ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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ようやくテレビ第二話辺りです。


第四話

 週末は生憎の曇り空だったが、私は暇つぶしにハーモニカを持って近所を散策した。あわよくば演奏スポットを新たに開拓するのだ。

 やはり川か山か海の三択だろう。因みに埼玉に居たときは川沿いだった。埼玉には海がないし、自称川の国らしかったからだ。

 基本的に邪魔が入ることはなかったが、天気の悪い日には川の水位が上がるため近所のお祖父ちゃんがちょいちょい川の様子を見に来たものだ。

 私の演奏に気をとられてお祖父ちゃんが川に落下したときは流石に焦ったものだ。

 そんなことを考えながら海沿いをぶらぶらと歩いていた私は淡島に程近い海上に浮かぶ小型船に気が付いた。

 どうやらダイビングをしているらしい。そういえば内浦の面する駿河湾は水深が深い場所もあり、そらに栄養源が豊富であることから多様な生態系が確立されているため、コアなダイバーや海洋研究家には垂涎の場所だという。

 

「これも何かの縁、かな」

 

 私は今日の演奏場所をこの淡島を望める海岸線に決めた。

 海上の船とは距離があるから音は多分届かないし、演奏するにしても景色に絵がある方がいい。手で四角いフレームを作って船と淡島をその中に収めると、なるほど、実に写真映えしそうだった。

 

「ーーーーーーーーー」

 

 曲については今日もシェフの気紛れだ。基本的にミーハーな私が吹くのは知名度の高い曲だ。今日で言えば海雪。黒人演歌歌手の代表曲だ。だが、今は凍える季節でもなけれぱここは日本海でもないし出雲崎でもない。そしてダイビングしてる人達は身を投げた訳でもない。

 

 些か選曲を間違えた気がするが取りあえず一曲を吹き流す。そして次の曲は海の声だ。某ケータイキャリアのCMでお馴染みのあれだ。ダイビングしている人達に海の声が聞こえたらロマンチックだ。ロマンチックが止まらない。おっと、これはまた別の曲か。

 だかよくよく考えると、海の声は大切な誰かの声を想う歌であって自然の神秘を歌ったものではない。まあ、ダイバー達が何を思って潜っているかは分からないが。

 そうこうしてる内に雲間からお日様が顔を出した。青い空と海に差し色の白い船が良く栄える。

 これなら海も明るくなるだろう。次の曲はハレ晴レユカイだ。

 ハレ晴レユカイは底抜けに明るい。日常に楽しみがあるという希望に詰まった曲だ。出だしのキャッチーなメロディーで一気に曲に没頭でき終わりがあっさりと締まりが良いのが好きだ。

 この曲が終わった頃にはダイバーが海面に出て三人で円陣を組んでいる。遠目ではっきりしないが、どことなく見覚えのある髪の毛が三人。

 あれって高海先輩達?まあ、誰にしてもこの距離で私のことに気付くことはないだろう。それにしてもなんという偶然だろう。

 今日はあと一曲吹いたら帰ろう。

 最後の曲は雨上がりに見た幻だ。the pillowsの曲だ。

 この曲は自分の足跡を肯定する力強いものだ。私はこの曲を聴いたとき正に今みたいな曇天に僅かに光が射すこんな光景を視た。これに地平線まで見える荒野があれば私のイメージにピッタリなのだが、水平線はそれはそれでいいものである。

 さて、ひとしきり演奏もしたし、帰宅するとしますか。久し振りに雑念なく演奏が出来たものだ。

 


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