東方信頼譚   作:サファール

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 さあ、遂に戦争勃発です!!

 ここから決戦が始まります。出来るだけ上手く書こうと思って頑張りましたが、どこかおかしかったら遠慮なくご指摘ください!
 それと、各班のニックネームは適当なので気にしないでくださいw

 P.S.演説って難しいですね。
    ↑意味不明


 


12話.終焉の日々と来たる決戦

 あの話があってから丁度110年。

 

 それまでにあった事を纏めよう。

 

 

 まず、僕が半年かけて育て上げた特隊のみんなは、周辺調査の時の護衛や妖怪掃討作戦の時も全力を尽くして戦い、見事今日まで死者はゼロ人で成功している。きっとこれからも『不死隊』の二つ名は健在だろう。

 僕がわざと蘭の管轄外の妖怪を狙っていたので大した奴がいなかったのもあるが、それを差し引いても僕の部隊は強かった。

 妖怪の数々の奇襲や囮作戦を全て見抜き、裏を取り、殲滅する様は、僕でも賞賛したくなるほどの連携力だった。

 ロケットで飛び立つというのに百年余りを調査した理由は、地球というものをギリギリまで調べるためだった。これから月で一生過ごすにあたって、月というのには、生命体や文明、更には空気さえもない。はっきりいって、不毛の土地だ。そこで出来るだけの情報と技術を手に入れておこうという算段だろう。

 

 

 次に、永琳についてだが…彼女との関係は、良好……とだけ言っておこう。

 いつかの夜にカミングアウトされる形でされた告白に、僕はまだ返事をしていなかった。相手は、僕が寝ていると思ってあんな事を言ったのだから返事をする必要など無いのだが、それでも僕なりのケジメとして、彼女に直接言わなくても、自分の考えを纏めておこうと思ったのだ。

 そんな僕の苦悩はよそに、永琳は僕に対する好意を(あらわ)にしてきた。もう動揺することは無くなったが、それでも心臓に悪いので、毎回顔を赤くしないように必死になっている。

 ロケットの設計も終わったらしく、僕は研究室に入る事を許された。結構な期間掃除されていなかった室内は、それはもう酷い有り様だった。永琳は申し訳なさそうにモジモジしながら、「掃除…お願い出来る?」と言ってきた。それに問答無用で説教して、渋々掃除したのは何十年も前の話。

 

 

 防衛軍関係の事だが、他部隊からの嫌味やイジメは無くなった。僕達が彼らよりも目覚しい成績を上げ、都市に貢献しているからだ。厄介事を全て引き受けてくれる(てい)のいいなんでも屋のような扱いなので、彼らもイジメる気が無くなったのだろう。

 自分達はただ施設で訓練をして、給料日になったら税金から給料を搾取する。何とも虫のいい話だ。

 将軍からの圧力も綺麗さっぱり消え去った。気持ち悪いほどに手の平を返されて、余計に気持ち悪くなった。周りが嘘ばかりで嘔吐が出る。

 

 

 

 

 そして、気になるのは地這いの妖怪こと地代蘭の事だろう。

 

 彼女は、まだ殺せてない。というか、殺せない(・・・・)

 

 僕は彼女と、今日まで二ヶ月おきに闘ってきた。それで約百年経っているのだから、回数でいうと、六百回は越している。そんな回数闘って、どちらも殺されていないのは不思議な事だろう。当然周りも不審に思う。何故まだ決着がついていないのかと。

 それに関しては上手く誤魔化した。ツクヨミ様に言われた通り、話術は得意なのかもしれないな。

 

 最初に蘭と闘った時、僕は借りを返すために彼女を殺さなかった。それを、彼女は勝手に借りだと言い張った。次に自分が勝った時は、借りを返してあげると。

 

 勿論そんな事は信じなかった。だが、殺すつもりで次を挑んだ時、僕はまた、彼女より先に霊力を使い、なんと負けてしまった。そして驚くことに、彼女は僕を見逃したのだ。

 僕はその時、蘭と同じ質問をした。何故僕を殺さなかったのか…と。彼女はこう言って笑った。「だって、修司も同じ事をしてくれたから」。

 

 ついでに借りも返したしね。彼女の言葉に、僕は心を揺らされた。言葉のみを取れば、それは普通の恩返しと同義なのだが、僕と蘭とでは関係がまず違う。

 僕と蘭は人間と妖怪。二種族は互いに対立し、殺し合うことでその関係が成り立っている。妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を虐殺する。これ即ち、交われば必ずどちらかが死ななければならないという事。

 僕が情をかけたのは、ただ単に僕の酔狂による気まぐれによる部分が多い。寧ろそれが殆どと言っても過言ではない。僕が気絶した時に殺さない程頭のおかしい妖怪ならば、賭けても(・・・・)いいと思ったのだ。

 

 では、賭けに勝ったのか。

 

(…………まだ勝ってない)

 

