途中で宿を取るナツ一行と別れ、シッカとトライアの街の中間にある名もなき村に着いたのは次の朝になってからだった。
「で、なんでお前がいんだよガジル」
「ミストガンのヤローに送り込まれたんだよ。で、こいつはこっちの俺だ」
「どうも初めまして」
「ご丁寧にどうも…」
「新聞記者なんだと。で、王都の情報も結構持ってるそうだ」
「(運が向いているかもな)話、聞かせてくれるか?」
街の飲み屋に入ると見覚えのある男と彼にそっくりの男が飲んでいた(しかも朝っぱらから)。運がいいことに情報をそこそこ持ち合わせているとか。ならば聞くしかないと色々教えてもらった。
「大半の魔力が都市部、しかもその中の遊園地にか。そりゃ反発は出るだろうな」
「しかし、こっちの俺らが闇ギルドで、ラクリマがこんなでかいとは思わなかったぞ」
「そのラクリマなんですがね、記者仲間が言うには切り取られたような跡があったそうですよ?」
「これが全体の一部、しかもまだこれより大きい部分がどっかにあるってことか…」
「その一部がどこにあるか分かるか?」
「この国の首都、王都の中心に向かったそうです」
ここでかなり重要な情報がでた。みんなを解放するには王都に侵入、ミストガン曰く滅竜魔法で砕く必要がある。
「しかも、そのラクリマを3日後に魔力に置き換えるとか」
「ふぅむ…質問ばっかりですまんがここから王都まで歩きでどんくらい?」
「休憩と途中の街で一泊した場合2、3日くらいはかかるとみてください」
「時間との勝負か。色々ありがとよ、礼ができねえのが心苦しいな」
「とんでもない。是非ともよろしくお願いしますよ」
早速動くことになり、情報提供者に礼を言って店を出ることになった。
「どっちにしろ、あそこに行く羽目になるのか…。こっちの俺には会いたくねぇが、仕方ねえ」
「王国軍なのか?その、お前のそっくりさんは」
「似てるって言うか女だったよ。苗字で気づいた」
「ブッ!!女だと!?笑わせてくれるぜ!」
「るっせぇぞ、胡椒とモップでぶっ飛ばすぞコラ!」
切羽詰まった状況なのにまるで緊張感のない2人は喧嘩しながら王都のある方へと向かい始めた。
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その頃王都では、切り取ったラクリマについて部隊長を呼んで会議が行われていた。
「あの水晶から今後数年、場合によれば十数年分の魔力が取れる採算でしゅ」
「すごい!そんな取れるんですね!」
「うおー!超スゲェっす!」
「ん〜、すごいですねぇ」
幕僚長バイロ、補佐のココ、ヒューズとシュガーボーイ、さらにはリリーパンサー、エドラスのエルザにジェニファーが王の前に集結していた。
「まだ足りぬな」
「今、なんと?」
「我が国は有限であってはならない…もっとよこせ。魔力を、無限の魔力を!」
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前の村を出てからと言うものの、途中で襲ってくる魔物を食料にしながらトライアの街に昼になってようやくたどり着いた。水分補給と小休憩を兼ねて寄ることにした。
「ガジル、どうもナツ達が王都に着いたみたいだ」
「サラマンダーが?ちっ…出遅れてるのか」
負けず嫌いのガジルは先に行っているメンバーに苛立ちを感じている。そんな彼に呆れながらも遅れを感じているのも確かだ。
「このまま行ってもダメだな。どうにかして速度上げねえとよ」
「ゆっくり歩くわけにはいかねえだろうな…ん?」
少し耳をすますと近くの店で飲んでた男達の会話の端々に情報が溢れている。
「おい、聞いたか?後2日でラクリマを魔力にすんだとよ」
「それって大丈夫なのか?」
「なんだよ?そんなに国王様達を信じらんねえのか?大丈夫に決まってんだろ」
「あー…それもそうだな。きっと大丈夫だな!」
王国のラクリマの件が2日後に迫っていることが自然と耳に入った。
「俺たちも急いで行った方が良いな。奴らの裏で動いた方が事を進めやすい。途中で馬でも奪うか」
「予定より早く事が進んでるみたいだ…それでいこう」
こうして別行動をしている2人は急ぎ王都へと駆けることにした。
次回は何日か先になると思います。