FAIRY BEAST   作:ぽおくそてえ

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今回はご先祖のルミナとメイビスたちの出会った頃の話です。中身は相変わらず薄くてご都合主義的なとこもあります。


番外編 その3 『妖精の尻尾』創設秘話

X696年、マグノリアに一つの小さな船が訪れていた。そこから降りてきた少女と3人の男たち。彼らの名前はメイビス、ウォーロッド、後にハデスと呼ばれるプレヒト、そしてマカロフの父になるユーリだ。ここには荷物の補給と新しい街の情報を集めにやって来たのだ。

 

「ここがマグノリアですか…」

「いやぁ、久しぶりだなぁ!」

(ワッシ)たちも何度か訪れたが、相変わらず栄えておるのう」

「とりあえず情報と物資を集めよう。話はそれからだ」

 

この先のことを考えたプレヒトの助言を元に二手に別れる。プレヒトとユーリは買い物に、そしてメイビスとウォーロッドは情報集めへと向かった。

 

「何か良いことがあればいいですね!」

「そうじゃな。まずはそこの酒場にでも行こうか。情報は人の多いこういうところに集まるでな」

 

まずは人の集まりそうな場所にいこうと扉を開けると、外とは変わらない活気がそこにはあった。

 

「いらっしゃい!旅の人かい?」

「まぁの…少しここら辺のことを聞きたいのだが、良いか?」

「それならそこのルミナのお嬢ちゃんに聞きな。この街の周りのことなら俺より詳しいかもな」

 

店主が指差した方にはメイビスとそう年齢が変わらない女性が1人で黙々と食事を取っていた。

 

「あの…少しいいですか?」

「もう少し待ってな。話ならメシ食ってから聞くよ」

(ワッシ)らは急いでいてね。時間はとらない、悪いが聞いてもらえんか?」

「…分かったよ、手短かにね」

 

ウォーロッドの少しドスを効かせた声にも臆すことなく、しかしその必死さに何かを感じたのか頷いた。

 

「何が知りたいんだい?ある程度なら答えられるけど?」

「これから旅をしようと思ってまして、その為の資金が必要なんです。それと、ここ一帯の情勢を知れれば…」

「安全を確保するのが大事でな。場合によればここに留まるかもしれんのじゃ」

 

2人からの説明を聞き、少しの間思索を重ねてある答えを導き出した。旅をしたいと言うメイビスたちに断りを入れてから言葉を続ける。

 

「正直ここらは呑気に旅を出来るほど安全じゃないよ。動ける範囲が限られちゃうけど、金も安全も確保する手段があるわ」

「もしやギルドのことか?やはり、そうなるか」

「これなら治安も金も手に入るし、力をつけてから冒険なり旅なりすればどうかしら?」

 

少女から出された案に賛成だが、勝手にここで決めては残りの2人に悪いだろうと、一旦持ち帰る事を伝えた。

 

「分かりました。一度他の2人と話して来ます。…貴女の名前を聞いてませんでしたね、私はメイビス、こちらの彼はウォーロッドです」

「ルミナよ、ルミナ・マーナガルム。話が纏まったらまたここに来て。昼間ならいつもここにいるわ」

 

笑顔で答えながら店を出た2人を見送るルミナは、悲しそうに涙を一粒浮かべた。

 

「お嬢、あんたも元は旅人だったんだろ?本当はついて行きてえんじゃねえか?」

「私は私なりにやるさね。それに私を受け入れてくれたこの街にもう少し居たいんだ」

 

獣人の里を出て何ヶ月も一人で過ごした彼女にとって一緒に旅をしたい気持ちと、この街の暖かさの中で過ごしたい気持ちで揺れていた。

 

====

 

その日の夜、宿に帰ってきたユーリとプレヒトにメイビスは昼間あったことを、包み隠さず全て話した。

 

「ギルドだ?何を言い出すかと思えば…」

「そんな物作ってどうなると言うのだ?立ち上げるにしてもどこに作る、金は?」

「そ、それは…」

 

プレヒトの現実的な言葉にどう答えようかとメイビスは頭を巡らせる。そんな時に、夜更けにも関わらず、ノックが聞こえた。

 

「誰だよこんな時間に…おい、どこの誰だ?」

「ああ、すみません。ルミナという女性のお客さんがお会いしたいそうで」

「ルミナ?誰だよそれ」

 

不審がるユーリは後ろにいる皆に視線を送る。それに対してメイビスとウォーロッドは入れても構わないと頷いて返した。

 

「連れて来てくれ」

「承知しました」

 

宿主がドアから離れて数分した頃、ようやくその女性がドアを開けてやって来た。

 

「こんな時間に済まないね。昼間の話、あの後色々回ってたら私の方で手伝えることが出来てさ」

「説明してもらおうか?」

「そうさね、土地と仕事が少し。あんた達がギルドを作るなら、分けてくれるそうだよ」

 

皆して驚いた。まさしく渡りに船と言ったところだ。しかし、どうやってそんな物を集めてこれたのか謎なままだ。

 

「なんでそんなすぐに集まるんだよ?何したんだ?」

「前のギルドが無くなってね、軍がここの治安を守ってるんだけど、大変らしくてさ」

「そこでギルドを作るって話か。たしかにあちらからしてみれば好都合、(ワッシ)らも仕事が入る、と」

「ご名答。どう?やってみる?」

 

プレヒトの懸念していた問題も少なくとも緩和はされた。この地にギルドを作るのも作らないのも、後は本人達の意思にかかっていた。

 

「私は良いですよ?」

「俺も賛成だ」

(ワッシ)もそれで構わん。プレヒト、お主はどうする?」

 

最後の1人プレヒトに話を振ると、ため息を1つついて目を開いた。

 

「全員賛成なら俺もそれで良い。今更反対してもどうかと思うしな」

 

これで話は通った。反対も特になく、数日後には正式に評議会と街の人に通すことになった。

 

「じゃ、とりあえず私はこれで帰るよ。ギルド名決めたら私のとこに来な、それまでに書類を取っておくよ」

「はい、お願いしますね!」

 

それから数ヶ月後、カルディア大聖堂の近くに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の建物が築かれていた。その前で4人ともう1人、ギルド創設者であり、メンバーに加わったルミナが記念撮影をしていた。

 

「ここが俺たちのギルドか」

「案外、悪くないな」

「頑張った甲斐があったわ」

「ふふ、これからは5人になるな」

 

集まった4人の前にメイビスは一際明るい笑顔で立つ。

 

「さあ、写真を撮りましょう!これからも一緒に冒険を続けますよ!」

 

これはギルドの始まりの物語。妖精たちの冒険も戦いもこの日から全てが始まった。




案外番外編書くの大変でした…

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