 というか、この賭けには終わりがない。決着は永遠につかないだろう。僕は“そういう奴”だから、こんな無謀で決まり切った出来レースを自分に吹っかけたのだ。

 この賭けに決着がつく時があるとすれば、それは、僕がロケットでおさらばする時くらいだろうか。

 

 

 

 

 二回目に蘭に倒された時、彼女は借りを返すと言って僕を助けた。僕はその時に“可能性”を感じて、一回目の蘭と同じ様に、「僕が勝手に借りだと思うだけだ」と言って、次に僕が勝った時に蘭を見逃す事にした。これでは堂々巡りじゃないかと蘭は怒ったが、蘭も人の事は言えないので、簡単に説き伏せた。

 そして三回目。僕は蘭に先に妖力を使わせ、見事倒した。僕は宣言通りに彼女を見逃し、彼女はかなり悔しがった。

 

『私は借りだと思ってるから!』

 彼女は、三回目の時にそう言った。僕はそれを聞いてから帰路につき、二ヶ月後に四回目に臨んだ。

 僕は“予測通り”彼女に負け、今度は僕が見逃された。そして僕は言う。

『これは僕にとって借りだね』

 

 

 

 

 もう分かると思うが、僕達は“互いを生かし合っている”。

 しかし、これは本当に危ない均衡の上に成り立っている。

 今までの六百回程の戦闘の全てが、ほぼ同時に倒れているのだ。倒れるまでのほんの少しの差で勝敗を分けており、更にギリギリなことに、先に倒れて負ける側の全てが、“貸しを持っている側”だった。そして、負ける側になる条件は、“霊力又は妖力を使う事”だった。毎回先に使った方が負けている。

 毎回借りがある方が僅差で勝利し、毎回負けた方が、情けをかけてくれたことを借りだと言って次回に向けて努力する。そして借りを返すために次戦を勝利し、貸しを作るのだ。

 勝って負けて勝って負けて、僕達は互いに研鑽を積み、技を極め、友達というものの温かさを肌に感じながら、命懸けで綱渡りをするのだ。

 

 だが、当人達は、そんな約束なんてしていない。そもそも、生かし合っていると言ったが、結果的にそうなっているだけであって、修司達は毎回相手を殺すつもりで刃を振るっている。だから、借りが無い状態────つまり、前回勝った状態で次も勝つと、負けた方は殺されてしまう。それを彼らは理解しているし、それを分かってて闘う。

 しかし結果は毎回勝ち負けを往復しており、どちらも相手を殺せていない。彼らはその拮抗した状態を楽しんでおり、またさっさと終わって欲しいと思ってもいる。

 妖怪との友達というのは、そういったドライなものなのだ。人間が作る友達とは全く意味が違う。死ねばそれまでで、後悔なんてしない。そこまでの奴だった、と片付けられるのだ。

 

 

 蘭は、今のところ僕にとって一番の“候補”だ。今までは永琳だったが、いつからか蘭が一番に変わっていた。

 彼女は妖怪で、人間とは決して相容れない存在だ。そして殺し合う仲であり、命を賭け合う関係でもあった。

 生き物にとって死とは等しいものであり、その者の本質を引き出す要素でもある。永琳との関係には“絶対的な要素”が欠けていたので、どうしても信じることが出来なかったが、蘭は違った。

 彼女と僕との間には命がある。命とは絶対に信用する事の出来るものだ。それがある限り、彼女は信用するに値する存在でいられる。

 

 僕が信用するボーダーの一つが命である。僕が信用するには、これくらい対価が大きくなければならない。優しく言えば用心深い。酷く言えば、根本から他を信用する事を恐れた臆病者だ。

 

 僕の心も、もう手遅れなほどに闇に侵食されてしまった。だが、まだ完全に侵されたわけではない。まだ救う手立てがある筈だ。文献でも、永琳でも、ツクヨミ様でも、雄也でも、蘭でも、何でもいいから、僕を救い出す方法を探さねば、いずれ僕は暴走してしまうだろう。それがいつであれ、きっと必然の出来事なのは確かだ。

 

 焦燥に駆られながら、僕は今日も蘭と殺し合う(遊ぶ)ために山を登る。

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの空を仰ぎながら、僕達はまた湖畔で大の字で寝転がった。案の定腕枕を要求してきた蘭を軽くあしらいながら、僕は静かなこの時間を過ごす。

 緩んだ顔をして僕にひっついてきた蘭を見やり、言葉を掛ける。

 

「どうして毎回こんな事をするんだい?」

「んにゃ?これの事?」

 

蘭が体を揺らして尋ねてくる。僕がそうだと言うと、彼女は躊躇うような顔をして、顔を僕から背けた。

 

「どうした?」

「……う〜ん」

 

考え込むような声を出しているが、答えに迷っているような声ではないので、回答するか迷っているのだと理解する。

 

「答えたくないの?」

「う〜ん。…………あ、そうだ!」

 

 バッと顔をこちらに向け、キラキラした目で僕を見つめてきた。

 

「私が死んだらさ、私のお願いを聞いてよ!」

「え?お願い?」

「うん!」

 

