ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~ 作:マーケン
私が放課後に花丸ちゃんとルビィちゃんと共に沼津都心部に行った時のことだ。
私は高海先輩ら“三人”と沼津駅前であった。
どうやら桜内先輩も無事にメンバー入り(仮)したらしい。
これでスクールアイドル活動の最初の壁である作曲も無事に越えられるだろう。なんと言っても桜内先輩はライフワークがピアノだと公言してるのだからそれなりに造詣はあるだろう。
そういえば私は桜内先輩のピアノを聴いたことがない。今度是非とも聴かせて頂きたいものだ。
さて、先輩ら三人が何をしていたかと言えばビラ配りだ。どうやら週末に浦女の体育館でライブをやるようで、その案内をしているのだ。
“私達もいつか皆の前でライブしたいね”
私の中から沸き上がる声に蓋をして私は高海先輩らに声を掛けた。
「順調ですね」
「黒松ちゃん。それに花丸ちゃんにルビィちゃんも」
「遂にライブをやるんですね」
ルビィちゃんがスクールアイドル大好きスイッチが入った。鼻息荒くライブの案内チラシを食い入るように見ている。
どうでもいいがルビィちゃんや。その鼻息の荒さは華の女子高生がやっていいものではないよ。
「うん。新しい理事長がやっていいって言ってくれたんだ。よかったら見に来てね」
最近臨時全校集会が行われ、新しい理事長が就任したと通知された。驚くべきことに新しい理事長は現役女子高生。ハーフでパツキンのチャンネーで女子高生だ。もはや意味不明だが、どうやらその理事長は浦女の出資者の娘らしい。金持ちの道楽は実にぶっ飛んでいると驚いたものだ。
「いいライブにするからね」
理事長の話は置いといてライブはもう絶対に行く。彼女たちの曲がどんなものか気になるし、隠す必要の無い真実として私は音楽が好きだからだ。
「あの、グループ名は?」
ルビィちゃんが頂いたビラを見てそう呟くと、高海先輩は数秒の沈黙の後一言。
「あ」
まさしく一言であった。
私は帰りの方向が同じだという理由で花丸ちゃんとルビィちゃんと分かれた後、高海先輩達と海沿いまで来ていた。
三人は砂浜に文字を列挙し、グループ名を何にするか考えていた。
流石に部外者の私は意見を求められても直接単語を口にすることはしない。精々がみんなの共通のものがいいんじゃないですか、と意見を述べただけだ。
それからは意見を求められても困るのでハーモニカを吹くことにした。
音楽をしていることに先輩方は驚いていた。
「今度一緒に演奏しましょう」
と桜内先輩からセッションのお誘いがあったのはいい収穫だった。
さて、今日の曲は“誕生日には真っ白な百合を”。福山雅治の楽曲だ。
この曲は生まれたこと、見守ってくれたことへの感謝が表現されている。
この曲を選んだのは私なりの願いと祝福だ。
これから生まれる彼女たちを示す名が彼女たちを支え、人々から支持されるようにと。
ってあれ?みんな手も口も止まってる?
「どうしたんですか?」
「いやーあの」
「千歌ちゃんじゃないけど、スクールアイドルやらない?」
「驚いた。思わず聞き惚れちゃった。ハーモニカってこんなに良い音がでるのね」
好評なのは実に結構だが、グループ名はどうしたグループ名は。
「はいはい。次いきますから」
何時までも思いつかないのならば初心を思い返させるだけだ。
「ーーーーーーーー」
次の曲は“START:DASH!!”。言うまでも無くμ’sの曲だ。この曲は踏み出す決意と勇気。それ以上に無駄な装飾語など先輩方には不要だろう。いや、これらの言葉すら蛇足だろう。
先輩方は頭を悩ませながら砂浜をうろうろと歩き出す。少しでもインスピレーションを得ようとしているのだろう。
だが、曲が終わるまでに先輩方から名前が出ることは無かった。いや、出す必要が無くなったと言うべきか。
先輩方は出会ったのだ。砂浜に記された一つの言葉に。
「
誰が書いたのかも分からない。だがその言葉がストンと心に入り込んだのだ。三人ともそうだと言っていた。因みにだが私もそうだった。
「これからよろしく、
メンバーが集まり、曲が生まれ、そして名前が付いた。
おめでとう。そしてどうか頑張って。
“今日から私達はーーーーー”
そして、どうか消えないでください。