リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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※馬鹿大量発生注意







白昼夢 延長戦

「やぁザンザス君」

 

「あ゛?」

 

「ハジメマシテだねー。ここは色々あって精神世界とか精神空間だよー。簡単に言うと、キミの脳内に直接呼びかけてるって感じかなー? だから僕を殺そうとしても殺せないからねーー。

 あ、でも大丈夫ー。僕もキミを殺そうと思ってもできないよーー」

 

「……」

 

 既にコルボ・ダッティオをぶっ放した後にソレを言われても遅せーぞカスが、とザンザスは思ったのは内緒の話だ。

 

 

「実は折り入って相談があるんだよ~~それがね~~」

「……カスが」

 

 聞く価値ねぇな、とザンザスはいつも通りかっ消す体勢に入った。

 手のひらには憤怒の炎がバンバン燃え盛っている。

 ……が。

 

 

 

 

 

「幻チャンのことなんだ」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 白蘭は真顔だった。

 

 しゅぅうう……と掌のから煙が上がっていくのが見えた。

 どうやら話を聞いてやることにしたらしい。

 

 幻騎士という霧の守護者の情報は知っている。

 確か自分の嫁……副官、スクアーロと斬り合いをしたとかいう、ジッリョネロ所属の剣士だったはずだ。

 凄腕の剣士であると同時にヴァリアーで言うならSランク、即ち幹部クラス相当の一流の術士であるとも言える。さらにはリングの炎に対する理解も深く、非常に優秀な人材といえるだろう。

 

 そしてその忠誠心の高さゆえに……白蘭に付きまといまくるガチホモのストーカーであり、最近は白蘭様への歪み切った愛情ゆえの謎のヤンデレパワーでヘルリングを使役&酷使しまくっているちょっとアレなドカス。ということも薄っすらと理解していた。したくなかったのに。

 

 

 

「思い出して欲しい、エボラだった頃の幻チャンを……」

「……」

 

 

 知らねーよ。

 とザンザスは思ったがそこは超直感とかいうザンザスがこの世に生れ落ちた瞬間から実装されていたチートスキルが発動して『アフリカっぽい所に旅行中病に倒れて無菌テントと感染予防服を纏った医者たちに囲まれる包帯だらけの幻騎士』という光景を受信。

 ぶっちゃけ知りたくもなかった。

 超直感という才能もとんだspada di MOROHAだ。あればいいというものではない。

 

 

 

「眉毛、フツーだったよね……?」

「…………」

 

 確かにぶっ倒れているときの幻騎士は包帯で顔をぐるぐる巻きにされているとはいえ眉毛が普通に思えた。

 

 普通の眉毛に思えた。

 普通の。

 普通の……。

 

 ちなみにザンザスの眉毛は割れている。どちらかというと校則違反な方だ。これは生まれつきだが。

 

 

 

「普通だったんだよ!!」

 

「お、おう」

 

「普通!! だった!! んだよ!?」

 

 

 

 『だった』即ち……圧倒的過去形……!である。

 

 

 

「アレはそう……ジッリョネロ吸収前のある日だった……」

「……」

 

 白蘭はすっかり回想モードに突入していた。

 そうゆうのいいからそろそろかっ消えねーかなーこのカス、とザンザスはとても自然に思った。

 これ以上ヤンデレの愛憎劇場なんか聞きたくない。

 聞きたくないったら聞きたくない。

 だが白蘭様はやめる訳がなかった。

 

 

 

 

 

『じゃあさ、証拠にお土産がほしいな』

 

 胡散臭い笑顔でほほ笑む白蘭が白いスーツを着ていた。

 正面には黒いスーツで膝をつく幻騎士の姿がある。 

 いつも来てる変なピッチピチのスーツではない。

 

 

『僕に忠誠を誓ってなんでもしてくれるんなら、君んとこにある7つのマーレリングとボスの大空のおしゃぶりを持ってきてよ』

 

『……ジッリョネロファミリーを……滅ぼせと?』

 