 露骨な話題変換だが、まぁさして気にはしていないので、そのままにしておこう。

 ここで普通に死ぬ事を条件にして、それを軽く受け入れているのが、妖怪と友達になるという事だ。人間にとって物騒な会話も、妖怪には日常の中のものでしかない。

 

「…まぁ、叶えられる範囲ならね」

「え〜!そこは何でもいいよって言ってよ!男でしょ!」

「それは無理」

 

 もし心中してと言われたらたまったもんじゃない。雄也みたいに一度言ったことは曲げない主義なわけではないが、それでも男のプライドというものがある。下手な事は言うもんじゃない。

 

「む〜。でも、叶えられる範囲ならいいんだね?」

「うっ…うん…」

「よっしゃ!じゃあ問題無いね」

 

問題無いという事は、僕でも簡単に叶えられる願いなのだろうか。もしそうなのであれば、それはそれで有り難い。尤も、そんな事が有り得るのかと言われたら、可能性は無きに等しいと言うが…。

 

 

 

 

「────そろそろ帰ったら?また永琳さんって人間に叱られるよ?」

「そうだね。それじゃあ、帰ろうかな」

 

戦闘前後の会話で、互いの身の上などを話しているので、永琳の事や、都市の摩訶不思議な諸々も知っている。僕が彼女について知っている事は、大地から生まれた事(だから二つ名が地這いの妖怪なのだ)と、普段はここで独りぼっちで過ごしている事ぐらいだ。彼女自身、話せる話題が殆ど無く、とても哀しそうな顔をしていたのを憶えている。

 

 

「……修司っ!!」

 

 

 僕が森を走ろうと足に力を込めたところで、唐突に後ろから声が掛かった。振り返ると、そこにはとびっきりの()のような笑顔を携えた少女がいた。

 

「────次は、そっちに行くからね!」

 

「っ……あぁ、待ってるよ!」

 

 この言葉の意味する事を、二人は理解しながらも、お互いに最高の笑顔で別れた。

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 蘭が都市に攻めてきた。

 妖怪の数は約二千。殆どが中級妖怪で大妖怪はその中でも少ない。これは勝算のある戦争になるだろう。

 

 ツクヨミ様が予想した通り、妖怪が大群を成して都市に乗り込んできた。レーダーで調べたところ、防壁に到着するまでの時間は残り一時間。あまり時間は残されていないので、早速作戦に移る必要がある。

 

 二ヶ月が経った今日、僕は短槍を背中に背負って、最高倍率のスコープを取り付けたスナイパーライフル(エナジーウェポン)を持ち、四基あるロケットの目の前に立っていた。

 体調は万全。マガジンも装填完了。作戦も50パターン程用意した。都市を好きにしていいという許可ももらったし、AIの配備も完璧だ。

 僕の後ろには、『不死隊』こと特隊のみんな達。ロケットの搭乗口にはとてつもなく長い列が並び、僕の眼前には防衛軍の将軍がいる。

 

「第三十一番特別任務部隊、今回の任務は我らの命運を左右する非常に重要な任務だ。心してかかるように」

「了解です、将軍。それでは、行って参ります」

 

「敬礼!」ビシッ!

 

 背後の隊員達も揃って敬礼をし、将軍はこれに頷く。そして踵を返して、防衛軍用のロケットに向かっていった。あれは僕達が乗るために最後に発射するものだ。

 

 

 

 

 僕がその後ろ姿を見ていると、別のロケットから永琳が駆けてくるのが見えた。あれは上役達専用のロケットで、一番最初に飛ぶやつだ。

 

「修司!」

「永琳!なんでロケットから出てきたんだ?」

「なんでって、決まってるでしょ!」

 

 大声で捲し立てる永琳に振り向く者はいない。それほどみんなロケットに乗りたいのだ。今僕達を見ている人達と言えば、搭乗口にいるツクヨミ様と後ろの雄也達だけだろう。

 

「あなた、戦いに行くって本当なの!?」

「本当も何も、僕がいない特隊なんて穂先の無い槍と一緒だよ」

「でも、死んじゃうかも知れないのよ!」

「死ぬなんて、兵士なら当たり前さ。永琳、僕の後ろに居る戦士達を見てご覧」

「…?」

 

 僕が後ろに親指を立てて指し、永琳は顔を傾けてその先を見た。そこには、いつもとはまるで違う、戦士の顔をした『不死隊』が彼女のキョトンとした双眸をじっと見据えていた。

 

「あっ………」

「彼らもね、僕みたいに待たせている人がいるんだよ。それも、出身不明で記憶喪失な居候なんかじゃなくて、もっと大切な人がね」

 

 僕は振り返って彼らの真剣な眼差しを真っ向から受け止め、それに応えるように目つきを鋭くする。

 僕は、託されている。彼らをこの戦場から救って、もう一度家族や大切な人に会わせることが出来るだけの意志があるのかを。

 ならば僕はこれに誠心誠意全力を尽くして応えよう。

 

