それでは本編どうぞです!
「オラァ!」
「ダラァ!」
「少し飛べそうか?」
『獅子奮迅』を限界まで無理やり解放しているジンヤや、八眷属のザンクロウと戦った時に出来た傷でフラフラのナツに対して、相対するブルーノートは余裕の笑みさえ浮かべている。
「火竜の咆哮!」
「堕ちろ…」
「斉天の剛腕!」
「ぐふっ!こいつ…」
2人で連携しているにも関わらず、決め手に欠けるパンチばかりだ。
「(力が入らねぇし『獅子奮迅』が維持できねぇ。ここまで、なのか…)」
「タフなヤローだ…」
「ガキばかりだと思ってたが、案外やるな。だが、それでも少々できる雑魚程度だ…」
短時間で何度も戦いをして来た身体には限界が来ていて、遂には膝をついてしまった。ナツも疲れからか、かなり息が上がっている。
「このまま殺してやる…」
「待ちなぁ!」
「カナ!」
「仲間をこれ以上傷つけさせはしないよ!」
マジックカードを一気に投げつけるが、重力で周りに吹き飛ばされ、爆風が当たらない。しかし、その隙に腕に付けた魔法を解き放ち始めた。
「
「まさか、あの光は…クソが!」
「うあっ!」
あまりの輝きに危険を察知したのか、魔法が完全に発動するより前にカナを地面へと叩きつけた。
「テメェ、その魔法あの墓から!」
「もしかして
「初代から譲り受けたってのか」
「ルーシィ、1人にしちゃってゴメン。でもこの魔法が当たれば確実に倒せる」
「鴨がネギ背負ってやってきてくれるなんてな…その魔法は貰っていくぞ」
攻撃を仕掛けてこないようにカナを魔法で地面へと押し付け、獲物を狙うかのように一歩ずつ、ゆっくりと歩み寄る。
「あんたなんかに…この魔法は、使えない!ギルドの者にしか使えないんだ!」
「魔法は“一なる魔法”を根本に広がってきたとされている。魔導の深淵に近づき、真理を悟った者に使えない魔法なぞない」
「(“一なる魔法”?どこかで聞いた気が…)」
ブルーノートの言葉に聞き覚えがある。それを思い出そうとルーシィは重力に押さえつけられながら考え込む。そうしている間にもカナを魔法で浮かせ、搾り取るかのように締め上げていく。
「テメェごときの魔力で、超高難度魔法を使えるのか?」
「あた…りまえ…だ!」
「太陽と月と星の光を集めるその魔法、お前のような小娘より俺たちのところにある方がふさわしい!」
「うあああ!」
魔法に込めていた力を一段と上げ、目的の物をいち早く取り出そうと、カナを更に締め上げる。
「三種族の力よ、敵を貫く槍であれ!奥義『三宝親和』!」
重力場が緩んだ隙を縫い、持ち合わせる最大級の攻撃を振りおろした。ブルーノートを取り囲む三本の柱の間を光の刃が駆け抜けた。
「この…雑魚どもが!邪魔すんじゃねえ!」
「うわぁ!」
「ぐあっ!」
「ナイス、ジンヤ!集え、妖精に導かれし光の川よ!」
敵の拘束から抜け出したカナの右腕に強力な光が宿る。周りの光を集め、その紋章は邪を討つ破邪の刃へと変わる。
「照らせ、邪なる牙を滅する為に!」
「バカな!?」
「くらえ…
妖精三大魔法の名に恥じぬ威力に空気が震え、凄まじい轟音を発してブルーノートをいとも容易く囲む。
「当たれえぇええ!!」
「ぬおおお!!」
「(決まったか!)」
輪の距離はどんどん縮まり、全員が勝利を確信した。もう躱せないだろう、そう思われた。
「堕ちろぉ!」
重力で下に叩きつけられた魔法は、当たることなくねじ伏せられ、あたりに衝撃波と光をまき散らした。
「うわぁあ!」
「カナァ!」
「いくら魔法が強力でも術者が雑魚だとその程度なのか?ん?最強の魔法だと、笑わせてくれる!」
あまりの光景に絶句してしまう。そして魔法を使い終えてしまった反動からか、右腕から血が出てしまう。
「(そんな…私の力不足で…みんなを救えなかった)」
「知ってたか?魔法ってのは死んだ人間からでも取り出せるってのをよ。もうテメェは用済みだ」
「(ごめん、みんな。ごめん、お父さん…)」
「俺は今日も飛べず終いだ」
そう言ってカナに近づき、最後のトドメを刺そうと手をかざす。自分の力不足に涙を流し、諦めて静かに目を閉ざす。
「死ね…」
魔法を発動しようとした瞬間、2人の間に入り、ブルーノートを吹き飛ばす者がいた。皆の目線の集まるところにいたのは…怒りの形相を浮かべたギルド最強の男、そしてカナの父、ギルダーツ・クライヴだった。
「ギルダーツ!」
「来てくれたのか!」
「(お父…さん…)」
妖精の反撃の始まりだった。