それではどうぞ。
ウェンディたちを伴って歩いていると、ナツやグレイルーシィたちと合流を果たした。
「よお、全員無事か?」
「ちょうどいいところに。ナツ殿とネコ殿の調子が悪そうなのでな」
「私が治します!」
どうもコブラと戦い、毒を食らいながらもあの馬鹿でかい叫び声で逆転勝利を収めたとか。しかも、その後に現れた敵の司令塔ブレインをジュラの本気で一蹴したとか。
「やっぱ化け物じみた力だな」
「ふふ、そなたほどでもない」
「謙遜なさるな。俺なんぞ仲間を逃さないかんかったんだ、それに比べりゃあんたはよ」
「でも、おかげで私たちは助かったんだよ。ありがとう、あの時庇ってくれて嬉しかったよ」
「ま、まあ助かってんならそれに越したことはねぇよ、うん」
互いの無事と情報交換をしたところで、王の間を目指すことで一致した。
「あそこで操縦してるやつって居るのか?」
「おらんだろうな。それならば、舵になっている物を壊すなり利用するなりすればいい話だ」
「なんか嫌な予感がするな」
「敵が敵だ。狡猾な策を取ろうとするだろうからな、ジンヤ殿の言わんとすることは分からんでもない」
塔内の螺旋階段を走り抜けるとそこにはナツが少し壊した後が残っているだけでもぬけの殻となっているだけの王の間があった。
「誰もいねえな」
「操縦席はないし、操ってるはずのブレインは倒れてる。それなのに動いてるなんて」
「まさか、自動操縦だってのかよ!ケットシェルターの破壊までもう組み込み済みかよ!」
「そんな…私たちのギルドが…」
「大丈夫だ!」
大切な場所を壊されるかもしれない恐怖に震えるウェンディを励ましたのはナツの言葉だった。
「ギルドは必ず守ってやるさ、快復させてくれた礼だ。こいつを止めてやる!」
「ナツさん…」
「ここで分かれよう。私とジンヤ君は他のメンバーを探しつつ最後の一人ミッドナイトを叩く」
「それでは残りのワシらでこれを止める手段を探そう。皆もこれでよろしいかな?」
7人も一箇所に居るより、二手に分かれた方が効率が良さそうだと特に反対派はいなかった。
「それでいくか、ってウェンディ?」
「私…心当たりがありますので行ってきます!」
「おい!どこに行くつもりだ!」
「待って、ウェンディ!」
どこかへと去っていってしまったウェンディを追ってシャルルもいなくなってしまったことに溜め息が出てしまった。
「なんでこうなるんだよ。おい一夜、急いで飛び降りるぞ」
「メ、メェーン!」
「あ、ジンヤ!これ持っていって!」
ルーシィの投げた如意棒を空中でうまく捕まえながら猛スピードで塔側面をくだっていく。
「エルザをみっけたぜ!そこで降りるぞ」
「メェーン。いいニュースだね」
塔を蹴って勢いに乗った状態でエルザの前に降り立った。
「エルザさん。無事でよかったです」
「ああ、どうにかな」
「元気そうだな。ミッドナイト倒したのか?」
「なんとかな。ぎりぎりだったよ」
「そうか…ん?お前、ジェラール!!」
敵だったの魔導師がここにいることに驚きと怒りがこみ上げてくる。
「テメェ、なんでここにいんだよ!テメェのやったことを考えろ!」
「落ち着け、ジンヤ!今のこいつには記憶がない!」
「だから許せってのか!こいつをよぉ!」
「すまない。謝って済むことじゃないのは君の怒り方からも充分なほど分かる」
「このっ…意地でも思い出せよ!このまま忘れましたなんて許さんからな」
「分かっている」
頂点にまで達しかけた怒りをおさめつつ、情報交換を行っていたら、先ほどまでいた王の間のふもとで爆発がおこった。
「まさか…様子見に行ってくる!」
「ジンヤ!?おいどうした!」
「(くそっ、何があった!?)」
風のように街を駆け抜け、塔の麓に辿り着き、開いている門をくぐると見知らぬ禍々しい邪気を纏った白髪の男が悠然と立っていた。
「ようやく来たのか、獣人よ」
「テメェ、何故俺のことを」
闇の都市に揺られながら、六魔最悪最凶の男との光を賭けた勝負の始まりだった。