それでは本編どうぞ!
雨の降りしきる中、初代の眠る場所へやってきたジンヤを迎えたのは幽体のルミナだ。
『直接話すのは初めてかしらね?』
「ええ、まあ。それよりも…」
『ゼレフの事ね?そろそろ来るんじゃないかって思って待ってたのよ……手を伸ばしなさい』
本題に触れようとしたら、先を見越したように答えが返ってくる。行動の早さに驚きつつも、一刻も早くゼレフを討つため、彼女のいう通りに右手を前に出した。
『貴方に授けるのはあくまでも呪いを解く為のものよ。決して倒すためのものじゃない、良い?』
「それで十分ですよ。あとは自力でどうにかしましょう」
『そう…じゃ、渡すよ。体に負担がかかるからかなり痛むけど我慢してね』
彼女の左手が触れると痛みを伴いながら右腕に力が流れ込み、狼の紋章が浮かび上がる。
「こ…これは…」
『邪を祓う獣人族の奥義よ』
痛みで痺れる腕を押さえてうずくまる彼の肩に手を置き、簡単に説明を進めていく。
『…って事。分かったかしら?』
「…ふむ、俺にしか出来ない方法って訳だ。やってみせましょう」
『嫌いじゃないわ、そういうの。さあ…未来を勝ち取ってみせなさい!獣人と妖精の名にかけて!』
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「だれも僕を殺せなかった…」
暗い森を歩くのは史上最悪と謳われる黒魔道士ゼレフ。歩くその道には草は生えず、生き物は死へと導かれる。
「そして悪魔は僕に死の尊さを忘れさせた」
彼の歩む先は死の制裁をもたらさんとしていた。
「あのアクノロギアを呼び寄せた罰、受けてもらおう」
呪いを受けたその体を進め、闇を持って裁きを下す為、心を殺した。
「その前に…僕を壊して欲しかったんだ、ナツ」
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「雨ひどくなってきたな」
『集中しろ…近づいておるぞ』
「了解…(やり方としてどうかと思うが、不意打ちで仕留めるか)」
ゼレフに気取られぬ様にカモフラージュをして藪に隠れ、様子を伺う。
「(こっちは見てねえか。後は隙をついて…)」
「何者!」
「(どうして分かったんだ、クソが!)」
完全に背後を取ったはずが、振り向きもせずにばれ、黒い波動を高速で飛ばしてきた。それとすれ違うように如意棒が伸ばされるが、お互いの攻撃は当たらなかった。
「奇襲は失敗か…」
「僕は死なないよ。これが僕の呪われた運命だから…」
「知ったことか」
2人の間に雨交じりの冷たい風が吹き抜け、雷鳴が戦いを待ちわびたと言わんばかりに空を切り裂いて轟く。空気は張り詰め、あらゆる者の邪魔を拒絶する。
「400年生きた僕の気持ちが分かるのかい、君に?」
「…知らん。言葉は不要だ、答えは戦いの中にある」
互いに拳を握り、鋭い眼差しで睨み合う。死の運命と生の未来、2つに別れた道はここに1つ、選ばれとしていた。