今回は若干時系列が原作と違います。原作の該当部分(22巻途中からほぼ最後)を前に行ったり後ろに行ったりな感じです。
それでも大丈夫という方は本編どうぞ!
「エドラスにはいくつかの浮遊島があるの。あれ…エクスタリアの魔力で浮いてるって本に書いてあったわ」
「それじゃあラクリマにされた仲間のみんなはその島の1つにいるのか?」
「エクスタリアのすぐ近くにね。この目で見たから確かよ」
「その島ごとエクスタリアにぶつけて魔力にするのが王国の狙いみたいです」
もしそうなったらラクリマもエクスタリアも弾けて、融合した果てにこの国の永遠の魔力となる。仲間は全員消えて、敗北…何も取り戻せなくなってしまう。
「とにかく止めねぇとな」
「うん!って、ナツ戻ってきちゃったよ?」
「おい、こっち来んな!化け物の集まりだぞ。エルザ2人にジンヤと変な武器持った女が戦ってる!あっちだ!」
無意識にも1番の激戦区という危険地帯に近づいていたらしく、慌てて戻ってきたナツ。今度こそはと王様に作戦を辞めさせるために戦闘のない安全な方向へと動くことになった。
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「『フレア・ショット』!」
「『水獣砲』!」
ジンヤとジェニファーの激突が起こってから十数分、戦いは収束するどころか逆に熾烈を極めようとしていた。
「そろそろ倒れてくれねえか?テメェにずっと構ってる暇はねえんだよ。それに疲れる」
「…そっちの事情など知ったこっちゃないわ」
「ま、だろうな」
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「ガジルー!!」
「ネコ、無事だったか!」
エルザたちの解放後からずっと暴れているガジル。そんな彼をラクリマへ連れて行こうとハッピーはスピードに乗って大空へと翔んでいく。
「オイラがラクリマに変えられてるみんなの場所に案内するよ!」
「そうか…って、おい!コラ、掴むんじゃねえ!」
「ところでさ…どうやって元に戻すの?」
「ギヒ、滅竜魔法で砕いたら戻ったぜ」
思わず耳を疑った。砕いたのだ。もっと優しい方法だと思っていたハッピーは驚くしかない。
「ねえ、それでいいの?」
「俺はミストガンに言われた通りにしているだけだぞ!」
「そういえば何で居ないんだろ、ミストガン」
「知るかよ!ジンヤに聞けや!」
そして2人が向かったラクリマの予想以上の大きさに2人して唖然としてしまう。
「でけぇ…」
「想像以上だよこれ」
「ったく世話のかかるギルドだぜ!帰ったら腹一杯鉄食わせろよ」
「頑張れガジルー!」
ハッピーの声援が送られる中、毒吐きながらも右腕に魔力をためていく。ラクリマを砕きに行こうとした瞬間、島の岩盤をも切り裂く一振りが襲いかかってきた。
「誰だコラァ!」
「王国軍第一魔戦部隊長パンサーリリー。ここは今作線最重要拠点だ、やらせんぞ」
「羽!?あいつもエクシード!?」
「下がってろ、ネコ!!鉄竜剣!」
ラクリマ前でも1つ、大きな戦いが起き始めていた。
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戦いが苛烈を極める中、国王とバイロの前には国の最終兵器の1つが鎮座していた。名は『竜鎖砲』、要は鎖を射出できる砲台だ。
「陛下。コードETD最終段階のすべての準備が整いました」
「うむ、ご苦労。して…これが竜鎖砲か」
「ええ。ドラゴンスレイヤーから抽出した魔力で浮遊島を意のままに操るための鎖だと思ってくだしゃれ。鎖で制御下に置いたラクリマをネコどもの国にぶつければ永遠の魔力になるのでしゅ。さあ、竜鎖砲起動の鍵を…」
「陛下、お待ちください!」
ピポポポと独特な音をたてながらひどく慌てた様子で走ってきたのはココだった。
「これココ!陛下の御前で走り回るなとあれほど…」
「あのラクリマの島にはリリーがいるんです!今作戦を実行したらリリーまで死んじゃいます!」