『幻ちゃん仲間に信頼されてんでしょ? 幻覚でケガでも装ってみんなが心配して集まったところを全滅させちゃいなよ』

 

 

『……御意』

 

 

 そう、白蘭の目的はこれだった。

 

 ジッリョネロファミリーに伝わる『マーレリング』と『大空のおしゃぶり』。二つのトゥリニセッテと幼女こそが白蘭の目的だったのだ。

 世界を統べるには、ボンゴレリングとマーレリング、そしてアルコバレーノのおしゃぶりそして幼女が必要不可欠なのだと白蘭は理解していた。

 しかし、ボンゴレリングはこの世界には存在しない、するにしても世界最大手であるファミリー、ボンゴレを相手にしなければならない。アルコバレーノのおしゃぶりも同様に、正攻法ではまず手に入れられないだろう。

 ゆえにここはまず、入手しやすい所から攻略していこうとしたのだ。

 

 マーレリングと、大空のおしゃぶり。そして、ロリを……。

 

 真正のロリコンである白蘭ではあるが、野望と性癖を別個に考えるだけのギリギリの理性はどうにかして保っているようだった。その冷徹なまでに強固な理性と意志の力こそが、やがては偉業を成し遂げる者こどが持つ精神であり、白蘭はその精神力に値する器であったと言えるだろう。

 

 ゆえに白蘭は知らなかった。

 

 

 この世には

 

 

 それが

 

 

 

 

 

『ならば白蘭様、証をみせましょう』

 

『え? は、はい? えー……何してくれるのー?』

 

 

 

 できない、不器用な人間もいるのだと……いうことを。

 

 

 幻騎士は手から何かを取り出した。

 それは……カミソリだった。

 

 

 

『せいっ!』

『え、え? え??』

 

 

 幻騎士は勢いよく眉毛を剃った。

 

 

 すごく自然に勢いよく剃った。

 

 

 

 

『この毛を……白蘭様!! 貴方に捧げる!!』

 

『……』

 

 

『これが俺の忠義の証! あなたの願いを必ず届けてみせる!! この眉に誓って!!』

 

『この……眉に……誓って……?』

 

 

 白蘭には理解不能だった。

 

 

『もし俺が失敗した暁には白蘭様……貴方の手で……剃っていただきたい』

 

『は? 何を????』

 

 

 

 白蘭はもう意味が分かんなかった。

 

 だが幻騎士はノンストッパブル。

 

 

 

 

 

 

 

『我が眉毛!! 失敗の暁には全て白蘭様に献上する!!!!』

 

 

 

 

『…………は、はい……』

 

 

 

『そして生涯二度と生やさないと誓いましょう!!』

 

 

『…………』

 

 

 

 重い。

 

 重い。

 

 ……重いよぉ。重すぎるよぉぉ……!

 

 今そんな誓い要らねーよ……! 眉毛とか要らねえよ……!

 だがコレは好機。むしろ一番堅実な策なのだ。

 幻騎士こそが……マーレリング、そしてユニという最高の幼女への……鍵となるのだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今思えばアレが全ての間違いだった……」

「……」

「眉毛……貰っちゃったんだよね……。なんかさ……マーレリング……ユニちゃん……そして……世界が、ほしかったんだ……僕」

 

 白蘭は心底後悔しているようだった。

 

 どことなく哀愁漂うその姿は、まるで、懺悔のようですらあった。

 

 膝をつくその姿を見てザンザスは思った。

 

 

 

 

 まるで神への祈りじゃねぇか……と。

 

 

 

 

 多分あのクレイジーサイコホモから解放してください神様とでも言うんだろ、と。

 

 

 そして、生憎ザンザスは本場カトリック総本山を持つイタリア人の癖に神を信じてはない。

 七つの大罪を司る悪魔を率いているんだから信じるもクソもない。むしろ神の存在を知っていてあえて背を向けている人種だろう、とにかく神様が祈れば何かしてくれるなんぞこれっぽちも思っていない。

 

 だからこそ、優雅に笑った。

 

 

 

「……カスが、それ位でビビってんじゃねぇ」

 

「黙れ……! お前に何が分かるんだよ!!」

 

