FAIRY BEAST   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです。次の話でゼレフ戦まで行ければなぁと思ってはいるのですが、もしかしたらその次になるかと思います。

それでは今回は大して進みませんが、本編どうぞです!


第86話 それぞれの決戦へ

「ど…どうなってんだこりゃあ…」

「俺とエルザたちが出ていった後か…迂闊だった、あのミラを倒せる奴が居たとはな」

「そう自分を責めないで。敵のことをいち早く皆に伝えられたのは、貴方たちのお陰なんだから」

 

遅ればせながらテントにたどり着いたナツとジンヤの前には傷つき、倒れている仲間たちの姿があった。そんな状況を鑑みて少しでも怪我の痛みと魔力を回復させようと、地面の下に隠していた特効薬を皆に飲ませていく。

 

「ここにある薬だけじゃ心許ないな」

「カナもマスターも負傷していたとはな」

「どうなってんだ、一体…」

 

テントの方も襲撃を受けていたが、信号弾に気づいたフリードとビッグスローのお陰でどうにか危機を乗り越えていたようだ。その証拠にすぐ近くには八眷属の1人、ラスティローズが伸された状態で見つかった。

 

「グリモアの戦艦がこの島の東の沖にある。ここの守備を考えて二手に分かれるのはどうたろうか?」

 

リリーの提案にほとんどの者が賛成していた。だが、1人だけそれに待ったをかけた。ジンヤだ。

 

「俺はまだやることがある…」

「ゼレフの事か?」

 

ナツたちが遭遇したあの黒髪の男だ。死を振りまく彼のような存在を放置していては後に禍根を残しかねない。

 

「奴を仕留めるのは今しかないんだよ」

「無茶よ!相手はあの伝説の黒魔道士、1人では勝てないわ!」

「ルーシィ…」

 

このまま行かせては死にかねない。無謀な戦いをしようとする彼を見殺しにはできないと叫んだのはルーシィだ。

 

「第一、勝てるの?そんな相手に」

「勝算がない訳じゃない。悟空の見立てが正しければ、カナの使ったあの魔法に答えがありそうなんだ」

妖精の輝き(フェアリーグリッター)のことか?初代の墓に何かあるのか?」

 

横から質問を挟んだナツの問いに静かに頷いた。確信に近いものを感じている。

 

「正確にはそっちじゃねえがな…初代の隣にはルミナ・マーナガルムの墓があるんだ。あそこに何かある気がする」

「ルミナ・マーナガルムってギルドの記録に載ってる人だよね?」

「ギルド創設メンバーの1人で俺の曽祖母だよ。ゼレフ攻略のカギを知っているかもしれん」

 

ギルド創設メンバーでありながら、獣王の座に就いた程の実力者だ。彼女の墓に獣人だけが使える秘技の一つでもあるのではと踏んでの話だ。

 

「どうしても…行くんだね?」

「やるしかないんだ。さて…この話はここまでだ。チーム決めをするぞ」

 

雷鳴の轟く中、天狼島の決戦は一歩ずつ近づいていた。

 

====

 

『来るみたいね。仲間を守る為の覚悟を見せて頂戴、ジンヤ…』

 

その小さな祠の前には力を授ける相手を待つ者が1人いた。数多の獣人を従えたルミナ。

 

『闇を屠る聖獣の力は、仙法を使える貴方なら使いこなせるはず』

 

新たな世代に未来を託すため、ここに1人…雨音の聞こえる中で待つ。

 

『だから…来て』

 

女帝は静かに男の到来を待つ。

 

====

 

「雨…止まないね」

「雷か…なんかやだね」

 

降り注ぐ雨は強さを増し、時々雷の音さえ聞こえてくる。不穏な空模様に、リリーが耳を塞いで震えている。

 

「どうしたのリリー?」

「もしかしてあんた、雷が怖いの?」

「ぐっ…」

「可愛いとこもあるんだね」

「うっ…うるさい!」

「さてと…」

 

エクシード組が和やかな雰囲気を醸し出していたところにナツが立ち上がる。

 

「俺たちもハデスを倒しに行くぞ、ハッピー、ルーシィ」

「あいさー!」

「えっ?私?」

 

まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのだろう、ルーシィが素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「オイラたちチームなんだよ?」

「そうだけど、もっと強い人いるじゃん。フリードとかビッグスローとか…」

「俺はここの術式を書かないといけないんだ。悪いが行けないぞ」

「守りはやるって決めたじゃねえか」

 

助けを求めるように視線を投げるが、守りに徹するとあっさり切り捨てられてしまう。

 

「私もミラ姉が心配だからここに残るね」

「ルーちゃん、私もここに残って術式の補強を手伝うね」

「私はナツさんたちと行きます!」

「ちょっと、ウェンディ…」

「大丈夫。ナツさんのサポートくらいならできるから」

「俺も行こう…ガジルの仇は取らねばな」

 

ウェンディ、シャルル、リリーはナツたちとともに攻めのチームに。ビッグスロー、フリード、レビィ、リサーナは守りのチームとなった。そしてジンヤは単独行動に備えて動き始めていた。

 

「これで決まりだな」

「ギルドの紋章に誓って皆は必ず守る」

「気をつけてね、ルーちゃん」

「だいぶ魔力が回復したかも」

 

それぞれの戦い、それぞれのやるべき事を胸に刻む。

 

「敵はおそらくハデスのみ…」

「最後の戦いですね!」

「必ず生きて帰れよ…」

 

ハデスを倒しにいく者、傷ついた仲間を守る者、ゼレフの行方を追う者。やることは違えど目指す先は同じだ。

 

「オイラたちも頑張るぞ!」

「ええ、わかってるわよ」

「エクシード隊出撃だ」

 

勝利を掴むため、互いを信じて己のやる事を果たさんとする。

 

「行くぞ!!」

「「「おお!!」」」

 

ナツの掛け声に呼応して拳を突き上げ、彼と共に攻めのチームはグリモアの戦艦を目指して走っていく。

 

「俺も始めるか…ここは任せるぞ!」

「勝ってこいよ!」

「(これ以上悲劇を生まぬためにも…ここでお前を倒す!待ってろ、ゼレフ!)」

 

走り去る彼らを見送り、ジンヤもこの島にいる巨悪をこの世から絶つべく、ルミナの墓を目指した。




学校が始まるので投稿間隔が開くかもしれません。

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