リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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完全に勢いだけで書いたんで後日修正版を出すかもです。


傲慢の記憶 (前)

 俺のご主人様は冗談交じりに『ティランノ』なんて呼ばれてた。

 人嫌いの厭世家の王様みたいだと。

 

 

 ココは南イタリア、前に見える海がティレニア海。

 島の名物はレモン。

 あとは何にもないイナカだ。俺とボスはこのド田舎の島、崖の上の屋敷でもう3年くらい前から住んでる。

 合う人間は通いの野菜とか魚とか持ってきてくれる業者が何人か。オッサンたちは好きだ。「よう、また美人になったな!」とかアホみてぇな冗談をよく飛ばす。んで、奥さんたちは魚や果物のうめぇ料理を教えてくれる。

 のんびりしてて、退屈で、どこもかしこも不景気なのに明るくて、良くも悪くもあったかい場所だった。

 

 俺の仕事は家政婦ってヤツ。

 ボスと一緒に住んでて、ボスの散らかした後を綺麗にして、洗濯して、屋敷を掃除して、料理を作って、ボスの面倒を見て一日が終わってる。屋敷っつてもそこまでデカいもんじゃない。二人だけで過ごすにはデカすぎるような気もするけど、ボスさんには来客がものすごく多いのだ。来客がヤベェって分かってる時には近所の女やもめなオバサンに助けてくれ!ってヘルプコールをする。すぐ来てくれるからすごく助かる。

 

 なんでもウチのボスさんは昔はスゲェ人だったらしい。

 大きな声じゃ言えねえけど、どうも雰囲気とか見ると裏社会の人間だったと思う。

 なんでこんな人が田舎で隠遁してんだろうなって思った。ボスの年齢はよく知らないが、多分まだ四十とかその辺だろう。年なんか関係ねぇけど。だって、ボスはすげぇカッコいい。

 

 背が高い。無口で無愛想だけど、それが似合う。

 目はよく見ると赤い。南の島の日光に弱いらしくよくサングラスなんかかけてる。でも「ますますソレっぽく見える」って言うと気にするから言わねぇ。

 肌は濃い色で、髪は濡れ羽色。顔や体には火傷の跡みてぇな傷跡が沢山ついている。

 あと両足に大きな傷跡がある。たまに痛んでちゃんと歩けなくなるほど酷い。一体何をどうすればこんな傷ができるのか俺には分からなかった。

 滅多に笑わねぇし、よく怒るけど、俺にはすごく優しくしてくれる…………多分。

 何となく、年の割にはちょっと疲れてる感じがするような人だった。

 

 来客っていうのが、また凄い。個性的なヤツばっかり来る。

 皆ボスとか、ドン・ヴァリアーとかって呼んでるからボスはまだ『隠遁』してる訳じゃねぇんだなって思った。たまに畑とか作ってレモンとかトマトとか育ててるけど、それ以外は忙しそうに書類を書いたり整理したり、はたまたパソコンでネットにつないで何か指示をしているような感じ。仕事してるんだなぁ、って感じだ。

 ちなみにボスがネットをつないだせいで、この近くは電波がいいから、よく近くのガキがスマホを持ってくる。それを撃退するのは俺の仕事だ。

 

 来客は主に2種類になるらしい。

 

 

 

 

 1つ目は何かスゲェ個性的なメンツだ。

 ムッツリスケベっぽいデカイ大男に、派手な格好の頭3色なグラサンのオカマ。

 自称王子と、いくつかわかんないガキ。

 皆ボスのことを「ボス」って呼ぶ。

 ボスもこいつらには気を許してるみたいだった。

 きっと昔一緒に仕事でもしてたんだろう。

 最初の頃は王子とか言うアレなヤツとかムッツリ臭いデケェ男にスゲェ目で見られたけど、何回か見慣れるうちにやめたみたいだった。

 オカマは俺に優しかった。「ルッスって呼んで」っていうからそう呼ぶことにした。

 たまに一緒に料理作ったり、色々やってくれたりする。

 ルッスはボスの好きなコーヒーの銘柄や温度をよく知っていた。淹れ方なんかも教えてくれた。

 

「アンタ、前の家政婦だったのかぁ?」

 

 って聞くと

 

「違うわ」

「ただ……ボスが、前と好みが変わってなくって安心したの」

 

 

 どこか、寂しそうだった。

 

 こいつらが来訪する機関は一週間かそれ以下で、色々な話をしていた。

 多分仕事の話なんだろう。何故かと言うと何語か分からない言葉を使って話しているからだ。

 ボスは頭がいい。だって何か国語も喋れる。俺の自慢だ。

 

 

 

 

 2つ目は普通の奴らに見えるし、決まったメンツが来るわけじゃないから普通なんだろう。

 ラフな格好で着て、礼儀正しくお辞儀する。

 こーゆー奴らとはあんまり話しちゃいけないって、俺はボスに言われてる。

 だからコーヒーを出したらすぐに出ていく。

 大抵何人もで来るから、近所のおばさんにコールして、任せて、顔も出さない時もある。

 何でもあの人は昔大きなお屋敷で家政婦長なんかをやっていたらしいのだ。こうゆう時は俺よりずっとそれっぽく振る舞えるんから任せることにする。

 ……でも、そろそろ三年目だしな。とも思った、けど。

 

 

 

 

 

 その日の来客はそのどっちにもならないみたいだった。

 

 こんな南の島に、かっちりした黒スーツを着ていた。

 イキナリの来客だったから俺はビビった。こんな突然来る客なんか居なかった。

 電話しねぇと、電話、早く。

 ゲストルーム整えて、大急ぎで買い出し行って……違う、その前に早くボスを呼ばないと! とかアホなことを考えている俺にそのお客は苦笑して、綺麗なイタリア語で言った。

 

「あ、いいですよ。俺はすぐ帰りますから。ザンザスは居ますか?」

 

「え?」

 

 聞き返した時、お客の顔色がさっと変わった。

 

「……君」

「は、はい」

「名前は?」

「……え?」

「君は、ここで何してるんだ? いつからココに居るの?? なんで……なんでこんな……」

「……ちょ、待って」

「ザンザスはどこ? 話したいんだ、今すぐ!」

「…………あなた……一体誰なんですか?」

「俺は沢田綱吉、十代目、ドン・ボンゴレです。」

「ボン……ゴレ……?」

 

 知ってる。

 誰もが知ってる、イタリア最大最強のマフィアの名前だ。

 

「な、なんで? ボスに、なんでボンゴレが……?」

 

 俺はすっかりパニックになっていた。

 なんで? ボンゴレが?

 ボスは確かに後ろ暗い仕事をしていたと思う。だけど、ボンゴレが目をつけるほどだったのか?と。

 

 ……こともあろうに、ボンゴレがボスを殺しに来たんじゃないか、と。

 

 

 

「……ザンザスから何も聞いてないの?」

「……え? 何もって……?」

「…………」

 

 何を言ってるんだろう、この人。

 訳が分からなかった。

 分からないから、怖かった。

 

 

 

 

「……何してる、沢田綱吉」

 

 

 

 






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