リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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雨戦後、スクアーロ入院中の出来事。




※かっこいいディーノが好き! という人は絶対読んじゃいけません。






当て馬シリーズ
il puledro 【XS←D】


 ここに一人のロマーリオを用意する。

 

 ロマーリオというのは有力イタリアンマフィアな『キャッバローネ・ファミリー』のナンバーツーであり、まだ年若いドン・キャッバローネの右腕であり、今年で38歳のブラジル人だ。

 陽気なおっさんであり、九代目ドン・キャッバローネに拾われて以来のマフィア歴を誇る。

 狙撃から緊急救命までこなす超万能な、まさに一家(ファミリー的な意味で)に一人いてほしいレベルのマフィア幹部である。

 

 ……が、そんなロマーリオにも対応できない事態というのは発生するのだ。

 

 

「……おいボス……」

 

「スク!? あー……なんだロマーリオか~~」

 

 

 キャッバローネのボス、今年で22歳になるハズのディーノが病院のベッドに突っ伏していた。

 

 ちなみに、ディーノ自身怪我はしていない。

 一切していない。

 確かに『部下の前じゃないと力を発揮できない体質』というカス……もといへなちょこ体質ではあるからこそ、日ごろから切り傷擦り傷打ち身、といった謎の生傷が絶えない青年ではあるが、今回は、戦闘行為に一切参加していないためか傷はおっていない。

 

 ……おってない……ハズ……である。

 

 

「……ボス、なにしてんだ」

 

「何って……」

 

 真っ白なシーツに顔をうずめていたディーノが恍惚とした表情のまま、どこか心ここにあらず、といった調子だ。頬も薄く染まっているのが見える。

 外見だけならキラキラ輝く金髪に同じ色の目に、甘く整った顔立ち……とまぁ立派なロミオ様ではあるのだ。

 実際、若くしてキャッバローネのボスであり、財力も実力もあり、更にはこの外見なら引く手はあまたではある。是非愛人になりたい! だのドンナになりたい! だのさらには一夜でいいから! と女からはしょっちゅう『その手』のお誘いが絶えない。

 

 だが、そんな一流のスケコマシ、別名イタリアーノに育ったハズの我らがお坊ちゃんは、未だに中学生だったころの初恋を引きづり続けている。

 

 

 中学生の時から好きだった。

 だが当時は実力の差がありすぎた。だから見向きもされなかった。

 悶々とした片思いを続けているうちに、相手は別の男に惚れてしまった。

 やがて力を付け、見合うだけの実力を手に入れた。さぁ告白しにいこう! ……としたら今度は片思いの相手が失踪。同時にそいつが惚れた男というのも失踪。

 だが中学生にしょんぼりしている暇はない。

 同時期に父親が死んだこともありそこから長年の片思いは続くのだった……。

 

 

 

 なぁ、ロマーリオ、とディーノはうっとり、とつぶやく。

 

 

「……ここにスクアーロが居たんだぜ……」

 

「……あー……今精密検査をうけてるはずだぜーー」

 

「ここに!! スクアーロのぬくもりが!!」

 

「……」

 

 

 そう、跳ね馬ディーノは銀色の鮫にずーーーーーーっと片思いを続けていた。

 

 

 だが周知のとおり、スクアーロはザンザスに惚れている。

 あんなDV野郎のどこがいいんだ?と周囲が首をかしげるほどに惚れこんでいる。

 毎回毎回ひどい目にあっているのにも関わらずベタベタのベタ惚れである。

 殴られても蹴られてもセクハラさせてもR18でも何されても耐える。

 無駄に耐久力が高いから、死なない。

 しかも何気ザンザスもザンザスで「あ、これ絶対デキてる」というのが見てわかる。ただ、素直に思いを伝えるのは成層圏なみにプライドが高いザンザスにはできない。

 そしてその好意を分かっていないのはスクアーロ本人だけである。

 見た目だけなら男にしておくのが本当にもったいないほどの美人ではあるが、いかんせんお頭の出来具合がかなり残念な感じなのだ。だからスクアーロが自分が片思いしているだけだと思い込んでいる。そして、ザンザスはザンザスで常人より優れた頭脳を持っているからソレが分かり、腹を立てている毎日だ。

 

 ……という、お互い素直になれないだけのバカップルの甘~~~いイチャコラを横で見てきたはずのディーノは、さすがに、すこし、おかしくなっていた。

 

 

 

「あぁスクアーロの臭いがする……シャンプー……変えたんだな…………」

 

 

 おい……なんでテメェ……ヴァリアー副官のシャンプーまで把握してんだよ……とロマーリオは思った。

 

 

「……は! こ、これは……!」

 

「おいどうしたボス」

 

 

 

「……スクアーロの髪の毛…………!!」

 

 

 ディーノの視線の先には長い艶やかな銀糸が一筋。

 あー、寝たっきりだったからなーー。髪の毛の一本や二本そりゃ抜けるわなー。とロマーリオは思いながらも。

 

 手はナースコールにしっかりと伸びていた。

 

 

 

 

 

「どうしました!?」

「大丈夫ですか!!??」

 

 すぐさまナースステーションから看護師二名がかけつける。

 この病院は優秀だ。

 そして、ナース二人はベッドの上に突っ伏す恍惚とキラキラしたイケメンを見ている。

 そしてその指先に銀色の何かが握られているのを見て、さっそく行動する。

 

 

「急いで! 緊急カートを!!」

「鎮静剤持ってきて!!」

「待て! オレはどこも病気じゃない!!」

「はい落ち着いてくださいねーー」

「打ちます!!」

「待っ……せ、せめて一口!! 先っちょだけだからーー!」

「食べちゃいけませんッ! 早く!」

 

 

 

 

 

 

「……九代目……申し訳ありません……」

 

 辞表、出そうかなぁ……と思う、ロマーリオだった……。

 

 

 




ディーノは幻チャンみたいに病んでる訳じゃない。

ただ時々ストレスでぶっ壊れるだけ。

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