「それが…どうしたというのだ?」
ファウストから発せられた冷酷な言葉にココは一瞬怯みつつ、何とか言葉を続ける。
「仲間、ですよ?」
「あのエクシードくずれ如き、大局のための犠牲の1つに過ぎぬ!いちいち駄々をこねるな!」
「それでもリリーが居なくなるなんて嫌です!」
「な、何をする!」
「ココォ!!」
「きゃうあ!!」
なんとバイロの手にあった鍵を強奪し、逃走してしまった。それを逃すまいとファウストは杖から雷が打ち出した。
「お前は昔から走るのが好きであったな。余はお前が元気に走り回る姿が大好きだった」
「痛ぁい!!!」
手に握られている杖から追い打ちをかけるようにココの脚に雷が落とされた。凄まじい音と、人を傷つけることもいとわぬ国王のその冷酷さに隣にいたバイロは恐怖に震えるしかない。
「さあ、鍵を渡しなさい。今なら許そうぞ」
しかし、その言葉に従わずココはそのまま走り去ってしまった。
「おのれ…バイロ!追え、今すぐにだ!!手段は選ばん!」
「は、はひ!!」
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竜鎖砲の鍵を巡って場内で一波乱起きている頃、ラクリマ前ではガジルとパンサーリリーが激戦を繰り広げていた。
「ぬおぉおおぉ!!」
「ほう。鉄をも砕くバスターマアムを腕で止めるとは…アースランドの魔法にはつくづく驚かされる」
「生憎、この鉄竜の鱗はただの鉄よりかなり頑丈でね。それよりお前、ネコの仲間なんだろ?なんで王国軍なんかにいやがんだ?」
「オイラと同じエクシードなんだよね?お魚食べる?」
「俺はあの偽りの国を捨てた!!あの忌まわしき腐りきった故郷をな!」
普段冷静な彼が珍しく声を荒げながら剣を振り下ろした。それを受け止めているガジルは、笑っていた。
「へっ、はみ出し者ってことか。ギヒヒ…気に入った!こいつを俺のネコにするぞ!」
「はぁ!?何言ってるの!?」
「な!?俺の剣を砕きやがった!」
バスターマアムの刃を文字通り木っ端微塵にして、実力差を見せつけるが如く怒涛のラッシュを見せる。
「ギヒヒヒ!これでサラマンダーにも小娘にも引けを取らんぞぉ!」
「(こ、この男…!)」
「鉄竜の咆哮ぉ!!」
「ひええ、ガジルの顔が凶悪だぁ!」
「(強い!)」
2人の強者の戦いはまだまだ続く。
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「おーい、グレイ!鍵はどうした!?」
「ちょいと事情が変わったが…まあ、大丈夫だ。あの竜鎖砲だっけか?あれ滅竜魔法の鎖が入ってるから、ラクリマに直で当てれば皆を元どおりにできるぞ。そういえばルーシィは?」
「あっちの方で挟まってる」
「なんだそりゃ?何があったんだ?」
敵将との戦闘の末に竜鎖砲の鍵を奪取、破壊することに成功したナツたち。その時に竜鎖砲の意外な使い方を聞き出すことに成功した。なぜかルーシィは挟まっているが。
「その問題の砲台があのばかでかい扉の先にある。警備も厳重だし扉が頑丈ときた」
「じゃあどうすんだよ!」
「ここに、いたのか…」
そこにやってきたのはかなりボロボロになったエルザだった。
「エルザ!!」
「おい、こいつエドラスのエルザじゃねえのか!?」
「俺たちのエルザが負けたってのかよ!」
立ち向かう暇も気力も持たなかったのか気絶させられ、あえなく御用となってしまった。そのまま2人を引きずりながら門へと向かうと警備兵が無事を確認しにきた。
「ご無事でしたか、ナイトウォーカー隊長」
「ど、どこが無事なもんか!その怪我、どうなさったんです?」
「心配するな。見た目ほどじゃない。陛下は中か?」
「ええ。ところでこいつらは?」
「竜鎖砲の鍵の代わりだ」
「そうですか。どうぞ中へ」
「これで全ての準備は整った。永遠の魔力は目の前だ」
夏までには最後まで終われば良いな。多分無理かな?