リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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6月6日はフランの誕生日なので。



raison d'etre 【F】

 メーデーメーデー、現在逃走中のヴァリアー幹部はこちらですー。

 

 

 とか何とか言ってミーは走ります。

 ミーだって走れます。

 確かに術士だから、とても三十路とは思えないいい年こいてうざったらしくってムサくて見るに耐えないアホのロン髪隊長や、椅子に座ったまんま歩くって動作を忘れてんじゃないかと推測できるちょっとアレなボスには身体能力は勝てませんーー、けどミーだってミルフィオーレのモブ隊員をさっくり倒せちゃう程度には身体能力はあるし、単純な頭の構造してる脳みそ単細胞なベル先輩と追いかけっこする程度には身軽だったりですよ。凄いでしょ。

 

 こーなったのは、色々理由がありますが、結論から言っちゃうとまぁ。

 もうミーはヴァリアーには居られなくなりましたー。

 

 はい、なのでー足抜けしますー。

 

 ミーは、いわゆるかっこよく言うと潜入工作員という奴でした。

 簡単に言うと、ミルフィオーレとか言う百蘭って若白髪が率いる全自動裏切り者製造集団を倒すためにミーの師匠たるクソナッポーを脱獄させたりするのがメイン任務で、その間ヴァリアーに潜入してろとか言われて、大変でした。

 どいつもこいつも本当人使い荒すぎだろ、ブラックってレベルじゃねーぞ。

 ダーク企業だろ。流石マフィア。

 

 捏造サービス残業代を架空請求したいですねーー。過労死したら訴えますー。ヴィンディチェにでも訴えますー。

 

 まー、だけど勝っちゃいました。

 かつてリングを取り合って敵同士だった奴等が手と手と足を組んで、ふざけたご先祖まで召還してみたりして見事世界の敵を倒しましたー。めでたしめでたしですー。

 ……という感じなのでミーはもうお役目ゴメンですよ。

 それに、マーモンとかいう霧の守護者も帰ってきたので、もうミーは要りませんよねー?って空気になったので、空気を吸って吐くっていう特技が遺憾なく発揮されたミーはさっさと帰りますー。だからカエルの被り物も脱ぎましたー。ミーは両生類じゃないので肺呼吸します。

 王子(騙)が押し付けてきたモンなんて返品ですよ。

 

 それに、マーモンって人も帰ってきたんだし。

 

 元々ミーがカエルの変なクソ帽子なんか被らされてたのだって、確か『前任のマーモン』って人の変わりだっていうアホみたいな理由だったんで、もう帰ってきちゃったんですから被ってる意味もないなーと思いました。

 本当にカエル連れてましたねー、マーモンさん。

 身体のサイズに比例して脳みそまで縮んでんじゃねーかなこのガキ、と思ったのはミーだけの秘密です。

 まぁ、ほっぺにペイントしている時点でもうお察しですー。きっと王子(自称)とか三十路ロン毛とか、グラサンオカマ野郎とかとつっくづく同じ人種ですねーとか思いました。

 本当に変な集団でした。外見からしてマトモな奴がいねーってかなりヤバくないですか?

 まぁ、あっちも似たような集団なんだけど。

 

 あ、追ってきましたねーー。

 

 ミーだって馬鹿じゃないので、ミーは幹部だったりしたのでぺーぺー隊員の手には負えないでしょーと思ってましたー。なのでー追ってくるのは確実に幹部(笑)だろーなーと想像はついてました。

 だから逃げますよ。ちゃんと、幻術使って。

 最近、ジャッポーネのニンジャのコミックとか言う奴で見ましたー。

 必殺、タジュウカゲンブンシン。

 あっちにもこっちにもミーの分身っぽいものを大量発生させたりします。

 しかも、ジャッポーネのコミックみたいに、「倒したら煙」じゃなくって、そこはミーは術士なので、プロのこだわりといいますが職人芸って奴ですか。アレですー。倒したら相当スプラッタな感じで、断末魔あげて血反吐ブチまけて臓物ぶっ放して派手に散るって感じに仕上げました。見てる方の心にちょっとでも焼き付きゃいいかなーって感じですー。

 願わくば夜な夜なうなされて睡眠不足で死ねば万々歳かな。

 

 