 思わずキレた白蘭だった。

 普段の飄々とした態度を保てない……おそらくは、それほど心理的に追い詰められているのだろう。

 知ったことか、とザンザスは言う。

 

「ドカスが。……俺からの施しだ……聞いておけ。……もう十年前の話だ」

 

 

 あ、この話面倒くさいかなーとザンザスの過去に1ミクロたりとも関心がない白蘭はまるで水が高い場所から低いところへゆっくりと流れ落ちるように……ごく当たり前にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日ザンザスは重い体を引きずっていた。

 ずっと冷たい場所に閉じ込められていた肉体は鉛のように重い。だが頭は冴えている。脳は煮えたぎっている。

 だが、諸々の問題を放置しても尚。それ以上に今はやるべきことがあった。

 

 『アレ』から一体、どれくらい時間が経った?

 

 カスは……カス共はどうなった??

 

 今すぐにやるべきことがある。

 だからカスが必要だった。癪だがカス共の力が必要だった。

 あの爺を引きずり降ろしてやる。

 

 

 そう決意しながらかつてのアジト……ヴァリアーの城の扉を開ける。

 

 

 

 カス共は呑気にポーカーに興じていやがった。

 

 ……オッタビオの姿はない。

 グラサンのカマ野郎……ルッス―リアは変わっていないように見えた。

 レヴィも同様だ。信じられないものを見るような目つきでこっちを見ている。

 マーモンも変わらない、変わるわけがない。

 

 見覚えのないガキがいる。……ベルだろう、と直感で判断した。

 髪型や服装は変わっていないように見えた。

 だがその背丈は自分が知っているよりもかなり伸びている。

 体つきも子供、というよりは少年、いや、もう青年と呼んでいい年齢に差し掛かっているように見えた。

 

 一体アレから何年経ちやがった……!と突沸のような感情が沸きあがった。

 

 そして全く見覚えのない奴がいる。

 

 

 見事な長い銀髪だった。

 

 なんだこのカス共、女でも入れやがったのか? 暗殺だろ、このナリじゃ目立つだろーが。ナメてんのか。

 だが髪は綺麗だと素直に認めてやってもいいと思った。

 顔立ちも悪くない、むしろかなりいい、自分好みだ。

 だが目つきが悪すぎる、女の癖になんだこの目つきの悪さ……は……。

 ……いや、違う。

 

 ……俺はこの目を知っている……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これから先お前はオレを仲間にしたことに感謝する日が必ず来る』

 

 

 

 忘れる訳がないその眼を知っている。

 

 

 

 

 

『オレは例の計画が成就されるまで髪は切らねぇ』

 

 

 

 ……忘れたくない、お前の目を。

 

 確かに俺は覚えている。

 

 

 

 

 

『 髪 は 切 ら ね ぇ 』

 

 

 

 髪は……切ら……。

 

 ……切らな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おああああああああああああああああ!?!?」

 

 

「う゛ぉおおおおおおおおおおい!!?? ざ、ザンザス、俺ずっと待っ……」

 

 

「ドカスがぁああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伸びてやがった……」

 

「ひっ!?」

 

「カスは……伸ばしてやがった……8年間……ずっと……」

 

「う、うそだよね……? じょ、冗談だと言ってくれ……! 頼むからぁ……!」

 

 白蘭の目は光っていた。

 いろんなものが反射して、光っていた。

 に、対しザンザスの赤い目はもはや光を映してはいなかった。

 

 

 

「……せいぜいテメェも気を付けるんだな……一度伸ばし始めたら、絶対切らねぇぞ……。

 ……そして一生付きまとわれる……」

 

「うわあああああ! 嫌だぁああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   一方その頃

 

 

 

 

「この眉は白蘭様と共にあり!! 俺の忠誠の証なのだ……!」

 

「う゛ぉおおおい! 俺もだぁ!!!!」

 

 

 

 既に時遅かったりした。

 

 

 

 






旦那たちによる嫁自慢大会にも。

ヤンデレホモストーカー被害者者の集いにも見える不思議。

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