「皆!今日僕達は、何の為に闘うのかを見失ってはならない!」

 

 堂々と隊長である責任と威厳を持って仲間に向き合う。

 

「これまでの闘いとは違い、今回は懸かっているものの重さがまるで違う!」

 

 向けられる視線を一つ一つ真摯に浴びて、それぞれの意志を感じ取る。

 

「僕達は!伴侶の為、子供の為、好いている人の為、恩がある人の為、護りたいあの人の為────我ら人類の為に、今日という日を生き残り、穿(うが)つべき敵を蹂躙(じゅうりん)し、果たすべき目的を達する為に武器を取り、自らの身体を戦地へと赴かせるのだ!」

 

 戦士達からフツフツと湧き上がるものを感じて、僕自身も高揚する。それに合わせて、鼓舞する言葉は加速した。

 

「たとえそこで命尽き果て、弔いも無く敵に踏みつけられようとも、我らは決して心を折ってはならない!“ここ”はいついかなる時であろうとも、誰かに屈してはならないのだ!」

 

 自分の胸に手を拳を打ち付け、声を張り上げて宣言する。

 

「僕達は孤独ではない!共に日々を過ごし、死線を彷徨った仲間達が居る!目を開け!腕を振るえ!脚を躍動させろ!見据えるは僕達の勝利!人類の栄光の光だ!!」

 

「「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 突き上げた拳とタイミングを同じくして、戦士達も拳を天に突き刺す。士気は最高潮。隊長としては完璧だ。

 だが、これは残念な事に、僕の本当の言葉ではない。ただ単にカリスマのある人達の精神を集めて言葉を紡いだだけの、傀儡(くぐつ)の戯れ言だ。

 だけど、僕には責任がある。みんなを生きて帰すという責任が。それがある限り、僕は化けの皮を喜んで被ろう。それがたとえ、身を滅ぼす事になろうとも…。

 

「永琳」

 

 雄也達が雄叫びを上げている中、僕は永琳に振り向いて言った。

 

「これが僕の答えさ。分かってくれたかい?」

「……修司…私…実は、あなたの事が────」

 

 その先は言わせない。

 僕は永琳の口を人差し指で塞ぎ、乾いた心で精一杯の笑顔を見せた。

 

「永琳、今は何も言わなくていい。僕がまた、君の前に現れた時に言ってくれ」

「修司……」

 

 言いかけて、永琳は口を噤んだ。

 

「…ううん、何でもない。────それじゃあ、待ってるから」

「本物の神様がいるけど、祈っててくれ」

「あら、じゃあ私はロケットの中でツクヨミ様に跪くことにするわ」

 

 冗談めかして僕が言うと、永琳も冗談で返してきた。それがいつも以上に可笑しくて、僕達は同時に吹き出した。

 

 

 

 

 永琳が搭乗口に向かったのを確認してから、僕は振り返って集合をかけた。

 

「みんな、今回の任務はこれまでの護衛や掃討とはわけが違う。住民全ての命がかかった戦いだ。局地戦ではなく、本物の戦争はこれが初めてたが、そんなのは相手も同じ。僕達の実力を見せつけてやろう!!」

「「「「「はいっ!白城部隊長!」」」」」

 

 三つのロケットを先に飛ばして、足止めをしている僕達が最後の四つ目に乗って脱出する。今はまだ住民を移しているので、僕達が乗るまでの時間は低く見積もって約五時間。まだ一時間の準備時間があるので、実質四時間だ。

 蘭は二ヶ月おきにに宣言した通り、本当に攻めてきた。それも、二千の大群を従えて。恐らくあれは僕にも隠していた主力部隊の全てだろう。あれを殲滅、又は足止めしていれば、僕達の勝ちだ。終わりのある耐久レースほど楽なものはない。

 

「よし、まずは作戦を言う。何度も説明したから頭に入っていると思うけど、今回の作戦はそれぞれの手際が重要になってくる。しっかりと迅速に任務を遂行してくれ。また、臨時で僕から指示を出す事があるけど、その時はそれに従ってくれ」

「いよいよだな」

 

 雄也が一歩前に出て言った。彼らには密かに都市を使った捨て身の防衛戦をする事を伝えていたので、作戦などは知っている。これで素早く行動出来るだろう。

 

「あぁ、これが僕達の大一番だ。気を引き締めていこう」

「「「「「おおぉぉぉぉ!!」」」」」

 

 あらかじめ、いくつかの仕掛けは用意してある。後はそれをどのタイミングで使用するかによって、僕達が一人で何人倒さなければならないかが変わるだろう。

 

「まずは工作班。ホークは都市中央の建物から門に向かって真っ直ぐ、火力発電所で使用していた青色の液体を撒いてくれ。これは油の強化版のようなものだ。出来るだけ幅広く撒いてくれ」

「ホーク了解」

 

「次に、AI班イーグル。君達には門周辺の防壁に設置した爆弾の起爆と、都市の左右にAI部隊を配置してくれ。詳しい場所は無線で指示する」

「イーグル了解」

 

