FAIRY BEAST   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです。次回にはエドラス編終わって天狼島編に移れるかと。

それではどうぞ!


第64話 妖精、帰還する。その時少女は…

無事にアニマを通り抜けたジンヤ。周りを見ると、何事もなかったように復旧しているマグノリアと傷だらけの仲間たちがいた。

 

「よ、全員無事に戻れたみたいだな」

「私たちの勝ちだな。ミストガンのことは残念だが、あいつは強く生きてるだろう」

「そうだな。それよりナツ、その魔王みたいな格好はなんなんだ?」

「ああ、これか?実はよ…」

 

どうやらミストガンやエドラスのために一芝居打ってきたのだとか。彼を王にふさわしいと認めてもらう、そしてフェアリーテイルの仲間を見送るためのものだったそうだ。

 

「まあ街を壊したのはどうかと思うが、これから奴が生きる道は作ってやれたか…(見送ってやれなかったのは心残りだが、あいつは強い。俺たちが居なくてもやっていけるか)」

「それも大事だけどよ、街の人は無事なのか?」

 

街の建物だけ元どおりでは意味がない。確認しにいこうとしたら、上から聞きなれない声が聞こえてきた。

 

「それは大丈夫だよ」「みんなラクリマになってるの気づいてなかったみたい」「アースランドってすげえな!魔力が溢れるほどあるよ!」

「な、なんでエクシードまで来てるのよ!?」

 

どうやら魔力を持つエクシードもアニマに吸い込まれて一緒についてきてしまったらしい。

 

「まあ、考えてみりゃ確かにあり得ることだけどよ…」

「まさか全員来るとはな。獣人の秘境にでも匿っておくか?」

「冗談じゃないわよ、ジンヤ!こいつらは危険!すぐに送り返すべきよ」

 

あちらで色々とやられたらしく、シャルルはご立腹な様子だ。女王シャゴットを筆頭としたエクシードたちは己の行動を悔いていた。

 

「まあまあシャルル。もう許してあげても良いんじゃないかな?」

「そうだよ。もうエクスタリアもないんだし、エドラスにも行けないんだよ?」

 

ハッピーやウェンディが反省している彼らのために弁解していたが納得している様子はない。

 

「石を投げたことは謝罪します。でももう帰る場所がないのです。許してほしいなんて、傲慢かもしれないですが、これから改心していくつもりです」

「そんなことはどうでもいいの!あなた達は私たちにウェンディやナツのようなドラゴンスレイヤーを抹殺するように“使命”を与えてアースランドに送り込んだんでしょ!?どうなのよ!」

「そうだ!女王はオイラ達から卵をうばった!忘れたとは言わせねえ!」

 

生まれてから6年間、この“使命”のせいで自分に大きなプレッシャーをかけてしまっていた。その重圧に押しつぶされまいと周りにキツくあたったこともあった。親達の中には自分の子を奪われたと思っている人もいる。

 

「まだ詳しく説明してませんでしたな。これは遡ること6年前の話になります」

「シャゴットの未来予知能力についてはもうお話ししましたな?ある日、シャゴットは地に堕ちるエクスタリアを見たのです」

「島が浮遊するのに必要な魔力の喪失による自然落下か」

 

補足説明をするジンヤの言葉に老エクシードが静かに頷く。その時は落下の原因がわからず、人間が戦争を仕掛けに来ると思っていたそうだ。しかしエクシードは元々弱い。戦争しても負けるのは火を見るより明らかだった。

 

「そこで、アニマを利用して100個の卵をアースランドに逃したという訳です。表向きにはアースランドにいるドラゴンスレイヤーを倒す、ということにしましたが恨みなどは全くありません」

「分かっていますよ。そういう“設定”が必要だったんですよね?」

「それに本当のことを話すとパニックになっていたと思うし」

 

事情を知れば納得できるものだった。争いごとは避けたいし、巻き込みたくないというものだった。

 

「計画は1つの点を除いて完璧でした。それはシャルル、あなたの未来予知です。無意識に発動した能力で記憶が混乱し、ありもしない使命を作り出してしまったんです」

「そんな…じゃあ頭にあった情報も全部…」

「オイラの使命って…」

「最初からそんなものなかったんです」

 

エドラスに行ってから何度も浮かんできた情報は全て無意識に予知をしている影響のものだった。地下道の情報も王都のことも今なら納得がいく。断片的にしか見えないのもその能力の不安定さがもたらしたものだ。

 

「この作戦と度重なる不運があなたや卵を取り上げた全ての家族を6年もの長い間苦しめてしまった。悪いのはエクシードではなく私1人です」

「それは違いますよ女王様!」

「女王様は私たちを思って行動してくださったんです!」

「せっかくアースランドに来たんです。6年前に避難させた子達を共に探しましょう!」

 

真実を知っても前に進もうという前向きな心が芽生えていた。新しい目標、出発点を見出した彼らの表情は晴れやかとしている。

 

「…いいわ、認めてあげる。この世界で生きていくのを」

「シャルル…」

「これでいつでも会えますね」

「何嬉しそうにしてんのよ、ウェンディ」

「そう、いつでも会えるわねシャルル」

 

シャルルを抱きしめるシャゴット。その腕は暖かさがあった。

 

「ここに俺が20年前まで居た秘境がある。ガキの頃の話だけど、荒らされてはいねえだろ。そこに行って開墾すればなんとかなるはずだ…俺からは以上だ」

「ありがたい話じゃ。安全な住みかとは…ありがとう、ジンヤ殿」

「気にするな。もう使うこともねえだろうからよ」

 

新たな生活を求め、かつて獣人の住んでいた秘境の1つに身を寄せることになった。

 

「…あの秘境なら安心して住めるだろう。あいつらなら大丈夫だ」

「そうだな。じゃ、俺たちもギルドに戻るか」

「みんなにどうやって報告する?気づいてないって言ってたけど」

「ミストガンのことを黙っておくわけにはいかんぞ?」

 

向こうに残った彼のことをどう説明するか頭を悩ませていると、ガジルがあることに気づいた。

 

「おい、あいつはどこだ?」

「どうした、誰か探してんのか?」

「リリーは何処だ!?パンサーリリーが何処にもいねえぞ!」

「俺ならこっちだ…」

 

そこに現れたのはハッピーやシャルルほどにまで小さくなったリリーだった。アースランドに来たことによる影響みたいで、子熊のぬいぐるみみたいになっていた。

 

「俺は王子のいたギルドに興味がある。約束通り入れてくれるんだろうな…ガジル」

「もちろんだぜ、相棒!」

「おい、離せ。それと…さっき怪しい奴を捕まえたんだ。来い」

 

そう言って紐を引っ張るとそこに現れたのは…

 

「ちょっと、私は…別に怪しくなんて…きゃあ!私もフェアリーテイルの一員なんだけど…」

「リサーナ…!」

「どういうことだ、これは…」

 

2年前の事故で亡くなったはずの少女、リサーナだった。




60話超えましたか。始めてから9ヶ月でここまで来れるとは思わなかったです。学校がつまらん、という理由で始めたのがきっかけでしたが…。これが完結したら新しいのを書こうかな?

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