ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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更新がした遅くなりました。
次回更新は12/16です。



第二十一話

 PVをアップした翌日。津島さんと私はスクールアイドル部の部室にてその評判が如何ほどのものなのかAqoursと共にスクールアイドルランキングを確認した。

 それまではAqoursのランキング順位は4700位前後だったが果たして如何ほどの成果があろうか。

 

「見てこれ」

 

「凄い。一気に上がってる」

 

 結果は900位台までジャンプアップしている。凄まじいまでの成果だ。まぁここまで全員美形で固めれば話題にもなろう。だが、本番はこれからだ。一瞬とは言え話題になったのだからその熱の冷めぬ内に新曲を発表しなければ顔だけのスクールアイドルになってしまう。

 

「因みに堕天使っぽい新曲ってあるの?」

 

「ないよ」

 

「え?」

 

「ないよ」

 

 津島さんの質問に即答する千歌先輩は順位が上がっていることにご満悦な様子である。これはあかん。何も考えてない。まだ新曲も出来ていないのに行ける気になっちゃってる。

 

「えースクールアイドル部、スクールアイドル部。至急生徒会室に出頭しなさい。繰り返します。至急生徒会室に出頭しなさい」

 

 津島さん風に言うならば、ラグナロクを知らせるラッパの様に校内放送が流れたのはそんな時だ。その声は言葉遣いを聞くまでもなく怒髪天を突くというやつだった。

 

「何があったんだろう?」

 

「さあ」

 

 まるで状況を読めてない千歌先輩に私は頭を抱えたくなった。

 あのPVをアップした翌日なのだからそれに問題があると考えるのが普通だ。

 何故こんなに楽天的なのだこの人は。学校から承認されなければスクールアイドルとしてランキング登録は出来ないのに。

 

「あと黒松星さん。あなたも出頭です」

 

「何故私まで」

 

 よくスクールアイドル部の面々とはつるんでいるため関連性を疑われるのは仕方ないとしても呼び出しまで食らうのは心外だ。

 

「撮影協力に名前入ってるずら」

 

「はっ」

 

 自分の失策に気付いた時には時既に遅し。早くくるよう催促する放送が再度流れるまでそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相変わらず会長一人しかいない生徒会室に出頭した私達は怒り心頭の生徒会長に破廉恥の烙印を押されてしまった。

 

「そうは言ってもダイヤさん。あの位のスカート丈は他のスクールアイドルもやってますし、それ程でもないと思いますが」

 

「私は性的な表現のみに言及したつもりはありません。その可愛らしさを前面に押し出して人気を狙おうとする姿勢があざといと申しているのですわ」

 

 それを言われてしまってはぐうの音も出ない。確かに正直に言ってしまうと実に中身の無いPVだ。

 

「そもそも、ルビィにスクールアイドル活動を認めたのも節度を持ってやると約束したからですわ」

 

 やるからには本気で。そう窘められているのだ。

 中途半端な気持ちで堕天使アイドルなんて喧伝して人気でなそうだから方向性を変えますなんて、プライドがなさ過ぎる。

 

「順位だって一時的なものですわ。見てみなさい」

 

 ダイヤさんはノートパソコンを机の上でスライドさせてこちらに寄越すと、曜先輩がランキングを確認する。

 それはついさっき見た時とは打って変わって1500位くらいまで下がっていた。更に言えば現在も下がり続けている。

 

「本気で目指すならどうすればいいのか、もう一度よく考えることね」

 

「はい」

 

 一同現実を突き付けられて頷く以外に返事のしようがなかった。

 Aqoursの面々と津島さんは肩を落として生徒会室を後にする。私は一同が出たのを見計らってダイヤさんに問うた。

 

「そんなに気を掛けてくれるなら監督してあげればいいじゃないですか」

 

「私からも言わせてもらえば、そんなに気を掛けてるならもっと助言しないのですか?」

 

 私の質問は質問で返されてしまった。どうやら私は距離を取っているつもりであったが、傍から見たら全然距離を取れていないようだ。だが、それが分かると言うことはダイヤさんが気に掛けている証拠だ。

 

「私のような素人に助言なんてできませんよ」

 

「それはお互い様ってことにしておきますか」

 

 どうにもダイヤさんの含んだ言い回しが気になるが、それは一旦棚上げしておく。

 

「私は正直に言えばAqoursの皆が楽しんでいればランキングとかどうでもいいんです」

 

「黒松さん?」

 

「皆が共通の音楽を心から楽しめれば順位なんて関係ないんですよ」

 

 その活動が悲劇や別れなどと無縁でさえあればそれ以上のものは望まない。それが私の思うことだ。だから不要なアドバイスなんてしないのだ。

 

「黒松さんは何故彼女達と居るの?」

 

「見守りたいからです」

 

 ただそれはダイヤさんのとは違う方向性だろう。私がアドバイスするとすればそれはAqoursが分解しそうになった時だけだ。私が味わった人と人とがすれ違う悲しさを彼女達が知る必要は無い。

 

「いずれにせよ見守る気持ちがあるならその心に従いなさい。きっと貴方は、いえ、何でもありません」

 

 ダイヤさんが何を言おうとしたのか分からないが私もまたみんなを追って生徒会室を後にした。

 

 


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