「そして狙撃班、αとβは、中央のでかい建物の後ろの建物の屋上で待機。ジップラインを地面に伸ばすのを忘れないでね」

「α了解」

「β了解」

 

「残りの狙撃班は僕と一緒に中央の建物を登って狙撃。これと数人ランチャーを持った人も数人来て」

「了解」

「「「「「俺達が行きます」」」」」

 

「爆撃班と歩兵部隊はその建物の下で待機。作戦最後の正面衝突に備えて、銃と武器の調子をチェックしておいて」

「「「「「了解」」」」」

 

 ふぅ…。ここまで指示を出すのも一苦労だ。AI班に防壁の守備を堅めさせ、爆弾の設置も遠隔操作でやっておいた。工作班は、永琳が開発したあの青色の液体をたっぷりと積んだ大型トラックを運転して作戦エリアに向かった。狙撃班はロケットを守るように建物の屋上に陣取り、残りはその下で待機している。

 僕はツクヨミ様がいた都市中央の巨大な建物の一階に爆弾をこれでもかと設置し、そのまま部下を連れてエレベーターで丁度良い高さまで登った。

 

 構図としては、蘭がいた山から真っ直ぐこちらに進軍してきており、門方面から攻めてくる。そして門と中央建物の間には液体をばらまいておいて、その左右にAI戦闘兵器を伏兵として配置。敵は真っ直ぐ進軍してくると思うので、中央建物の後ろにあるロケットを防衛するために、狙撃班と僕達を配置。作戦が終わった工作班などは全員歩兵部隊と合流させて、最後の決戦に備えさせる、といった感じだ。

 これで今出来ることはやった。後はこれがどう転ぶかだ。

 

 住民の列はさっきより短くなったが、まだまだ時間がかかるようだ。他のロケットもまだ準備が出来ていないのか、全く発射する気配を見せない。

 

 

ゴゴゴゴゴ……

 

「隊長!来ました!」

 

 恐ろしい地鳴りと共に、僕達の死闘はスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 まずは、飛行型ドローンで上空から門を見る。すると、森の中が気持ち悪いほど蠢いており、これが妖怪達の頭であることに気付いた。情報通り、数は二千くらい。さて、初撃で百は削れるか……。

 ドローンの操作を行い、妖怪が門に到達する瞬間を待つ。

 

「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 妖怪達が森から姿を現した。人型のものが殆どだが、ちらほら動物の形をした妖怪もいる。百鬼夜行を二十倍にした光景を目の当たりにして、僕は若干ビビった。

 妖怪が鬨(とき)の声を上げて門に突撃していく。僕達が訓練に使っていた平地を踏みしめて、防壁目掛けて闘牛ばりの突進を見せる。どうやら物量で破壊する算段のようだ。

 防壁に設置された100余りのタレットがレーザーを手当たり次第に乱射して、近付いて来る妖怪を片っ端から殺していく。だがそれでも妖怪の進行は止まらず、タレットに気付いた妖怪の妖力で作られた結界によって、レーザーの大半は防がれてしまった。

 妖怪がタレット以外の攻撃を仕掛けてこないのを理解すると、そのままの勢いで門に突進していった。

 

 だが残念。その壁はもとより破壊する予定だ。

 

「3…2…1……爆破!」

 

 僕が無線で工作班に指示すると、工作班はぴったりのタイミングでスイッチを押した。壁にペタペタと貼られていた爆弾が次々と爆発していき、壁の根本を崩していく。

 壁が外側に倒れるように爆弾をセットさせたので、壁の上の部分は、唸りを上げて眼下の妖怪達を下敷きにしようと倒れ込んでいく。

 

「に、逃げろおぉぉぉぉぉ!!」

 

 ドローンで声は拾えなかったが、きっとそんなことを叫んでいるのだろう。先ほどまで威勢よく突撃してきていた妖怪達が、自分の頭上にある危険に慌てて退却を始めた。

 

ドガアァァァン!!

 

 だが足掻きも虚しく、防壁の下敷きになってしまった妖怪が何匹もいた。

 僕が見たところによると、タレットと防壁で死んだ妖怪の数は(およそ)五百匹ほど。それが見誤ったものだとしても、四百は殺せた筈だ。

 防壁が倒れ、土煙と地震が収まると、生き残った妖怪達は思わぬ奇襲に瞠目した。だが、最後尾にいる一人の妖怪が大きな声で指示を出すと、妖怪達は士気を取り戻して、今まで見たことが無かった都市の内部に向かって地を駆けた。

 

(蘭か……流石に大将と言うだけはあるな…)

 

 檄を飛ばした最後尾にいる地這いの妖怪に大将としての資質を見出し、賞賛の言葉を心の中で送る。

 あれだけ大勢の妖怪を束ねる彼女が不意に上を向いた。

 

「なっ…!?」

 

 ドローンの限界高度まで上昇しているので、地上から見たら点にすら見えないだろう。それを蘭は寸分違わずに、ドローンを見据えたのだ。そして片手をこちらに向けて、そこから妖力弾を放った。

