それでは本編どうぞです。
ギルダーツの参戦で勝ちに傾きかけたが、アズマが天狼樹を倒したことで一気に情勢がひっくり返り、ピンチを迎える羽目になった。この島にいる妖精たちは与えられた加護を失い、魔力や体力を奪われ続けていく。
「何故こんなことを…」
「マスター・ハデスの作戦で妖精を1人残らず倒せとのことだ」
「ちがう。なぜ私の魔力だけそのままにしたんだ!」
全員を倒すなら自分の魔力だけを残しておくことに納得がいかない。1人だけ残しておけばどうなるか分かったものではない。
「俺はアンタのような強者と戦いたい、たったそれだけの単純な理由だ」
「その言葉に嘘偽りがなければ、貴様が敗れた時は皆の魔力を元に戻してもらうぞ」
「ああ、いいだろう。約束しよう、ただし……俺に勝てたらだがね」
「私は仲間の命を背負っている。だから、必ず…勝つ!換装!」
重い使命を背負った彼女は双剣を手に、天輪の鎧に換装しながら一気に飛びかかった。
「…来るか」
「舞え、天輪・
アズマとすれ違いながら、乱れ舞う剣が次々に襲いかかる。しかし、この攻撃を読んでいたように全てを木でガードした。そしてその背中に向けて反撃をかける。
「
「くっ!」
葉を刃へと変え、無数に飛ばしてエルザを襲う。あまりの数と力に少しずつ押されていき、顔をしかめる。
「突き刺せ、
「ぐっ、かはっ!」
アズマは鋭い枝を弓矢のように飛ばし、さらに攻勢をかけてくる。密度の高く、そして高速の攻撃を前に遂にダメージを受けてしまう。そして生まれた隙を狙い、木の拳をぶつけてくる。
「あぐっ!」
「ブレビー!」
「つっ!」
爆発する木の実をなんとか避け、自身の持つ最速の飛翔の鎧を纏って両肩を斬りつける。そのまま背後から追い討ちをかけようとするが、アズマが作ったドーム状の盾に阻まれ、今一歩届かない。
「剣が抜けない…なっ!?」
「今更遅いと言っておこうか!」
しかもお留守になっていた足を掴まれ、そのまま持ち上げられてしまう。
「大地の力を受けるがいい!タワーバースト!」
「うああああ!!」
広大な範囲を包む爆炎の塔が立ちのぼり、エルザに容赦なくダメージが加わり、そして遂には地面に倒れ伏してしまった。
「(なんて魔力だ…本当に強い!妖精の鎧も煉獄の鎧もまだ修復中だし、他の鎧で太刀打ちできるかどうか…)」
今換装できる鎧で勝利を収められるのか、ボロボロになりながらも必死に考えるエルザ。そんな彼女の頭の中にある鎧が思い出された。
「(そういえば先週、『誘惑の鎧』なるものを買ったような気が…)」
誘惑の名の通り、見た目がかなり際どい物で、もはや鎧と呼べるのかも怪しい代物だった。
「ルーシィじゃあるまいし、着れるかあんな物!却下だ、却下!」
「一体なんのことだ?一人言かね?」
「うるさい、なんでもない!」
その鎧につられて思考が脱線しかけたが、必死に頭からそのことを消し、目の前の男の対処法を見つけようとする。
「(さて…どうするか。これ以上魔力を無駄遣いしていては勝ち目はないな)」
生半可の攻撃をしても、大樹の中という地の利がある相手には勝てないと結論づけ、彼女に残された一つの選択肢を取った。
「(ならば鎧を捨て、剣に全ての力を集める!)出でよ、妖刀『紅桜』!」
「っ!面白い、最高だ…」
魔力のない装束へと着替え、全魔力を注いだその刀は妖刀となり、紅く不気味なオーラを纏う。それを目の当たりにしたアズマは大いなる高揚感と力への畏れを胸に抱き、体が震えるのを感じた。
「(私はギルドの最後の砦だ、ここで負ければギルドの負けだ。だから、負けられない!この一太刀で決める!)」
「来い、
「うおおおおお!!」
アズマの攻撃を切り裂きながら進み、勢いのまま一直線に走る。しかし、敵前にてその動きが止まる。
「何!?」
切った部分が枝分かれしてエルザに巻きついて捕らえたのだ。手足を縛られ、完全に身動きを封じられてしまう。
「今この地に眠る膨大な魔力を解放する!」
「くっ…動けぇ!」
天狼の魔力を呼び起こし、アズマの全力を拘束されたエルザに発動した。
「これで終わりだ!
「うああああっ!!」
膨大な魔力と爆破をその身に受け、エルザは思い切り吹き飛ばされ、意識を失い倒れてしまう。
「
勝利を確信し、笑みを浮かべるアズマの言葉が響く。