もう後、数話で完結の可能性が高くなりました。本編は100話まではいかないかもです(番外編を書くと行くかな?)。とりあえず本編どうぞです!
悪魔の侵攻により始まった一連の戦いも終止符が打たれた。ゼレフの脅威も去り、この天狼島にも平和が訪れている。
「まさかギルダーツとカナが親子だとはな。ま、これからは仲良くやってくだろな」
「お父さんか。私も帰ったら会いに行こっかな」
「その時は一緒に行っても良いか?」
「ええ、もちろん」
ジンヤとルーシィは心地よい風の吹く中、森を散策していた。親子の再会を目にしていたルーシィも、ファンタジアの時から一度も会っていない父親と久しぶりに顔を合わせようと決意したのだ。
「上手くやってるといいな、親父さん」
「あの時は色々大変だったみたいだけど…多分大丈夫だよ」
かつてファントムの一件で大きく対立してしまった親子も、少しずつ歩み寄ろうとしている。そんな彼女を見て、ジンヤも1つ行動に出た。
「なあ、まだ時間はあるか?」
「あ、うん。どうしたの急に?」
「大事な話なんだ」
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その頃、エルザはマスターの元に来ていた。帰りの準備が整ったことの報告をした後、一つ質問した。
「ラクサスとは何か話されたんですか?破門の身の上とはいえ、助けられたところもあります」
「あやつと話すことはないわい。ハデスとの一戦で助太刀してくれた事に関しては感謝しとる。が、それとこれとは別問題じゃ」
「そうですか…」
マスターからの厳しい言葉に、俯いて答えることしか出来なかった。何か反論しようとしたところでラクサスが姿を見せた。
「良いんだエルザ、ギルドはそうやって守ってきたんだ。俺は戻るつもりはねぇし、戻りたいから加勢したわけでもねぇ」
「…で、あろうな」
加勢したことに他意はなく、墓参りをするついでだったと伝え、振り向くマスターを見つめる。
「ジジィ、俺は旅に戻る。その顔を見るのも今日で最後かもしれねえ…じゃあな」
「おい、ラクサス!」
エルザが引き止めようとあげた声も虚しく、ラクサスは振り返ることもなく木々の間を抜けていった。
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その頃、キャンプから少し離れた穴場でジンヤとルーシィが面と向かって2人きりで話をしていた。
「それで、話って何?」
「話す前に…渡したいもんがある。これだ」
「お守り?」
ポケットから取り出したのは小さいお守りだ。白く染められたそのお守りには花の紋章が付いている。
「家に伝わる物でね、大事に扱ってきたもんだ」
「それだったらそっちで大切に持ってた方が…」
特別な物を自分に渡してくる理由はなんだと、戸惑いながら返そうとするが、その手を押さえて言葉を続ける。
「これは、その、なんだ…自分にとって一番大切な人に贈るもの、らしい。親父が昔そう言ってた」
「一番大切……っ!?」
詰まりながら出てきた言葉の真意に気づいたのか、ルーシィの顔は火を噴くように真っ赤になった。ジンヤも頭を掻いて少し俯いてしまっている。
「本当は戻ってから渡すつもりだったんだが…これが俺の気持ちだ。無理に受け取る事もない、断ってくれても良い」
「ちょ、ちょっと待って!落ち着かせて…」
火照った顔と混乱した頭を冷やそうと二度深呼吸をして、しっかりと前を向いた。
「…受け取るよ、その気持ち。私も前からずっと、一緒に居たいって思ってたから…嬉しいな」
「そ、そうか!そりゃ良かった…ふぅ、断られたらどうしようかと思ったぜ」
「断らないよ。だって私、誰よりも貴方が好きだから」
別々に進んでいた2人の時間が、陽だまりに包まれながらゆっくりと交わり、流れ始めた。しかし、それを阻むように大気を震わす咆哮が辺りに轟く。