 

ブツン…

「くそっ…」

 

 物凄い速度で発射された一発を躱すことが出来ず、ドローンからの信号は途切れてしまった。地上から千メートルくらいあるというのに、到達するまで一秒と無かった。化け物か、あいつは。…いや、化け物だったな。

 

「各隊員に通達。敵は防壁を突破して内部へと侵入してきた。そこで削れた戦力は最低で四百。次の作戦に移る。AI班イーグル、工作班ホークは、僕の指示を待て」

「イーグル了解」

「ホーク了解」

 

 肩についた無線に連絡し、情報を随時全員に伝える。スイッチはホークとイーグルが持っているので、特に詳しく連絡をしておく。

 僕は部屋の窓を全部壊しておくように周りの狙撃班に命令し、僕もライフルのストックで正面の一つを破壊して、最高倍率にしておいたスコープを覗く。

 そこからは大破して穴が空いた防壁と、そこを埋め尽くすようになだれ込んでくる妖怪の奔流が見えた。奥にはチラッと蘭のような姿も見える。まだこちらには気付いていないようだ。初めて中を覗いてはしゃいでいる。戦争真っ只中でよくそこまでワイワイできるものだ。

 そしてスコープを下げると、そこには広い道路が青く染まっている光景が広がっていた。上手くばらまいてくれたようだ。これならもう少しは削れるかもしれない。

 

 ツクヨミ様に会うのが嫌なので嫌いだったこの建物も、今では重要なポイントだ。こことこの周りを廻っているだだっ広い道路を使って、最終決戦を仕掛ける。

 

「……そろそろだ」

 

 妖怪の大群が足元の液体を全く気にせずに進軍してきた。猪突猛進とは正にこの事だな。

 

「ホーク、発火装置準備」

「了解」

 

 無線で敵が来た事を伝え、その瞬間を伝えようと再びスコープを覗く。本当はドローンで見る予定だったが、ここからでも確認出来る。

 遠隔装置があるのでAI操作も発火操作も危険が少ないのが幸いだ。これで万全の状態で迎え撃てるのだから、予算を過剰に注ぎ込んでいた事に感謝しなければな。

 

「用意…………何っ!?」

 

 後少しで妖怪の本陣が液体の範囲に入る。そう思った瞬間、彼らの波が二手に分かれ、撒いた液体を避けるように進んできたのだ。

 運良く待機させているAI部隊とは鉢合わせしなかったが、再び妖怪達が合流し、僕達の前方でまた大群となって行進を始めた。

 

「ホーク発火中止!狙撃部隊射撃開始!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

 スコープの先にいる蘭が笑ったのを見て、僕は臍を噛んだ。そこまで妖怪達は馬鹿じゃないらしい。先の奇襲から学んで、僕の作戦を読み取ったのだ。流石に中級以上ともなると知性が獣よりはあるようだな。

 僕は今のうちに減らせるだけ減らそうと、連れてきた狙撃部隊と重装部隊に射撃命令を出し、壊した窓から目の前に見える禍々しい塊に向かって銃を撃ち続けた。

 

 スコープから見える奴らの頭を三秒に一体の速さで撃ち、頭蓋を砕いて紅い華を咲かせる。隊員達は五秒で一体のペースだが、高所からの超ロングレンジ射撃で百発百中ヘッドショットをかましているので、寧ろ天才だと褒めるレベルだろう。

 ランチャー部隊がバズーカを持って狙いを定め、先頭集団に向けてミサイルを発射した。ミサイルは吸い込まれるように奴らに向かって飛んでいき、見事数十体の妖怪を木っ端微塵に吹き飛ばした。ここで出来るだけ進行を遅くして、更に数を減らす。この建物に沢山人員を割かなかったのにはある理由があるのだが、それが判明するにはまだ少しかかりそうだな。

 

「マガジンが空になるまで撃てぇ!!」

 

 空になったライフルの弾倉を飛ばして、腰から新しいマガジンを差し込む。そしてまたスコープを覗き、頭を穿つ必殺の光線を異形の怪物達に撃ち込むためにそのトリガーを引く。圧縮された高エネルギーの弾丸が長い銃身から放出され、眩い軌跡を描いて蠢く集団に衝突し、また一匹、その命を散らした。

 銃声が響き渡り、バズーカが轟音を上げて妖怪を吹き飛ばす。たった十人くらいの小規模迎撃でも、これだけで数百は屠れた。

 

「隊長!もう弾がありません!」

「なら銃とマガジンホルダーを捨ててジップラインで退避しろ!そして本隊と合流するんだ!」

「了解!」

 

 一人、また一人と、銃を投げ捨てて走り去っていく隊員を背中で感じながら、僕はまだ残っているマガジンの最後の一発を撃った。ラストアタックも見事に命中し、そいつを絶命させる。

 最後にスコープで蘭を見てみると、こちらを見てまた笑っていた。

 

「みんな退却!銃火器は全て放棄してジップラインで避難しろ!」

 

