それでは65話どうぞです。
「なんなのこのネコ?エクシード?」
「パンサーリリーだ」
「俺の相棒にケチつけようってのか?ア?」
「そ、そういう訳じゃ…っ!ナツ、ジンヤ!」
2年前に亡くなっていたはずのリサーナがナツに向かってダイブしていた。いきなりのことに反応できず、後ろに吹っ飛んでいった。
「お前…死んだんじゃあ?」
「なんでここにいる?」
「もしかしてエドラスのリサーナが来たとか!?」
「ど…どうしよう!」
「いや、その可能性は低いんじゃねえか?」
ようやく落ち着いたジンヤはエドリサーナ説をやんわりと否定した。
「どういうことか説明してもらえる?」
「アニマに吸い込まれるほどの魔力を持っていて、あっちじゃ性別まで違う俺のことを知っている」
「俺たちの知ってるリサーナってことか?」
「うん、そういうこと」
「なんでエドラスに居たんだ?あの事故で死んでたとばかり…」
暴走状態のエルフマンの一撃をくらって無事でいられるとは考えにくい。瀕死の傷だと聞いていた。
「私…死んでなかったの。あの時意識を失って、その時に小さいアニマに吸い込まれたんだと思う。あっちのフェアリーテイルを見つけた時は驚いたわ。そこでエドラスの私を二年間演じてたの」
「なんであの時に本当のこと言わなかったんだよ!ギルドで会っただろ!」
「よせナツ。あっちで2年も過ごしてたんだ。あっちの生活とか色々事情もあるさ…ミラたちはカルディア大聖堂の墓地に居るはずだ。会いに行ってやれ」
ナツの肩に手を置きつつ、リサーナにそう告げると、彼女は飛び出す様に走り去っていった。
「今話さなくてよかったの?」
「これからはいつでも話せるさ。家族と積もる話もあるだろうさ」
雨の降りしきる中、天を仰ぎみた。あちらに残った家族のことを思って。
翌日–
「なんかギルドも変わってるしミラ姉も雰囲気変わったね」
「うふふ、そう?」
「でもやっぱりウチはウチだね。騒がしさはどっちでも同じかな?」
リサーナの思わぬ復帰によりギルドはいつも以上にお祭り騒ぎとなっていた。仕事に行くものはごくわずか、いつもよりお酒の量が多く、歓喜に沸いていた。中には喧嘩を始めるものまでいる。
「元気だねぇ。でも、これを見なきゃ帰ってきた感じがしねぇのも確かだがな」
「さ、騒がしいギルドだな」
「やっぱり第一印象はみんな同じなのね」
「楽しいよ、ここは」
そんな状況でジンヤはエクシード3人組に混じって机にもたれかかっていた。その横でリリーは周りを見回し、魔法が当たり前に使われる光景に絶句している。
「ここにいる者全員が魔力を持っているのか…」
「正確には俺以外の全員だ。アースランドの魔導師は多かれ少なかれ魔力を体内に持ってる」
「なるほど、そうなるとあのラクリマの大きさにも納得がいくな。しかし、町の人が普通に使っているのを見るとは…」
ラクリマ以外の魔法とは全くといっていいほど縁のない生活を送っていたリリーにとっては驚きの連続である。町に魔法があふれ、奪い合わずともいろんなところに店が開かれていて、生活には困らないほどだ。
「豊富な魔力に感謝しねえとな」
「そうね、恵まれてるわ、わたしたちは」
魔力に苦しんでいる世界を目の当たりにした彼らは改めて豊富な魔力に気づかされた。
「昨日の敵は今日の友、これからは同じギルドの仲間だ。仲良くやっていこうぜ、リリー」
「そうだな。ハッピー、シャルル、ジンヤ、アースランドで生きる仲間同士、これからよろしく頼むぞ」
「ええ」
「あいさー!」
「とりあえず、あっちでやっている喧嘩に混ざってくるかな?久々の喧嘩だ!」
別れや出会い、奇跡的な再会のあった異世界での戦いは幕を閉じた。
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所は変わって、新生評議会。その会議室にはフェアリーテイルから届いた始末書が何十枚も積み上げられていた。
「なんだこの始末書の量は! 1つのギルドが起こしたもんとは思えぬぞ!」
「フェアリーテイル、あそこは先代からの頭痛の種でしたからな」
「ラハールの話によればジェラールを“仲間”と言っていたと聞いたぞ」
「危険な思想だな、そのうち何かしでかすかもしれんぞ」
問題行動の数々に危険視する者が多く、対策を立てようとしていた。そこで反論してきたのはかつてフェアリーテイルを毛嫌いしていたオーグ老師である。
「彼らはあのオラシオンセイスを壊滅させた労もある。そう角を立てる必要もあるまい」
「その作戦の許可は下りておらぬし、地方ギルド連盟からは連絡すらなかったそうじゃないか」
「いくら闇ギルドとはいえギルド間の抗争は禁止されているし報復がないとも限らんぞ」
しかし彼の擁護も虚しく、一度できた空気は変えられなかった。闇ギルドの報復を心配して準備をしようとするあたり、まだ前よりマシではあるが。
「我々は新しく生まれ変わった!何が新しくなったのかを示していく必要がある!」
「その通りだ、これ以上問題を残しては置けぬ。フェアリーテイルは必ず潰す、今度問題を起こしたら容赦はせん!」
議長グラン・ドマの力強い言葉に拍手が巻き起こり、1つの溜息がかき消される中こうして会議は幕を下ろした。
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「みんなどんだけ騒いだのよ」
「よく寝てるな」
「(良かったね、ミラさん)」
結局騒ぎは夜まで続き、疲れ切ったのかあちこちにゴミを残したまま眠りこけてしまっていた。三人仲良く寝ているミラ達を見てルーシィは安堵のため息をついた。
「ふふ、みんないい顔してるわね」
「ルーシィの寝顔もなかなか可愛かったぞ」
「見てたの?もう…見物料取ろうかしら?」
「膝貸すからそれで堪忍な」
「冗談よ。でも膝枕…して、ほしいな」
顔を赤くしながら寝転がるルーシィの頭を撫で、気持ちよさそうに目を細める彼女を見守った。
束の間の平和の続く中、邪悪なる者が刻一刻と近づいていた。この時、滅びと混沌が迫っていることを彼らはまだ…知らない。
もうそろそろ天狼島編に入れそうなんですが、その前にオリジナル入れます。季節真逆ですがクリスマスです。