ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~ 作:マーケン
流石に移動に継ぐ移動で疲れもあるしなにより空腹だ。ぺこりますご免なさいって感じだ。
なので月さんが目的地までのルートに良いところがあると言って連れていってくれた。
開放的に広い三角屋根の天井が特徴的なフードコート。どうもフィレンツェ中央市場と言うらしい。
随分と賑わっているだけあってフードコートのラインナップも選り取り見取り。
ジェラート、ピザ、バーガー、ステーキなどなど、見ているだけで涎が垂れてくる。
花丸ちゃんなんかルンルンと鼻唄が聞こえそうなほど上機嫌でバーガーを頼んでいた。
「花丸ちゃんって太らないよね」
食事の度に花丸ちゃんはそれはとてもとても良い表情をする。ただでさえ美少女然とした花丸ちゃんがニコニコと嬉しそうに食べる姿はかわいいの一言だ。
ただ言わせて貰いたい。そんなに食べるのが好きなのになんで太らないのだと。
パット見、花丸ちゃんの体質的には肉の付きやすそうな肉質をしている。身長は小さいながら付くところには付いているし。
「体質ずら・・・・・・と言いたいところだけど、実際は食事のバランスずら」
「バランス?」
梨子先輩が興味深そうにしている。スクールアイドルを初めてから動く機会が増えたものの食事量も増えたらしく、梨子先輩は体型維持に四苦八苦しているらしい。
「1日に必要な食事量は調べればすぐに出るし、食べ物のカロリーとか栄養もすぐに分かるから、後は食べたぶんを全部計算するだけずら」
「なんか、さらっとロジカルな事をしているのね」
「スマートフォン様々ずら」
「花丸ちゃん、スマートフォン持ってから完全に使いこなしてるよね」
ルビィちゃんが染々と言っている。
きっとお寺の娘だけあって昔はレトロな子供だったのだろう。
「意外?」
「んー、でも花丸ちゃんって結構順応性高いよね」
千歌先輩の言う通りだ。
花丸ちゃんは新しいものを見ると「未来ずらー」って目を輝かせるけれど、驚くだけでなく使うことに躊躇いがないのだ。
「これはおらの持論なんだけど、新しいものはいつになっても使えるようにしなきゃいけないずら」
「なんで?」
「文明は常に進歩するずら。より便利に、より使いやすくって。だから、新しいものを使えるようにしておかないと社会の保証を得られなくなるずら。古いものを大切にするのは当然だけど、より便利なものは受け入れる。そうやっていかないと歳をとってから新しい便利なものを作ろうって人の足を引っ張っちゃうずら」
「何か結構真面目な話になったわね」
「つまり、便利なシステムを使いこなせば体重の増価も体型維持も造作もないずら」
「ほえー」
太らない話から随分と話がそれてしまったけれど、結論は出た。出たけど、あまり参考にはならなさそうだった。
便利なものがあっても使うのは人間だ。花丸ちゃんはマメだからともかく梨子先輩はああ見えてズボラなところもある。
「そう言うのが難しい人なら何も考えずに動くのが一番お手軽だよ」
「それお手軽だと言えるのは曜ちゃんと果南ちゃんだけだよ」
さらっという曜先輩に千歌先輩がすかさずツッコムのに私達は激しく同意した。
「ダイヤさんなんかは完璧に食事とか運動のメニューを考えてそうだね」
「それ分かる。なら鞠莉ちゃんはどうしてるんだろう?」
「確か鞠莉ちゃんってアフタヌーンティーとか楽しんでたし、それなりに食べてる印象はあるけど」
「Aqours以外のところで動いてる印象は無いね」
「なら次合流した時に聞いてみようか」
「千歌先輩。他に聞くことあるのでは・・・・・・」
私達はそもそも今後の活動への不安をどうやって払拭するのか、それの参考になればと相談しに来ているのだ。
「分かってるよもちろん」
「日本に帰ったらライブの準備しなくちゃだもんね」
「この気持ちにどうやって整理を付ければいいのか。それはもちろんずっと想い続けてる。それを言うなら星ちゃんと穹ちゃんも、ちゃんと考えを纏めないとじゃない?今後どうやって活動していくのかを」
「・・・・・・そうですね」
Aqoursの今後、ジェミニのアカリの今後。私達の未来に頭を悩ませる今、私達は奇妙に立ち位置を同じくしている。
負けないよ、と視線を向ける千歌に負けじと私も視線を合わせた。
「そう言えば善子ちゃん来ないね」
「それなりに混んでは居るけど、注文してから出てくるまでそんなに時間掛からなかったよね」
「まさか・・・・・・」
私達は一斉にスマートフォンを取り出すといつの間にか来ていた着信メッセージを見て辟易した。
そこには善子ちゃんからこんなメッセージが書かれていた。
“ヨハネの導きに従い先に行っている。心配ご無用”と。
「あの堕天使ぃい」
梨子先輩が「この悪ガキぃい」というように言っているのには笑ってしまったけれど、わりと状況は笑えない。
海外素人が単独行動は危険だ。なるべく人目のあるところならば大丈夫だとは思うけれど油断は禁物だ。
私達は善子ちゃんを追うべく、まだ温かい各々の料理を無言でかっこむのだった。