 ゲロっ、まーた一匹ミーの分身が消えました。

 残念です、絶妙な再現度のクオリティだから結構愛着あったのに。

 しかも相当近いですねー。もう追いついてきやがりましたねー。……畜生が。

 

 しかも何ですかー? ナイフ投げまくりのハリネズミかって位にオーバーキルしまくりですかー、日ごろの恨みをここぞとばかりにぶつけるとか本当、大人げないですよねー。あーゆー逆コ●ンになりたくないですー。

 しかもその後嵐属性の赤い炎で森を燃やしまくってますー。

 CO2がー大量発生していますーー。限りある自然がもったいないですー。

 あーあ、パリ協定が可哀想だなー。このままじゃキョートギテイショの二の舞かなー。

 

 という明後日の方角へ現実逃避しそうになった脳みそを現世に戻します。

 

 そもそも、ミーはヴァリアーに拉致られたし、いつだって逃げられる程度の実力はあるんですよ。

 ヴァリアーって幻術士は少ないじゃないですか? で、ミーはトップマジシャンなわけですー。

 まぁ、アホ銀毛は直感で幻術見破るらしいですけどね。剣士ってやっぱどっかイカレてやがる。

 けど専門が居ないんですからミーを追跡できる人間は少ないんですよねー。

 と、ミーらしくもなく余裕ぶっこいていました。

 

 したら気がつけば森が真っ赤ですー。

 ミーが自分でぶっ放した血のりと、嵐属性の炎で真っ赤かに大炎上ですー。

 一週回って笑えますー。

 

 

 

 

 

 なんでわざわざ追っかけてくるかなぁ、本当。 

 

 

 

 

 まー、いっか。

 ミーだって追いかけられることは計算済みですよ。

 だから、いざって時の最終手段はちゃんと仕込んでますよ。

 いざって時に全部ぶっ飛ばせる超凄い爆弾を仕込んでるんですよー。

 ミーも追ってきたアホのベル先輩もろとも木っ端微塵の肉片ですー。超細切れのミンチですー。

 このままじゃ王子(二番手)との合びき肉の出来上がりですー。

 ……うわぁ。言ってて最悪じゃねーか、今からでもやめよっかな。

 

 

 

 

 

「何が最悪だって?」

 

 

 

「ゲロっ」

 

 

 

 

 うわぁ、出てきやがりましたよ、堕王子!

 その「髪切れ、前髪」と思わず突っ込みたくなるような金髪ピンピンフォルムは一度見たら忘れられません。つかアンタ十年前はストレートだっただろ。なんで癖毛になった。

 ともあれ、ミーに追いついたことだけは褒めてやりましょう。

 

 

 

「逃げられると思ってんじゃねーよ、クソガエル。天下のヴァリアーが、足抜けなんか許すわけねーじゃん? お前やっぱ馬鹿だろ」

 

「そーですかねー? 逃亡成功しちゃえばこっちのもんだろ、って思いますけどねー?」

 

 つか、天下のヴァリアーって自称しちゃう辺りやっぱこいつ等痛いわ、とミーは冷静に思いました。

 

「成功なんかさせねっつーの。お前が逃げられるわけねーんだよ。本当ならここで処分。だけど今はミルフィオーレの残党狩りに後始末に忙しすぎて術士総動員。

 だから王子の特例で連れ戻してやるよ、うっしっし……テメー死ぬ気で働け」

 

「うっわー。熱いブラックカミングアウトもらいましたー。今世紀最大の自白が、今、ここに」

 

「くだらねーことほざくんじゃねえよ。オレの分も働けよ」

 

「後輩に仕事押し付けるのは人間としてどーかと思いますーー。性根が曲がって腐ってますねー。腐臭がしますよー。加齢臭もしますー。神よー! どーか神よ! 哀れなミーにファ●リーズを!」

 

「うるせーよ」

 

 

 アホのベル先輩の「いかにも」って感じのナイフが背中にブッ刺さりますー。

 痛くて涙が出てきます。

 このままじゃミーは不法すぎる不法労働の末に過労死する未来が見えました。見えてしまいました。

 搾取されて死ぬのだけはゴメンですー。

 なので、この世からオサラバですよ。

 

「こんなこともあろーかとー。いざ尋常に! 爆発するは今! 起爆装置、スイッチON!」

 

「あ?」

 

