FAIRY BEAST   作:ぽおくそてえ

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どうも、ぽおくそてえです。今回でバトルオブフェアリーテイル編は終わり、次の日常閑話休題に移ります。文字数増やして詰め込んだ甲斐があったってもんですよ。
コンパクトにまとめようとして地の文たくさんになっちゃいましたがそれでもいいよという方は、ゆっくりしていってね。


第42話 旅立ち

バトルオブフェアリーテイルから1日明けた。街もすっかりと落ち着きを取り戻し、ファンタジアに向けた準備に取り掛かっていた。そしてギルドでも同じだった。

 

「ポーリュシカさんのおかげでマスターも無事一命をとりとめたそうだ、安心してくれ」

「よかったぁ、一時はどうなるかと思ったよ」

「あのじーさんがそう簡単にくたばるわけねーんだ」

「だが、心労を重ねればまたお身体を悪くする。そのことを忘れるなよ」

 

色々とごたごたがあったもののマスターの意向もありファンタジアをやることに決まり、動ける者は全員参加ということになった。

 

「ジュビアも参加しないと行けないんですか?」

「今回は怪我人が多いからね」

「じゃああたしも!?」

 

ルーシィのその言葉にグレイがベンチの方を指差した。

 

「あの3人みたいなのが参加できるとでも?どう見ても無理だろ」

 

そこには全身包帯で巻かれたナツ、ガジル、ジンヤの3人が座らされていて、ジンヤに至っては点滴まで使っている。

 

「な?無理だろう?」

「だね…ジンヤなんて動けんのあれ?」

 

そんな状態になるまで戦っていた3人に呆れているのか、長いため息をついた。

 

「ふんがごあがぐごがう!」

「無理だね、参加できるわけねーだろクズが」

「ガジルの言う通りだぜ、そんな怪我じゃ出るどころかまともに歩けやしねえよ、バーカ」

「おがえがべおごぐる」

「そりゃ関係ないだろ」

「テメェのことを気にしてろ、アホが」

 

ナツの意味不明な言葉がなぜか通じている3人に苦笑いするしかなかった。そんな時にラクサスがマスターの様子を見にギルドにやってきていたが、やはりというべきか仲間からの反発は強かった。それを止めたのはエルザだった。

 

「よせ…奥の医務室にいけ」

「おい、いいのかよ!」

「ファグアグゥー!」

 

そのまま奥に行こうとしたところを止めたのはナツだった。

 

「)&@¥&"(¥&@!!」

「あっ?」

「3対1でこんなんじゃ話にならねえ、次こそはぜってぇ負けねぇ。いつかまた勝負しろラクサス!だとよ」

「あれ?勝ったんじゃないの、ジンヤ?」

 

ルーシィの疑問ももっともだ。今こうして以前のギルドと同じ状態で居られるのもラクサスを倒したからのはずだ、と。

 

「いんや、あれを勝ちと言えねぇよ。こっちは全身ボロボロ、それに比べたらあの程度の傷、それも3対1でだ。ホント化け物だよラクサスは」

「あいつがファントム戦に来てたらやばかったな」

 

そんな話をしているうちにナツの横を通り過ぎ、奥へと向かっていった。奥の医務室に入った彼を見送り、呆けたように口を開けているみんなを叱咤する。

 

「ファンタジアの準備を続けるぞバカどもぉ!本番は夜だぁ!」

「「「うおおおお!!!」」」

 

それから数刻、夜になりファンタジア本番を迎えて居た。いろんな街から来た人がこの時を待っていたと言わんばかりにかなり混雑していた。道を通る台車を見るとルーシィやエルザ、エルフマンにミラ、グレイやジュビアたちが思い思いに演技をしていた。そんな彼らやマスターを遠目に眺めていたラクサスは幼い頃の自分とマスターのことを思い出していた。ファンタジアに初めて出る時、いつでもマスターのことを見ているというメッセージを決めた時の懐かしい記憶だった。

 

「(さてと、行くか…)」

 

もういいだろうと立ち去ろうとして、もう一度振り返るとあの頃のメッセージを皆がしていた。姿が見えずとも、どんな遠くにいようともずっと見守っている、そんな優しさの現れだった。

 

「ありがとう、じーじ」

 

パレードで幼い頃マスターとラクサスが交わした約束であるサプライズを見終え、やり残したことがなくなり、別れを告げることなく去ろうとしたところにやってきたのはジンヤだった。

 

「よう、もう行くのか?」

「ああ。最後にいいもんが見れたよ、もうここに残る理由もねえ」

「そうか、決心がついたか…。身体には気をつけろよ。そして死ぬな、いいな。…いつでも帰ってこい。妖精の紋章がある限り俺たちは仲間だからな」

「…ああ。最後に戦って、最後に会ったのがお前で良かったよ」

 

去りゆく背中を見守り、押すようにして突き上げた指は、1人の男を見送るサインだった。

 

ラクサスを見送り、ギルドに戻るとファンタジアの打ち上げが行われていた。ジンヤはその雑踏に混じることなく、向かったのは二階にあるスペースだった。ここなら静かに飲めるだろうと踏んでのことだった。

 

「お前、どこ言ってたんだ?」

「ちょっと見送りにな。で、そのメモってレイブンのことか?」

「!?よく分かったな。ついに奴らの居場所が割れた。それをマスターにな」

「危険な任務だな。よくやったよ。そういやぁ、あいつらと混ざらなくて良いのか?」

「ガラじゃないんでね。1人の方が落ち着くんだよ」

そう言ってその場を離れ、マスターと話しに行った。

 

そして時は流れ、ラクサスがこの街を去って1週間が経とうかとしていた。彼の破門の件でナツが騒いだり、マスターが突然辞任を発表したりと色々と事件が起こった(どちらも結局何事もなく沈静化)。それからというもの、雷神衆の3人はギルドのメンバーと溶け込み始めていた。

 

「ほら、私のことを絵のモデルにしてもいいのよ?」

「う、ウイ」

「ルーシィ、お前ジンヤとできてんの?」

「でぇきてぇるぅ」

「うざっ!」

 

エバーグリーンやビッグスローはその前向きな性格の影響もあるのか馴染むのに時間がかからなかった。そんなことがあった翌日、ジンヤはルーシィとの約束を果たしに出かけていた。

 

「やれやれ、遅くなってすまんね」

「女の子を待たせるなんていけないんだよ、って言いたいけど怪我残ってるんだったらしょうがないもんね。今日一日付き合ってくれたら許してあげる」

「おお、怖え」

 

ビッグスローとの戦いが終わった時にした約束は一日一緒に出かけるというかなりシンプルなものだった。

 

「…本当にこれで良かったのか?」

「いいの!出かけようって言ったの私だよ?文句はないから(それになんでか2人きりでいたくなったんだ)」

「じゃ、少し遠出をしよっかね」

「やったぁ!」

 

こうして2人は束の間の休息に出かけることになった。


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