 僕がライフルを捨てながらそう言うと、残っていたみんなも銃を捨て、後ろに控えている本隊と合流するためにワイヤーで空中を滑り降りた。

 ジップラインの先はだだっ広い道路を挟んだ所にある建造物の真下。もう少し遠くには、僕が待機させている本隊が控えており、その近くと建物の屋上で狙撃班が武器を構えている。

 後ろを向くと、そこには、天高く聳える高層ビルと、その奥で今も行進を続けている黒い塊。

 人数を少なくしたのは、こういう時のためだ。何らかの理由で敵がすぐそこまで来ていた場合に、素早くこのデカい建物から脱出出来るようにして、舞台(・・)の準備を手早く終わらせるために。

 

 

 

 

「派手に行くよっ!!」

 

 僕が持っていたボタンを押すと、先程まで僕達がいたツクヨミ様の建物の下から爆発が起き、支柱を木っ端微塵に破壊した。

 支えを失った高層ビルは、重力に従って落ちるように落下し、地面とぶつかった部分が細かい瓦礫となって砕け散っていった。まるで地面に吸い込まれていると錯覚してしまうほど、建物は派手に土煙を上げて、その場にコンクリートの山を積んでいく。

 爆風がここまで来て、隊員達は踏ん張って耐えた。一番近い所にいた僕達は物陰に隠れてなんとかやり過ごし、風が収まると、そろそろと顔を出して状況確認をした。

 

 先程まで神の威厳を体現していた堂々たるあのビルは、物の見事に崩れ去り、瓦礫の山となってその場に鎮座する事になった。

 工作技術は能力で修得しているので、僕は爆弾を設置する支柱を調整し、妖怪達の方へと若干倒れるように崩れさせた。

 ビルの周りにはとてつもなく幅広い道路がロータリーのように敷かれており、更に、そこから都市の門に向けて大通りが延びている。それも同じくらいの幅があるので、妖怪達は主にそこを通っていた。

 

 僕はビルの残骸がその入口を塞ぐように爆破した。なので、妖怪達は瓦礫の山を越えてこないと僕達と戦えない。

 つまりだ……

 

「狙撃班!瓦礫から頭を出した奴を片っ端から撃てっ!全隊員、射撃体勢を整えろぉぉ!」

 

ジャキッ!!

 

 屋上の狙撃班に瓦礫を登ってきた奴を撃つように指示。そして、取りこぼした妖怪は地面からの射撃で殺す。兎に角接近戦は最終手段だ。こっちは数撃もらうだけで戦闘不能になってしまうくらいに柔な体だ。たとえ鍛えてあったって、攻撃をもらっていいという理由にはならない。

 

「…イーグル、AI部隊に、このロータリーで左右から挟み撃ちにするように命令してくれ。建物の裏で待機させて、僕の合図で飛び出すようにして」

「了解」

 

 無線で背後のイーグルに命令する。僕の部隊は百人弱。AI部隊は左右合わせて二百程。合わせて三百で、残り千体以上の妖怪を倒さなくてはならない。それも、今までの任務では滅多に遭遇しなかった中級以上の強力な妖怪。その中には蘭もいる。勝敗は五分五分だ。

 

 ここで回り道をするなんて馬鹿な真似はしてこない筈だ。蘭は妖怪らしく正面突破で来るだろう。

 

 

 

 

 僕の予想通り、瓦礫の向こうから沢山の足音が聴こえてきた。それを認めた隊員達が一斉にサイトを覗いて集中する。

 

 奥からガラガラと音がする。きっとこの山を登っているのだろう。ロケットがそれなりに近くにあるので、急いでいるに違いない。

 

「「「「「うおおおおおおおおぉぉ!!!」」」」」

 

 一種の轟音にも似た雄叫びがロータリーと瓦礫のみとなった平地に響き渡り、頂上から醜い顔を見せた。

 その瞬間、狙撃班が放った一撃が顔面を貫通し、雄叫びは途中で途切れた。

 それに怯まず次々と妖怪が頭を出していく。狙える妖怪は後ろの地上部隊が撃っているが、それでも数が多い。物量で押し切る作戦だろう。ジワジワと山を降りてこようとする妖怪も出てき始めた。

 僕達は既に銃を放棄しているので、瓦礫の下で降りてくる妖怪に対応する事にした。AI班も上手くやってくれたようで、左右の物陰に目をやると、そこには赤く光るAIの目が沢山あった。一瞬ビビったが、頭を振ってそれをかき消した。

 

 頭が出ては弾け飛び、叫びながら駆け下りてくる奴にはローアングルから光の雨が降り上がる。

 遂に山を越え切る輩が出てきて、僕達の出番が来た。山は既に妖怪の雪崩が起こっており、狙撃班もお手上げ状態となってしまった。そんな時は諦めてフルオートで乱射しろと命令しておいたので、辺りには馬鹿みたいに光線が撃ち出されていた。