「…なんだ今のは?この島の動物のもんじゃねえな」
「みんなのとこに行こう!」
危機感を覚えた2人は途中で合流したナツやギルダーツたちと共にキャンプに戻ると、みんなが空を見上げていた。視線の先には大きな黒い影が映り、その翼や頭には禍々しい模様が浮かんでいる。
「どうしたんだ!何事だ!」
「あんなデケェ咆哮を出せんのはドラゴンくらいだ」
「ドラゴン!?」
「絶滅したんじゃないの!」
「こいつを見ると傷が疼きやがる…」
ガジルの呟きにほとんどの者が驚かされていた。数百年前に居なくなっていると聞き、まさか生きているとは思わなかったのだ。
「あいつ、何者だ。なんでここに…」
「黙示録に載っている黒き龍、『アクノロギア』か…」
「やっぱりドラゴンはまだ生きてたんだ…」
ナツやガジル、ウェンディの親達が姿を消している中、目の前にドラゴンが現れた。もしかしたら何か知っているのではないかという気持ちのせいか、ナツが叫ぶが嘲笑うように無視して降下してくる。
「降りてくるぞ!」
「っ!まずい、逃げろ!」
かつてこの黒龍と相対したことのあるギルダーツは、身の毛のよだつ恐怖を思い出し、逃げるように叫ぶ。刹那、再び天狼島を強襲し、地面を軽く砕きながら特大の咆哮を放った。
「なっ!?なんて破壊力だよ!」
「これが竜の力!?」
「とにかく逃げろ!死にたくなきゃ全力で船まで走れ!!」
このまま戦っても怪我人が多くて勝ち目はないと判断したジンヤは、全員に船への撤退を命じた。
「ウェンディ、あんた、竜と話せるんじゃなかったの!?」
「私が話せるわけじゃないよ!あっちの知能が高いから話せるの!本当ならあの竜だって…」
「今はとにかく駆けろ、追いつかれたら死ぬぞ!」
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突如として島に降り立った最後の厄災、アクノロギア。竜にして竜に
この島にも破滅をもたらさんと、その黒い翼をはためかせて暴れまわる。
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ブレスに吹き飛ばされながらも、攻撃をすんでのところで躱しつつ船へと急ぐ一行。彼らで遊ぶように、アクノロギアは逃げ惑う妖精達を咆哮を上げながら追いかける。
『グオオオオ!』
「急げ!すぐそこまで来てるぞ!」
逃げる若人を守ろうと、マカロフが黒竜の前に立ちふさがり、巨大化しはじめた。
「行け、船まで走れ…」
「何をするつもりだ、マカロフ!」
「行けえっ!」
身体に大きな傷を負い、その傷から血が溢れるが、アクノロギアの進行を受け止める。口からも血反吐を吐くが、手を離すまいとしっかりと掴みかかる。
「おいジィさん!敵うわけねえだろ!」
「マスター、おやめ下さい!」
「走れ」
血を流す姿を見ていられないと一緒に逃げるようにと叫ぶが、その腕を離すつもりはなく、逆に大声で叱責する。
「最後くらい
「なっ!?(最後って…マカロフ、まさか死ぬ気か!)」
「俺は
「…走るぞ、みんな」
「おいラクサス!」
目に涙を浮かべるラクサスの顔を見たナツは驚きながらも引きずられるように船へと向かい、他のメンバーも後に続く。
「ガキ達を頼む」
「……任せろ」
「…その為の俺たちだ」
ジンヤとギルダーツはマスターの言葉を聞き、皆の後を追いかけるために涙を堪えて立ち去った。
「(これで良い……人が死ぬから涙を流すのか、悲しみの涙が人を殺すのか、いずれにしろ涙は虚空なるもの。その意味と答えは自分で見つけ出せ。誇り高きワシのガキどもよ、生きよ、未来へ!)」
漢マカロフ、家族を未来へ歩ませるためにその体で魔竜に立ち向かう。果たして未来の光は帰還できるのだろうか。
というわけで開始から丸一年になりました。書き始めた時は一年で終わるかなーとか思ってましたがもう少し続きそうです。