皆さんは覚えていますか。
幻騎士という、ミルフィオーレの霧の守護者を……
白昼夢 1
幻騎士は死にかけていた。
よく分からない伝染病的な何かで死にかけていた。
多分エボラ。
だけど死にたくなかった幻騎士は泣いた。
年甲斐もなく、泣き喚いた。
成人男子が、恥も、外聞もなく、泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて、周囲からの眼差しが同情からドン引きに代わる頃。
幻騎士は流石に泣き疲れたし、病気だし、喉痛ェからもういいかなぁ、という気持ちになった。
薄れゆく意識の中、幻騎士は自分が所属していたファミリーのことを思い出していた。
思えば、誰ともソリが合わなかった。
先代のドンが逝去した後、ドンに据えられたのはまだ幼い少女……いや、幼女だった。
どう考えても無理だろ。
頭おかしいだろ。
幻騎士はそう唱えたが、大多数が「うっせぇ! 年齢だ性別だなんざ関係ねぇ!! んなことよっか血筋だ血筋!!」とか妄言ほざいてやがった。
その幼女ノリノリで何か変なおしゃぶりとか持ってるアルコバレーノだから良かったようなものの、幻騎士はファミリーの終焉を垣間見た。
そして。
彼のファミリーは。
基本的に、皆。
ロリコンだったのだ。
「ユニ様ハァハァ」
「ユニ様ペロペロ!」
「ユニ様の匂いだぁ……ようじょのかほりだぁ……くんくんくんくん」
特にガンマとかいう金髪はヤバかった。
幼女完全ガードしていた。
え? 何? 何なのアンタら?
幼女マンセーなの? え? 間違ってるの俺なの??
幻騎士はもう訳が分からなかった。
そんな訳で一人アフリカにぼっち旅行していたら何か感染症にかかったのだった。
で、数日前に上司。
というかボス。
ドンから通信があったりした。
『うっわ。本当に死にかけてるよ……。……ないわー……』
「……」
『お前どうせアレだろ、性病とかそっち系だろ。何なの? ホモなの? キモいの死ぬの?』
「…………」
『ごめん私そうゆうのマジで無理だわーー』
「…………」
『じゃさいならwwwwこの世からwwww』
「………………」
『骨ぐらいは拾ってやるからよwwwwwwww』
幻騎士は、泣いた。
何かもう、大泣きした。
泣いて、泣いて。
涙も枯れて果て、喉が引き千切れる程嗚咽した後。
何かもう…いいかなぁ。という諦めの極致に達していた。
自分もファミリーにもボスにもそして自分自身にも。諦めがついていた。
あまり誉められた人生ではなかったけど特に生きる理由も見つからなかった。
何かロリボス酷いし
周りロリコンだらけだし
辛……。
幻騎士が意識を手放そうとした時だった。
「諦めちゃダメだよ」
開くドア。
何だねキミはー。
防護服ナシとかテメェ正気かーー。
自殺志願なら他を当たってくれー
このクソ忙しい時にパンデミック拡散すんじゃねえよクソが死ねーー
とかなんとか周囲の医者を瞬殺し、白い男が現れた。
まるで、闇にふる、一筋の光のように。
「命は尊い。生きているだけで人は美しい。簡単にあきらめちゃダメだよ。生きることから」
「あ……あぁ……っ!」
まるで天啓。
雷に打たれたかの衝撃。
絶望というなの闇で塗りつぶされた世界を――塗り替えた白。
幻騎士は直感した。
――――天使だ……。と
だが、幻騎士は知らない。
彼が見た『天使』こそが
真性の
――――ロリコンであるという、ことに。
コイツ超好きだったわ。