 背後からの射撃を躱しながらの立ち回りなので思うように動けず、取り敢えずは妖怪の攻撃を避ける事に専念していた。

 

 だが、そろそろ物量に圧倒されてしまう。僕と一緒に接近戦をしている隊員も、相当キツそうだ。

 

「よしっ!全隊員突撃しろ!ここでこいつらを殲滅するぞおぉぉぉ!!」

 

 無線にそう叫び、背後を気にする事なく背中に背負っていた短槍を振り回して妖怪の首を的確に斬り飛ばしていく。

 

 もう銃に頼るのは終わりだ。今から、僕達の最終決戦が始まる。

 

 チラッと本隊の方を見ると、鬨の声を上げて突撃してくる皆が見えた。その中には雄也の姿もある。屋上に陣取っていた狙撃班も銃を捨てて地上に降り、士気の高まった表情で駆けてきていた。

 

 みんなの表情は覚悟の色一色に染まっている。敵の数は千程。対する僕達はAIも合わせて三百。一人エリート妖怪を四匹倒す計算だ。

 イーグルにAIを突撃させるのも忘れずに命令し、自分はこの中で一番危険な敵────蘭の姿を探す。

 

 

「「「「「ツクヨミ様の為に!!!」」」」」

「「「「「敵発見、殲滅します」」」」」

 

 

 僕達の総戦力が結集した。棍棒を振り下ろしてきた妖怪の腕を斬って胴を真っ二つに裂いて、これであと数時間を稼ぐと決心する。これなら殲滅とまではいかなくても────

 

 

 

 

 

 

ドゴォン!!!

 

 

 

 

 

 

 僕が希望を持ったその時、瓦礫の山の半分が消し飛んだ。飛び散った破片は圧倒的な力によって粉々に砕かれ、僕達に砂の雨となって降り注ぐ。

 山を半分削った犯人が歩いて瓦礫を降り始めた。纏っている妖力が桁違いなので、誰も挑む馬鹿はいない。

 

「敵、殲滅します」

 

 AIが両刃剣を振りかぶって突撃していった。しかしそれに彼女は目もくれず、片手を向けて妖力を手の平に収束し始めた。

 そしてそれをレーザーとして放出すると、AIはその暴力的なまでの力の奔流に身を溶かされ、戦闘機能を完全に失った。レーザーはそのまま数体の妖怪を塵も残さずに消し飛ばしたが、邪魔をする方が悪いというのが妖怪の思考なので、全く問題ないようだ。

 

 対妖怪用に造られた頑丈な逸品だ。それを軽くレーザー一発で溶かした彼女の、相変わらずの妖力に舌を巻く。

 AIの装甲は、バズーカを連続で撃ち込んでも凹まない程頑強な合金で出来ている。並の妖怪のパンチでは傷一つつかないだろうな。

 

 ただ、そんな常識を打ち破っていくのが彼女なんだけど…

 

「やぁ、久しぶりだね」

「一回門らへんで会ったでしょ?」

「あれはドローンだから、回数に入らないよ」

 

 周りが得物を必死に打ち付け合っているというのに、僕達のやり取りはまるで通りで偶然出会った友人との会話のようだ。

 彼女はその強さを誇示しながら歩いているので、下手に攻撃してくる奴はいないが、僕は案の定霊力を消しているので、馬鹿な妖怪が何体も背後から襲ってくる。

 それを毎回カウンターで殺しているのだが、如何せんキリがない。まぁ、隊員達のノルマが減ってくれるので、喜んで数を減らさせて頂くのだが…。

 

「そんなに妖力を使っていていいのかい?」

「今まで私が本気で相手してたと思う?」

「そんな気は全く無かったな。でも、だとしてもここで殺すけど」

 

 やはり隠していたのか。薄々そんな気はしていたので、大した驚愕も無くその事実を受け止める。

 

「そっちだって、隠し玉くらい用意してるんでしょ?」

「まあね」

 

 雄也との特訓で新たに手に入れた技術がある。しかし、まだそれは使わない。実のところ、まだ完全に会得はしていないからだ。だが、それを悟らせるほど僕は間抜けじゃない。

 

 周りから金属がかち合う音や怒声が響く中、僕達はいたって冷静に互いを見つめ合っていた。

 

「……さて」

「それじゃあ…」

 

 僕は短槍、蘭は小太刀を鞘から抜いた。

 

 

「「始めようか」」

 

 




 

 大規模な戦闘と、集団戦闘の進め方って思ったよりも難しくて悪戦苦闘しています。
 あ、前書きのP.S.の意味、分かって頂けたでしょうか。開戦前の修司の、仲間を鼓舞するところですね。あれは台詞を考えるのにリアルで一時間考えましたw

 さて、ここまでは前座です。戦争はこれからどんどんヒートアップしていきます。ステージも状況もタイミングもバッチシです。章の終わりまで勢い激しく突っ走って行きますよー!!



 では、次回までさようなら。

 ……むむっ!?今日は大晦日…だとっ!?良いお年を!
 紅白観なきゃ!!ピューー……

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