「わが生涯に一片の悔いなしーーーーー!」

 

「はぁ???」

 

 

 こんなこともあろうかとー。超爆弾をゲットしておいて本当によかった、と思いながらミーは起爆装置のスイッチを入れました。コレでこの世とはさよならのどっかーんですよ。

 死体が残るなんて5流の術士の仕業です。一流の術士は死体を遺しません。ミーはスペシャルなのでベル先輩も巻き込みます。

 衝撃に備えようと目を閉じます。さらば人生。悪くない人生だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……死なない。

 

 

 死なない。

 

 なぜ、死なない。

 

 

 

 

 

 見ると目の前で偽王子がひらひらとミーが脱ぎ捨てたカエルの被り物を振っていました。

 

 

 ……その中には……。

 

 

 

 

 

 

「お前の考えてることなんて王子にはお見通しだし」

 

 

 

 

「ぬあーーーーー!」

 

 

 どうやらミーの最後の切り札は解除されていたようです。

 あー、もう、泣きてー……やってらんねー……。

 

 

 

「ああああ……これが……絶望……」

 

「諦めろクソ蛙。マーモン一人じゃ過労死するっつーの」

 

「人のことなんだと思ってんですかねー」

 

 

 はいはい、どーせミーは予備ですよー。

 本当の霧の守護者はマーモンさんですよ。分かってますよ。

 それにミーだってそーゆースタンスです。何時消えたっていいや、って感じで割り切ってる、ドライな乾いたかっぴかぴの関係だったはずです。

 だから。

 ……だから。

 

 

 黙って音もなく、霧みたいに消えようと思ったのに。

 

 

 

「はぁ? 何言ってんだお前?」

 

 

 

 ベル先輩がミーに何か言いました。

 ミーはもう帰りたいような帰りたくないような、何かそんな気持ちでいっぱいです。

 もう何か頭がぐちゃぐちゃです。

 

 いえる訳ないだろ、本当は行きたくないなんて。

 ……あんな暗殺部隊が、すごく居心地がいいんだ、なんて。

 

 本当はずっと、霧の守護者でいたいなんて。

 

 

 格好悪くて言えませんよ。それに、ミーはナンダカンダで師匠を裏切られませんー。

 ……だから、こっそりひっそり逃げよう、って思ってたのに。

 このイカレ王子様のせいで台無しです。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿王子ですー。

 

 

 

「そんなん決まってんだろ」

 

 

 

 ベル先輩が何か言います。

 目元は相変わらず絶対切らない前髪のせいで見えません。

 

 

 

 

 

「オメーは王子のナイフの的だから」

 

 

 

 

 

 ……やっぱり、酷い人権侵害だなーと思いました。

 マトってなんなんですかねー? やってられませんねー。

 

 

 それがミーの存在理由なんて、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





レゾンデートル:フランス語で『存在理由』
        他者との優劣比較で認められる『存在価値』に対し、
        自己完結した価値を意味する。




フランはフランス人なのでフランス語タイトルにしてみました。
ウンバボ族はどうやら霧属性キャラが好きみたいです。リボーンで好きなキャラトップ5を考えてみたら、3人が霧属性でした。


キャラソンを真面目に聞いた結果がこんな感じです。もうちょい時間あったらもう少し考察できたかもです(言い訳)

フランは普段淡々としつつ飄々としつつもどっかで寂しさみたいなものを抱えていて、で誰かがソレを丸ごと受け止めてくれることを望んでるんじゃないかなーみたいな印象。
ひたすら逃げて逃げて逃げまくって、それでも追いかけてきて欲しい、みたいな面倒くさそーなタイプだから平気で危なそうな橋もガンガン渡って行きそうだなーと思います。
あと、カエルの被り物が嫌(多分被り物自体は嫌じゃない)なのは「マーモンの代わり」が嫌なのかな~と思いました。ガキ時代は喜んでアッポー被ってるし。



というキャラソンの妄想の産物がこちらです。
リボーンのキャラソンは本当レベル高いと思います。特にベルの『Bloody prince』と桔梗さんの『狂気の花』はキャラソンのレベル超えてねえかな、と思いました。
ところでどうして九代目と幻騎士のキャラソンはないんですかね?
ドカス馬のキャラソン作る位なら九代目の歌出せばいいのに……。




 

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