思える。
だが、頬は若いころよりもいくらかこけている。目じりには僅かだが薄く皺が寄っている。
気か付けば随分と長い付き合いになっていた、とスクアーロは思った。
「スクちゃんの髪は本当に綺麗ねぇ、うらやましいわ」
「……そーかよ。あいつのせいで伸び放題だぜぇ」
「そうね。ガサツだったあなたがよく我慢して、手入れして、キレイに伸ばしたものよねぇ」
「……なぁ、ルッス。この髪よぉ」
いっそ切っちまうか。
「アイツだってズルズル伸ばされてウゼェだろ」
「……そんなこと」
「……ユニだって、こんな奴が近くに居たらうっとおしいだろ」
「……スク」
「なぁ、ルッス」
あまり良くない頭で考えた。必死来いて考えた。
自分はザンザスにとって目障りな存在なのだ。
少なくとも――ザンザスが幸せになるのに。
だからもう傍に居ない方がいい。
それが馬鹿な銀色が一生懸命出した結論だった。
なのに。
「……俺、弱ぇなぁ……」
嫌だった。
本当は嫌だった。
離れたくなかった。
もう二度と離れたくなかった。
なにも望んでなかった。
ただ、ザンザスに傍に居てほしかった。
ザンザスが欲しかった。
でも、それ以上にザンザスには幸せになってほしかった。
だから。
だから何も言えなかった。
だから――――何も言わないで消えようと思った。
◇◇◇
同時刻。
イタリア某所にて。
「あの野郎……ホモだと思って油断してたら、やらかしやがったな」
「だよね~~すっかり安全パイだと思い込んでたよね~~」
「ハハン、しかしもう過ぎ去ったことは仕方がないでしょう」
「バーロー、だから今から止めんだろーが」
「まさかお前らと組むことになるとはな……」
金髪をオールバックにした男、紫髪の少年、でけえゴリラ。の三人がいかにもそれっぽいスーツを着込んで会議室に陣取っていた。
その正面には一見異様な風体……こ、個性豊かなメンツがそろっている。
簡単に言うとロン毛アイシャドー、無精髭、ゾンビ、お面、長い髪を靡かせた小柄で華奢な蒸留水のごとく清廉な印象を与えるような美少女である。
そして彼らの前には彼らの長である真っ白な青年がいた。
「確かに僕はボンゴレの監視対象だけどさーーチェデフの監視マジでザルなんだよね~~。簡単に抜け出せちゃった☆」
「ボンゴレのハリボテ企業ごときが白蘭を見張るとか有り得ないんだから~~!」
「僕ちん……チェデフなんかよっかもっと手ごわい奴を撒く方が大変だったと思」
「バ、バーロ……! 黙れ死にたいのかデイジー! 奴がまだどこに潜んでいるかわかんねえんだぞ」
「……は、ハハンハハンハハンhhhhhhh」
「一体何を言ってるんだお前ら」
金髪オールバック――ガンマはわけわかんねえぞ、といった表情だった。
世の中には知らない方が幸せなこともある。
「ともかく、ガンマクン、僕たちの目的は同じようだね」
「あぁ……そうだな。俺はここに宣言する――――本日このときをもって、ジッリョネロはお前らと同盟を組む……」
「そうだね~~。一時的とはいえ、ミルフィオーレ復活だね~~」
「お前と組むのはコレで最初で最後にしたいもんだ……」
「僕たちの目的は一つ」
「「武力を用いての『結婚式』の中止、そして――――花婿の抹殺だ」」
婚約発表時には誰もが自分が驚くばかりで精一杯だった。
だから、誰も気づくことができなかったのだ。
この事態に一番早く対応したものたちのことを。
ロリコン同盟――別名、ミルフィオーレがひそかに復活していた……ということを。